鴻上尚史さんの「不死身の特攻兵 軍神はなぜ上官に反抗したか」(講談社現代新書 定価本体880円+税)を読みました。
新書本の売れ行き1位の本屋さんも何軒か見かけましたが、
まずもって驚いたのが陸軍に9回出撃して9回とも生還した特攻隊員がいたということでした。
そして佐々木友次さんというその方は鴻上さんがその存在を知った時にはまだご存命で、5回にわたり本人から直接5回お話を伺えたという話にも驚きました。
本の前半は佐々木さんがなぜ特攻から生還できたのか、そして生還した佐々木さんに上官はどのように対応したのかを中心に構成されています。
さらに飛行機の不具合で不時着すること以外に生還することは可能だったのか。また爆弾とともに機体をアメリカ艦船に突っ込むというほど、特攻は簡単な攻撃方法ではなかったことなども本を読み進むうちに解ってきます。
そして後半は特攻隊とはなんだったのかについて鴻上さんが鋭く分析しています。
重要なキーワードは特攻を「命令した側」と「命令された側」です。
今まで「命令した側」が「命令された側」の立場になって語ってしまったことが、後に資料として広まったことの問題点を指摘しているのです。
1960年代、私が小学生の頃の「サンデー」「キング」「マガジン」などの少年漫画誌には必ず太平洋戦争を題材にした漫画が掲載されていました。
また巻頭のカラーページには日本、アメリカ、ドイツの戦闘機や戦車、軍艦のイラストがかなりの頻度で特集され、それらを観ながらゼロ戦の絵を描いたり戦車の模型を作ったりしたものです。
またテレビでは「あゝ同期の桜」という海軍の特攻隊を題材にしたモノクロのドラマがあり、夕方の再放送などでよく見ていました。
今でいう軍事オタク的な存在ではなく、そのよう少年が普通に大勢いた時代でした。
「あゝ同期の桜」は今調べてみると毎日新聞社から出版された海軍飛行予備学生の遺稿をもとにNET(今のテレビ朝日)が制作したドラマでした。
戦後10数年しか経っていないあのころに漫画やテレビドラマで戦争をテーマにした作品がたくさん紹介されていたことも、不思議と言えば不思議です。
戦争体験者の方々が30代から40代になり様々な決定権を持っていたということでしょうか
亡くなった父方の叔父は学徒動員で海軍の特攻隊になり出撃直前に終戦になったという人でしたが、叔父が特攻隊員だったことを知ったのは亡くなる少し前でした。
つまりそれまでほとんど人にその経験を語ることはなかった訳です。
鴻上さんのこの本を叔父に読んでもらい感想を聞いてみたかったと思いました。また特攻隊や太平洋戦争の捉え方には様々なものがありますが、多くの方に立場を超えて読んで頂きたい本だとも思いました。
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