亡くなられた藤村俊二さんは、私の世代だとなんと言っても「巨泉前武ゲバゲバ90分」での軽妙洒脱な演技や味のある良い意味でのとぼけた雰囲気が印象に残っています。
過激さや前に出ようとするギラつき感や強引さからは程遠い、常に飄々とした方でした。
それでいてサッとタップを踏むこともできるし、ファッションもシンプルでさりげないのだけれどおしゃれな感じがまたいいという感じです。
10年ほど前に「土曜日のうなぎ」という街歩きの番組を担当していましたが、青山界隈の回で藤村さんにご登場いただきました。
藤村さんの訃報に接した際に、青山の喫茶店の中庭で街を眺めながら興味深いお話の数々を伺ったことは覚えているのですが、細かい内容の記憶が定かではありませんでした。
しかし、藤村さんが亡くなられた夜に、放送は2007年1月で話の内容はこうだったというメールを送ってもらったため、翌朝の「あさぼらけ」で藤村さんのリクエスト曲とともにインタビューも放送することができました。
印象的だったのは「ああいう大人になりたいというよりも、あんな大人になってはだめだよなぁと思いながら生きてきたんですよ」
「ダンサーとして5回転クルクルと回ってしまうジーン・ケリーより、5回転出来るにも関わらずあえて2回転しかしないフレッド・アステアのほうが僕は好きですねぇ」という話しでした。
万事控目をよしとする藤村さんらしいエピソードです。
リクエストはフレッド・アステア主演のミュージカル映画「バンドワゴン」から「Dancing in the dark」でしたが、生放送前の深夜3時半に、なんとこの曲は社内にアナログ盤しかないことが判明しました。
なにせスタッフが少ないため地下の倉庫から探し出しデジタルにダビングする人手も時間もありません。
そこでディレクター氏は絶妙な編集をして「土曜日のうなぎ」で紹介された曲をなんとかそのまま使ってオンエアーにこぎつけることができました。
4時台の最後という時間ではありましたが、藤村さんをよい形で追悼することができたのではないかと思います。
また、ニッポン放送の放送音源を管理するセクションの仕事仲間が、早朝の番組で準備の時間もないだろうということで、前日の夜までに当時の放送を聴きなおしわざわざメモを作成してくれたことにも大いに感謝しています。
私も人生を飄々と生きてゆくことに大いに憧れていますが、飄々として歩む人生の裏側には、多くの人々の支えも必要なのだろうなぁなどということも思った次第です。
そのあたり、藤村さんはどのように思われますかと、伺ってみたかったです。
藤村俊二さんの御冥福を心よりお祈り申し上げます。

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