ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2025.03.02

サンデー早起キネマ『TATAMI』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
3/2は、感動の実話を元に描かれた3本をご紹介。

3本目は、実話に基づいた、女子柔道選手の不屈の戦いを巡る手に汗握るサスペンス
『TATAMI』

この作品は、イラン出身の男子柔道選手、サイード・モラエイの事件をベースに描かれました。2019年8月、日本武道館で行われた世界柔道選手権にイラン代表として出場したモラエイは、敵対するイスラエルの選手との試合を棄権するようイラン政府に圧力をかけられたのです。
物語の中でも主人公が政府からボイコットを命令されるのですが、最初その理由がわかりませんでした。でも、こういうことだったのです。
「イランの選手がイスラエル選手と対戦し、そこで負ければ、“イランが敵のイスラエルに負けた”ことになり、最高指導者のメンツが丸つぶれになる」…そうなる前にボイコットしろというのです。

さて、この物語の舞台は、ジョージアの首都トビリシで行われている世界柔道選手権大会。
女子柔道界の新星として期待されるイラン代表のレイラは、イスラム教の女性が着用するヒジャブで頭を覆い、60kg級ノックアウト方式のトーナメント戦に出場。イラン初の金メダルを目指して、初戦から2回戦へと快進撃を繰り広げます。
しかし、3回戦が始まろうとした時、レイラと二人三脚で頑張ってきた監督マルヤムの携帯にイラン柔道協会の会長から電話がかかってきます。「怪我を装って棄権させろ」と。
逆らっても無駄だと悟るマルヤムは、レイラを説得しますが、レイラは納得できません。しかし、それは国家への反逆を意味し、すでにイランの家族のもとには政府の工作員たちが迫っていました。
果たしてレイラは、イラン政府の圧力に従うのか。それとも逆らって金メダルを目指して戦い続けるのか。
混迷を極める試合の行方と、彼女の最後の選択とは!?

ギリギリまで迫るカメラワーク、臨場感あふれる試合シーンは迫力満点!
その裏側で同時に繰り広げられる政府と選手側とのスリリングな駆け引きにドキドキしっぱなしでした。
全編モノクロームで描かれているのですが、逆にカラーだったらあそこまで集中できたのかと思います。

この作品は、イスラエル出身のガイ・ナッティヴと、マルヤム役も務めるイラン出身のザーラ・アミールが共同で監督しました。イスラエルとイランをルーツに持つ2人が協働したのは映画史上初めてです。
すべて秘匿状態で撮影が行われ、映画に参加したイラン出身者は、全員亡命。当然、イランでは上映されません。
男子柔道の実話を元にしていますが、同時に2022年のイランで起こったマフサ・アミニ事件にも触発されています。2/9にご紹介した『聖なるイチジクの種』もそうでした。

イランの映画には、体制に反旗を翻したい女性の目覚めや底力、命と引き換えにしても国を変えたいという悲痛な思いが感じられます。
当事者ではない私たちにできることは、まず現状を知ることなんですよね。そのためには、「スポーツと政治」を見事に体現した超一級のエンターテインメント、この作品がピッタリです。

『TATAMI』
2025年2月28日(金)より新宿ピカデリーほか全国公開

公式サイト:https://mimosafilms.com/tatami/
監督:ガイ・ナッティヴ、ザーラ・アミール 
脚本:ガイ・ナッティヴ、エルハム・エルファニ 
出演:アリエンヌ・マンディ、ザーラ・アミール、ジェイミー・レイ・ニューマン、ナディーン・マーシャル
2023年/アメリカ、ジョージア/英語、ペルシア語/103分/モノクロ/1.78:1/5.1CH 原題:TATAMI 字幕:間渕康子 
配給:ミモザフィルムズ
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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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