おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
1/12は、日米韓、それぞれの国らしい作品をご紹介。
1本目は、東京国際映画祭では、邦画として19年ぶりに作品の最高賞、さらに「最優秀男優賞」「最優秀監督賞」と3冠に輝いた
『敵』
原作は、老人文学の最高峰と称される筒井康隆氏の同名の小説。
メガホンをとったのは、『桐島、部活やめるってよ』『騙し絵の牙』の吉田大八監督。
原作を忠実に表現するのはとても難しかったと思いますが、繊細さと力強いエッセンスを、映像でしか成しえない手法でスクリーンに結実させています。
主人公は、大学を辞めて10年、フランス近代演劇史の元教授、渡辺儀助、77歳。
20年前妻に先立たれ、都内の古民家で一人慎ましく、丁寧に暮らしています。講演や執筆で僅かな収入を得、預貯金が後何年持つかを計算しながら。
健康のために食生活にこだわり、異性の前では傷つかないよう格好つけて振る舞い、密かな欲望を抱きつつも自制し、亡き妻を想い、人に迷惑をかけずに死ぬことへの考えを巡らせる日々。
「遺言書も書いてある。もうやり残したことはない。」
しかしそんなある日、パソコンの画面に「敵がやって来る」と不穏なメッセージが流れてきます。
いつしかひとり言が増えた儀助の徹底した丁寧な暮らしにヒビが入り、意識が白濁し始め、日々の暮らしが夢なのか現実なのか分からなくなってきます。
「敵」とは何なのか。逃げるべきなのか。逃げることはできるのか。自問しつつ、次第に儀助が誘われていく先にあったものとは……。
渡辺儀助には、インテリジェンス溢れる元大学教授がピッタリ、俳優歴50年の名優・長塚京三さん。
淡々と老いに向き合いながら、でも抗えない何かに流されそうになる、現実と夢の狭間をたゆたうとても難しい役どころに挑みましたが、素晴らしいの一言。
映画らしい美しいモノクロの映像に、儀助の生活を覗き見しているような感覚に陥ります。
他に、先立たれた妻に黒沢あすかさん、教え子に瀧内公美さん、時々訪れるバー「夜間飛行」のアルバイトに今を時めく河合優実さんなど、一癖も二癖もある女優陣の魅力炸裂でした。
敵がなんなのか…という答えは、作品を見た私たちがそれぞれ見つけることになるでしょう。
それでも、老いるということへの新しい視点がみつかるかもしれません。
『敵』
1月17日(金)テアトル新宿ほか全国公開
公式サイト:映画『敵』オフィシャルサイト 2025年1月17日(金) 公開
長塚京三
瀧内公美 河合優実 黒沢あすか
中島歩 カトウシンスケ 髙畑遊 二瓶鮫一
髙橋洋 唯野未歩子 戸田昌宏 松永大輔
松尾諭 松尾貴史
脚本・監督:吉田大八
原作:筒井康隆『敵』(新潮文庫刊)
宣伝・配給:ハピネットファントム・スタジオ/ギークピクチュアズ
ⓒ1998 筒井康隆/新潮社 ⓒ2023 TEKINOMIKATA
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