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9/22は、犯罪を通して現代社会の闇を描いた3本をご紹介します。

1本目は、“誰もが標的になりうる”…見えない悪意が暴走する恐怖を描くサスペンス・スリラー
『Cloud クラウド』

主人公の吉井は、「貧困から抜け出し、生活を変えたい」という想いから、町工場に勤めながら“転売ヤー”として日銭を稼いでいました。
医療機器、バッグにフィギュア…売れるものなら何でも安く仕入れて、高く売る、ただそれだけのこと。先輩からの“デカい”儲け話にも耳を傾けず、真面目にコツコツと悪事を働く…吉井にとって、増えていく預金残高だけが信じられる存在でした。
そんな折、勤務先の社長から管理職への昇進を打診されますが、そのまま会社を辞め、郊外の湖畔に事務所兼自宅を借り、恋人・秋子との新しい活をスタートさせます。
地元の若者・佐野を雇い、転売業が軌道に乗ってきた矢先、吉井の周りで不審な出来事が重なり始めます。徘徊する怪しげな車、割られた窓ガラス、付きまとう影、インターネット上の悪意…。
吉井が知らず知らずのうちにバラまいた憎悪の粒はネット社会の闇を吸って凝結成長し、どす黒い“集団狂気”へとエスカレート。その標的となった吉井の「日常」は急速に破壊されていくのです。

インターネットを経由する“実体のない”サービスを表す『Cloud クラウド』。
メガホンを取ったのは、国際的に高く評価されている名匠・黒沢清監督。
「実際に起きた事件をヒントに、インターネットを通じて殺意がエスカレートし、暴力に全く縁のない人たちがのっぴきならない殺し合いにまで発展してしまう物語を描いた」といいます。
前半はひたひたと恐怖が襲ってくる冷徹なサスペンス、後半は渇いたガンアクションとテイストが変わる構成は見事です。

得体のしれない集団による“狩りゲーム”の標的にされる主人公・吉井役は、監督が「舌を巻くほど上手い」と絶賛の菅田将暉さん。
絶体絶命の窮地に陥り、感情が乱高下する様子を見事に演じ、改めて存在の大きさに驚かされました。
吉井の謎多き恋人・秋子役は、出演作が後を絶たない古川琴音さん。
吉井に雇われたアルバイトの青年・佐野には、期待を裏切らない演技力の奥平大兼さん。
他に、岡山天音さん、荒川良々さん、窪田正孝さん、松重豊さんなど、本当に演技の応酬合戦が素晴らしいです。

リアルな現実社会では普通の人が、インターネットというバーチャルの世界に入ると誹謗中傷など、とんでもなく攻撃的に豹変してしまう…そんな世界に生きている私達。
そして、自分が気づかないうちに誰かを傷つけ、悪意を持たれることもあるのだと、気づかせてくれました。
その悪意がインターネットと結びついたら大変なことに！改めて恐怖を感じます。

『Cloud クラウド』
9月27日(金)TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

公式サイト：cloud-movie.com
菅田将暉、古川琴音、奥平大兼、岡山天音、荒川良々、窪田正孝　ほか
2024｜日本｜カラー｜ヨーロピアンビスタ｜DCP｜5.1ch｜123分｜G
配給： 東京テアトル 日活
©2024「Cloud」製作委員会