おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
9/1は、邦画特集。何度も見返したくなるヒューマンドラマ2本と新しい才能が発見できる映画祭をご紹介します。
2本目は、永遠の別れの時、あなたは何を思うでしょうか?
大切な人を遺して亡くなる人の想いを温かく描く、愛に溢れヒューマンドラマ
『とりつくしま』

原作は、歌人で小説家の東直子さんの11の短編集、海外でも人気のロングセラー小説です。
映画化したのは、東直子さんの娘である東かほり監督。脚本も担当し、母が生み出した11篇の中から4篇を選び、オリジナルストーリーを加えました。それはとてもユニークな問いかけです。
死んでしまった後、モノになって大切な人の近くにいられるとしたら、あなたは何になりますか?

人生が終わってしまった4人の前に現れる“とりつくしま”係は、こう言います。
「この世に未練はありませんか?あるなら、何かモノになって戻ることができますよ。」
1人目は、結婚2年目、夫のお気に入りのマグカップにとりつくことにした妻。でも、夫の前に新しい女性が現れます。
2人目、大好きな青いジャングルジムにとりついた幼稚園児の男の子は、ママを待っています。
3人目は、孫にあげたカメラにとりついたお祖母ちゃん。でも孫は早々にカメラを売ってしまうのです。
最後は、ピッチャーとして活躍する息子の中学最後の試合を見守るため、ロージンバッグの白い粉にとりついたお母さん。飛び散って消えてしまうモノにとりついた切ない理由とは…。
人生の本当の最後に、モノとなって大切な人の傍で過ごす時間…あなたがとりつきたいモノは何ですか?

この作品は、社会現象にもなった上田慎一郎監督の『カメラを止めるな!』などを輩出したENBUゼミナール「シネマプロジェクト」の11番目の作品で、出演者はワークショップで選ばれた俳優さんたちです。
ただ、魂の導き手である“とりつくしま係”は、小説のファンだという小泉今日子さんが演じました。
小泉さんの包み込むような柔らかな雰囲気がしっくりきました。

大切な人を遺して亡くなる方にはこんな思いがあるのだと、新しい視点を与えてくれた作品。その視点はとても悲しく切なくもあるのですが、同時にじわっと温かさが胸に広がります。ユーモアに溢れた描き方と、何より根底に大きな愛があるから。
そして、生きることと死ぬことは表裏一体。いつ何が起きるかわからない…私たちはそんな危うい線上で生きているということを、思い出させてくれました。
だからこそ、生いきている“今”を大切に謳歌しなければと思いましたし、モノを含めた自分の周りにあるものを愛おしい目でみられるような気がします。
みんながそんな視線を持つことができたら、今、世の中で起きている悲惨なことは解決できるのではないでしょうか。

『とりつくしま』
9月6日(金) 新宿武蔵野館ほか全国順次公開
公式サイト:http://toritsukushima.com/
監督・脚本:東かほり
原作:東直子『とりつくしま』(筑摩書房)
制作:Ippo 製作・配給:ENBUゼミナール
2024年/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/89分
©ENBUゼミナール

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