ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2024.08.11

サンデー早起キネマ『ぼくの家族と祖国の戦争』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
8/11は、事実をもとに描かれた3つの国の象徴的な物語をご紹介。

2本目は、デンマークの戦争です。極限状況でも、かけがえのない信念を貫こうとした家族の物語
『ぼくの家族と祖国の戦争』

第二次世界大戦末期、ナチス・ドイツの占領下にあったデンマークは未曾有の大混乱に陥ります。この北欧の小さな国に、敗戦が色濃くなったドイツを脱出した20万人以上の難民が押し寄せてきたのです。
これは、当事国デンマークの人々にさえ知られざる驚くべき実話をもとにしたヒューマンドラマです。

時は1945年4月、デンマーク・フュン島にある市民大学の学長ヤコブは、現地のドイツ軍司令官から大勢のドイツ難民を大学で受け入れろと命令されます。
拒否することはできず、想定をはるかに超えた500人以上の難民を体育館に収容しましたが、すぐさま重大な問題に直面します。それは、飢えに苦しむ難民の間で感染症が蔓延し、次々と命を落としていくというあまりにも残酷な現実。
ヤコブと妻リスは、たちまち究極の選択を迫られます。周囲の誰もが敵視するドイツ人を救うべきか否か。売国奴と罵られることを恐れ、飢えと病気に苦しむ子供たちを見過ごしてもいいのか。
難民の苦境を見かねた2人は救いの手を差しのべますが、それは同胞たちから裏切り者の烙印を押されかねない振る舞いでした。
一方、ドイツ人を憎むべき敵と信じて疑わない息子、12歳のセアンは、難民に寄り添う両親に反発するように、危険なレジスタンス活動に関わっていくのです。

一家の長男12歳の少年セアンのピュアな眼差しを通して、人間が選択すべき“正しいこと”とは何なのかを問いかけるこの物語。夫婦が戦争という巨大な暴力に脅かされながらも、懸命に人間性を保とうとする姿を感動的に映し出します。
脚本も書いたアンダース・ウォルター監督は、「本作は、どちらか一方を非難するのではなく、人と人との対立を探求する映画だ。そして勇気、誠実さ、思いやりの物語だ」と話しています。

正直見るのが辛い場面も多かったのですが、後半は涙が止まりませんでした。
酷い目に合わされてきたナチスドイツを憎む気持ちはよくわかりますし、難民たちもヒトラーを妄信的に支持してきたはずです。
でもその上で「目の前で死んでいく人間を見ても放って置けるのか?」という凄まじいヒューマニズムを突きつけられました。
人間は弱い生き物ですから、権力や暴力に屈してしまうこともあると思います。
それでもこの作品をみて、人間はそれだけではないと希望が持てました。
こんな辛い戦争を経ても、いまだに戦争が起きているこの世界。
さらには、人を許せなくなっている不寛容さが広がるこの時代。
ぜひ、多くの方にご覧頂き、我がこととして一緒に考えていきたいと思いました。

『ぼくの家族と祖国の戦争』
8月16日(金)ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他全国公開

公式サイト:https://cinema.starcat.co.jp/bokuno/  
監督・脚本:アンダース・ウォルター
出演:ピルー・アスベック、ラッセ・ピーター・ラーセン、カトリーヌ・グライス=ローゼンタール
2023年/デンマーク/デンマーク語・ドイツ語/101分/カラー/シネスコ/5.1ch/英題:BEFORE IT ENDS/日本語字幕:吉川美奈子
配給:スターキャット 宣伝:ロングライド
 © 2023 NORDISK FILM PRODUCTION A/S

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    • ひろたみゆ紀
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      ひろたみゆ紀

      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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