おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
7/9は、自分の意志ではどうにもならない状況下、人々の心の叫びを描いた3本をご紹介。
1本目は、第二次世界大戦下、領土を奪われ翻弄されるウクライナ、ポーランド、ユダヤ人の3家族が、子供たちを守り抜こうとする運命の物語
『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』

クリスマス・キャロルとして有名な「キャロル・オブ・ザ・ベル」は、ウクライナの民謡「シェドリック」に英語の歌詞をつけたもの。“ウクライナ語、ウクライナ文化が存在している”という明確な証として、今も歌い継がれています。映画『ホーム・アローン』の中で歌われて、世界中に知られるようになりました。

舞台は、ポーランドのスタニスワヴフ、現在のウクライナ、イバノフランコフスク。国境であるこの地は、ソ連とドイツから脅かされ続け、戦時中は激戦地となり、大変な被害に遭っています。
1939年1月、ここにあるユダヤ人の家に、ウクライナ人の家族とポーランド人の家族が引っ越してきます。
ウクライナ人の娘ヤロスラワは、音楽家の両親の影響を受け歌が得意。特にウクライナの民謡「シェドリック=キャロル・オブ・ザ・ベル」を歌うと幸せが訪れると信じて、大切な場面ではいつもその歌を披露していました。
第二次世界大戦が始まり、ポーランド人とユダヤ人の両親はナチスに連行され、娘たちが残されます。さらに、ナチスの粛清で、ウクライナ人の父が公開処刑されてしまいます。
残されたウクライナ人の母ソフィアは、自分の娘、ポーランド人の娘テレサ、ユダヤ人の娘ディナを必死に守り生きていきます。
加えて戦後は「この子に罪はない」と言って、ドイツ人の息子まで匿うことになるのですが…。

実はこの作品、ソ連のウクライナ侵攻が始まる前に撮影されました。
この作品が長編2作目の女性監督オレシア・モルグレッツ=イサイェンコは「老いも若きも、ウクライナに生きる人々の中に、戦争や悲劇的な出来事を経験せずに生き延びている人は1人もいないので、この映画に取り組むことは私にとって非常に重要だった」と話しています。

脚本家の祖母や他の人々の実体験をベースに描かれたこの作品、戦いの場面は全く出てこないのですが、女性や子供たちの様子を通して、普通の人々にとって戦争はどういうものだったのかよくわかります。
権力と軍事力が揃った時の人間は本当に恐ろしいです。ロシアからナチス、再びロシアと支配勢力は変わりますが、支配される人種が変わるだけで、一般庶民の大変さ、辛さは一緒なんですよね。
その辛さを乗り越えるため、音楽など文化や風習に希望を見出し、支えられて生き延びることができました。人を人たらしめるのは文化なのだと改めて実感しました。
第二次世界大戦のウクライナ、ポーランドを舞台に、家族を通して戦争を描いた物語は、今を生きる私たちに「繰り返してはならない思い」を届けてくれます。

『キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩』
7月7日(金)、新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座、池袋シネマロサ、アップリンク吉祥寺ほか、全国ロードショー!
公式サイト:https://carolofthebells.ayapro.ne.jp/
出演:ヤナ・コロリョーヴァ、アンドリー・モストレーンコ、ヨアンナ・オポズダ、ポリナ・グロモヴァ、フルィスティーナ・オレヒヴナ・ウシーツカ
監督:オレシャ・モルグネツ=イサイェンコ
脚本:クセニア・ザスタフスカ
2021/ウクライナ・ポーランド/ウクライナ語/ビスタ/122分/英題:Carol of the Bells
配給: 彩プロ
©MINISTRY OF CULTURE AND INFORMATION POLICY OF UKRAINE, 2020 – STEWOPOL SP.Z.O.O., 2020

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