ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2023.05.21

サンデー早起キネマ『aftersun/アフターサン』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
5/21は、まったくタイプの違う作品を3本ご紹介。

3本目は、誰の心の中にもある大切な人との大切な記憶の物語
自分の思い出と相まって切なさに胸がチクンとする
『aftersun/アフターサン』

11歳の夏休み。ソフィは、離れて暮らす若き父カラムとトルコのひなびたリゾート地にやってきました。
まさしく、ターコイズブルーの海を望むまぶしい太陽の下、カラムが入手したビデオカメラを互いに向け合い、楽しい時間を共にします。思春期のソフィは、現地で顔見知りになった年上のティーンたちが、お酒を飲んで騒いだり、キスをする姿に興味津々。そして、ちょっとした自立心と反抗心から、些細なことでカラムと口喧嘩をしてしまします。初めて別々に行動したその夜、ホテルに戻ると部屋のドアには鍵がかかったままでした…。
20年後、カラムと同じ年齢になったソフィは、11歳のあの夏のビデオテープの映像の中に大好きだった父の当時はわからなかった一面を見出していくのです。

監督・脚本は、瑞々しい感性で長編デビューを飾ったスコットランド出身の新星シャーロット・ウェルズ。
この作品には、自身の思い出が投影されているといいます。1987年生まれの監督が父と旅行した当時のポップミュージックが、90年代へ誘ってくれます。
多くは語られていないのですが、20年前のビデオテープに残る11歳のソフィと父とのまばゆい数日間は、誰でも心の片隅にある“大切な人との大切な記憶”を呼び戻してくれるのです。
そして、幼かった自分がもしあの時、一人の人間としての父の心を知ることができたなら…そんな後悔というより、致し方ないという思いがヒリヒリとした痛みとなって心を刺激するのです。

31歳の男性として生きづらさを抱えながらも娘への深い愛情を見せる父親を演じたのは、ドラマ「ノーマル・ピープル」でブレイクしたポール・メスカル。リドリー・スコット監督が再び手掛ける『グラディエーター2』の主人公にも抜擢され、飛ぶ鳥を落とす勢い。この作品もとってもいい演技です。
ソフィ役は、半年に渡るオーディションで選ばれたフランキー・コリオ。揺れ動く思春期の女の子を堂々と演じ切りました。デビュー作とは思えません。
この二人だからこその、素晴らしい親子でした。

20年後、記憶の断片を手繰り寄せ、あの時の父を再生する。まばゆくてヒリヒリと焼き付ける夏の感触が今鮮やかによみがえる作品は、あなたの心をあの頃に引き戻してくれます。

『aftersun/アフターサン』
5月26日(金)
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿ピカデリーほか全国公開

公式サイト:映画『aftersun/アフターサン』公式サイト 5/26(金)公開 (happinet-phantom.com)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
© Turkish Riviera Run Club Limited, British Broadcasting Corporation, The British Film Institute & Tango 2022

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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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