おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
4/23は、日韓のとっておきの3本をご紹介。
2本目は、日本映画界を牽引してきた阪本順治監督の30作目。初のオリジナル脚本の時代劇です。
辛く厳しい現実の中でも心を通わせることを諦めない若者たちの青春物語
映画『せかいのおきく』

舞台は、外国から開国を迫られ、日本が世界の大きな渦に飲み込まれていく江戸時代末期。
主人公は、武家の娘でありながら貧乏長屋で暮らすおきく。そして、最下層の仕事に就く2人の若者…古紙を売り買いする紙屑買いの中次と糞尿を売り買いする下肥買いの矢亮。
寺子屋で子供たちに読み書きを教えているおきくは、ある雨の日、お寺の厠の庇の下で雨宿りをしていた中次と矢亮に出逢います。やがて、中次は矢亮に誘われて一緒に仕事をすることに。最下層の仕事に就く彼らは、人々に蔑まれることもありますが、明るさは忘れません。武家育ちのおきくが暮らす長屋も、住民はみんな貧しいものの、人情味あふれる暮らしをしています。
わびしく辛い人生を懸命に生きる3人は、だんだん心を通わせるようになりますが、ある悲惨な出来事に巻き込まれたおきくは、喉を切られ声を失ってしまいます。
心を閉ざしたおきく、彼女に淡い想いを寄せる中次、そして過酷な世の中を糞くらえと笑い飛ばす矢亮…彼らの前にどんな“せかい”が広がっていくのでしょうか?

おきく役は黒木華さん、中次は寛一郎さん、矢亮に池松壮亮さん。この3人がとってもいいんです!扱っているのは糞尿ですし、辛いことにも何度も遭遇するけれど、3人を見ていると「青春だなぁ〜」と、笑みがこぼれるとっても自由で爽やかな作品なんです。
さらに、輝く青春を見守る素敵な大人たち、おきくの父親に佐藤浩市さん、お寺の住職は真木蔵人さん、長屋の住人に石橋蓮司さんと、豪華な俳優陣が脇を固めます。

この作品の特徴は、なんといってもモノクロ、スタンダードサイズの映像、まるで墨絵のような美しさです。その美しい映像で描いたのは、江戸時代のサーキュラーエコノミー=循環型経済。糞尿を畑に撒いて野菜を作り、その野菜が人の口に入りまた糞尿になるという循環です。
この作品を企画した原田満生プロデューサーは、「江戸時代は資源が限られていたからこそ、使えるものは何でも使い切り、土に戻そうという文化が浸透していた。人間も死んだら土に戻って自然に帰り、自然の肥料になる。人生の物語もまた肥料となる。自然も人も死んで活かされ生きる。この映画に込めた想いが観た人たちの肥料になることを願っている」と話しています。

日本にかつてあった自然と共生する営み…私たちが忘れてしまった大切な何かがそこにあるような気がします。そして、宝物にしたい素敵なセリフもたくさん詰まっています。佐藤浩市さん演じるおとっさまの“せかいの定義”も素敵です。
社会の底辺を生き抜く彼らの姿を通して、“人と人のぬくもり”と“命の巡り”を映し出し、さらに恋や青春を軽やかに描いた阪本監督の新境地、ぜひ、大スクリーンでお楽しみ下さい。

映画『せかいのおきく』
2023年4月28日(金)GW全国公開
公式サイト:http://sekainookiku.jp/
脚本・監督:阪本順治
出演:黒木華 寛一郎 池松壮亮 眞木蔵人 佐藤浩市 石橋蓮司
配給:東京テアトル/U-NEXT/リトルモア
©2023 FANTASIA

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