ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2023.03.26

サンデー早起キネマ『トリとロキタ』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
3/26は、子供たちが主役のまったく違うタイプの2本。

2本目は打って変わって、あまりに胸が痛くなり、このままじゃいけない!と思わずにはいられなくなります。
アフリカからベルギーに流れ着いた偽りの姉と弟。2人は異国の地で生き抜くことができるのか?
『トリとロキタ』

去年、第75回カンヌ国際映画祭で、75周年記念大賞を受賞しました。
監督・脚本は、『ロゼッタ』『ある子供』など、常に社会の底辺にいる人々にスポットを当て、カンヌ国際映画祭パルムドール大賞を2度も受賞したベルギーの名匠ダルデンヌ兄弟。
「この映画は美しく激しい、決して裏切られることのない、ある揺るぎない友情の物語だ」といいます。

アフリカから地中海を渡りヨーロッパへ亡命する船の中で出逢った難民の二人、ベナンの少年トリとカメルーンの少女ロキタは、姉と弟のような絆で結ばれます。
トリはまだ子供ですがしっかり者。十代後半のロキタは、祖国にいる家族に送金するためドラッグの運び屋でお金を稼いでいました。
偽りの姉弟としてこの街で生きる2人は、どんな時も一緒。歳上のロキタは社会からトリを守り、トリは時々パニック発作を起こすロキタを支えているのです。
そんな中、偽造ビザを手に入れ正規の仕事に就くため、ロキタはさらに危険な闇組織の仕事を始めることに…それは、ふたりの運命が大きく変わる序章でした。
他に頼れる人がいない2人の暖かく強固な絆と、それを断ち切ろうとする冷たい世界。
彼らを追い詰めるのは、麻薬や闇組織なのか、それとも…?

トリ役とロキタ役は、2人とも演技未経験にして初主演!公開後世界で大絶賛されています。
切実な目線や佇まいで難しい役どころを見事に演じ切りました。
ダルデンヌ兄弟はこの作品について「知らず知らずのうちに、私たちの国やヨーロッパに亡命した子供たちが経験している、暴力的で不当な状況を告発するものになった」と話していますが、これでもかと次から次へと大人たちに、搾取され、尊厳を踏みにじられる2人に胸が痛くなり、同じ大人として、そしてこの状況を放任している社会の一員としてすごく恥ずかしくなりました。

先の読めないドキドキハラハラのストーリー展開、どうか無事で幸せに…祈るような気持ちで見た89分。あまりの惨さに唖然とし胸が抉られるようで、涙も出ませんでした。
ダルデンヌ兄弟は「この映画を観た後、観客が私たちの社会にまん延する不正義に反旗を翻す気持ちになってくれたら…それが私たちの願いです」と話しています。
私たちが生きて行く中で、もしかしたら、このような問題を実際に目にすることはないのかもしれません。ただ、現実には近いことが起きています。まずは何が起きているのか知ること…時代の今を切り取る映画はまた一つ私たちに課題を与えてくれました。

『トリとロキタ』
3/31(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館、渋谷シネクイントほか全国順次ロードショー!

公式サイト:https://bitters.co.jp/tori_lokita/
監督・脚本:ジャン=ピエール&リュック・ダルデンヌ
出演:パブロ・シルズ、ジョエリー・ムブンドゥ、アウバン・ウカイ、ティヒメン・フーファールツ、シャルロット・デ・ブライネ、ナデージュ・エドラオゴ、マルク・ジンガほか
配給:ビターズ・エンド
2022年/ベルギー=フランス/カラー/89分/Tori et Lokita
©LES FILMS DU FLEUVE – ARCHIPEL 35 – SAVAGE FILM – FRANCE 2 CINÉMA – VOO et Be tv – PROXIMUS – RTBF(Télévision belge)
Photos ©Christine Plenus

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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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