ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2022.07.03

サンデー早起キネマ『アルピニスト』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
7/3は、まったく違う種類の冒険の物語を2本ご紹介。

この暑さの中、ヒヤヒヤしてお尻がスース―するほどのスリルに満ちたドキュメンタリー映画
『アルピニスト』

そう、険しい岩や氷の壁をたった一人で登り続ける孤高のクライマーに、2年間密着した作品です。
自身もクライマーであるドキュメンタリー作品の名手ピーター・モーティマー監督が「とんでもないクライマーがいる」と噂を聞いて探し出し追い続けたクライマー。
この物語の主人公は、23歳のカナダ人青年マーク・アンドレ・クレール。
その噂は、「クライマーの間で登頂不可能と言われている山を、誰にも知られることなくたった一人で次々と制覇している男がいる」というもの。
最近のクライマーは、登頂に成功するとSNSでその偉業を発表するのが普通ですが、マークは、SNSはおろか携帯電話さえもっていないのです。
彼は、自分の偉業が人に知られなくてもいいのです。自分の楽しみだけのために険しい山に挑戦。それは「楽しい冒険」だというのです。そして、「死の危険がなければ冒険ではない。子供の遊びだ」と。

以前このコーナーでやはり独りで岩壁を素手で登る『フリーソロ』という作品をご紹介しましたが、その主人公であるアレックス・オノルドがこの作品のインタビューに応じ、「僕はスポーツとして登っているけど、彼は山の神、スピリチュアルな次元」というほどのクライマーなのです。
幼い頃ADHDだと診断されたマークは、祖父にもらった山の本がきっかけで登山に魅了されていきます。
命綱なし、通信機器を持たず、下見もしないというのが彼のスタイル。もちろんたった独りで。
とはいっても、マークは23歳の青年らしく、撮影の途中も消えてしまうなど自由な雰囲気をまとい、同じく登山家の彼女と2人、気ままに冒険を楽しんでいるのです。

マークが岩や氷の壁をスルスルと、本当にスルスルと登っていく姿は、景色と一体化していて、とても自然で美しいです。ただ、その登っている壁は90度よりももっと険しく、時には岩、時には氷、雪と、どんどん姿を変えていきます。
もし、足を置いた氷がパキンと割れてしまったら、真っ逆さまに奈落の底。もう、ハラハラドキドキ。映像の世界だと分かっていても、つい「あっ!きゃっ!」と声が漏れてしまいます。
そして、晴れていると思ったら急に吹雪いてきたり、山の自然は容赦なく、天候も刻々と変わります。
そんな厳しい自然に挑戦するのは一体どうしてなのでしょうか?

「登頂すると、今までの人生はこのためにあったと思える。人生の表面的なことはどうでもよくなる」というマーク。キラキラ輝く満天の星が見守る中、登り始め、美しすぎる朝陽に祝福される…そんな姿を見ると、彼が挑戦することの意味が私達にも伝わってきます。
自分で自分の居場所を見つけて、どこまでも自分に正直に純粋に生きたアルピニスト。
あまりにも美しすぎる壮大な景色の中で育まれた彼の人生哲学は、私達の心に一筋の光のようなものを届けてくれるように思えるのです。

『アルピニスト』 (93分)
7月8日(金)よりTOHOシネマズ日比谷シャンテ他で全国公開

公式サイト:https://alpinist-movie.com
出演:マーク・アンドレ・ルクレール、ブレット・ハリントン、アレックス・オノルド(『フリーソロ』)ほか
監督:ピーター・モーティマー、ニック・ローゼン
配給:パルコ ユニバーサル映画
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      ひろたみゆ紀

      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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