ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2022.06.26

サンデー早起キネマ『ルッツ 海に生きる』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
6/26は、それぞれの国のある時代を切り取る3つの国の作品をご紹介。

2本目は、日本初公開の地中海の島国マルタの作品。
伝統と近代化の間で生じる漁師の葛藤を描いた
『ルッツ 海に生きる』

タイトルのルッツとは、海の青、赤、黄色や緑で色付けされたとっても美しい小さな木造の船。
この地の漁師が先祖代々受け継ぎ、家族が大切に守ってきた伝統の船です。

主人公は、曾祖父の代からのルッツで漁をしている26歳のジェスマーク。
地球温暖化の影響もあり魚が獲れない上に、ルッツの船底が水漏れ!修理するにはお金がかかります。
さらに、生まれて間もない息子が発育不良だとわかり、治療費も必要になります。
動揺して裕福な実家に頼ろうとする妻デニスと、夫婦2人で乗り越えたいジェスマークの間には少しずつ不協和音が。
親友のデイヴィッドのお陰でルッツは修理できましたが、このままでは安定した収入が得られないと痛感したジェスマークは、漁師としてやってはならないことに手を染めてしまうのです…。
ルッツの漁師という職業に大いなるプライドを持っていたジェスマーク。でも妻子を養うためにはお金が必要です。
このままルッツで漁を続けるのか?安定した収入のために別の仕事に就くべきなのか?人生の選択を迫られることになるのです。

ただ、自分の誇れる仕事をして、家族と幸せに暮らしたい…それだけの小さな望みが果てしない夢のように感じてしまうジェスマーク。家族は、自分に愛と力をくれる大切な存在、でも時には足枷になってしまうこともあります。
何かを得るためには何かを犠牲にしなければならない(彼の場合は伝統=プライドとお金=近代化)という人生の岐路に立った時、人は何を考え、何を選ぶのか…その選択を誰も責めることはできないという事実を突きつけられました。

この作品、何が一番すごいって、ジェスマーク役と親友のデイヴィッド役を演じたのが、マルタの本物の漁師さんなんです。もちろん映画出演は初体験!なのに、なんという素晴らしい演技!
ちょっとドキュメンタリーチックなのはそういうことも影響しているのでしょう。
この作品が長編映画デビュー作、マルタ出身のアメリカ人、アレックス・カミレーリ監督の撮影の仕方や演出も見事です。
そして、もう一つの主役、ルッツの美しさを際立てる海の雄大さに目が奪われます。
成長に伴う痛み、家族を守るために踏み出した一歩は何を犠牲にしたのでしょうか?

『ルッツ 海に生きる』
6月24日(金)より、新宿武蔵野館他にて全国順次公開

公式サイト:映画『ルッツ 海に生きる』公式HP (arc-films.co.jp)
監督:アレックス・カミレーリ 
出演:ジェスマーク・シクルーナ ミケーラ・ファルジア デイヴィッド・シクルーナ
2021年/マルタ/カラー/ビスタ/5.1ch/95分/日本語字幕:杉本あり
後援:駐日マルタ大使館
配給:アーク・フィルムズ、活弁シネマ倶楽部
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    パーソナリティ
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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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