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6/5は、日韓の若い男性を主人公にしたちょっと対照的な作品を2本ご紹介。
1本目は、名実ともに日本映画界をけん引する阪本順治監督・脚本、そして「自分はもう、失うものはなにもない」と内面をさらけ出した芝居で臨んだ伊藤健太郎・主演
『冬薔薇(ふゆそうび)』
あの事件から2年ぶりの映画出演。これまで見たことのない雰囲気のお芝居に、「ああ、伊藤健太郎さんが生まれ変わって帰ってきたんだな」と思いました。
舞台はある港町。伊藤さんが演じる主人公・渡口淳は、専門学校にも行かず、半端な不良仲間とつるんで、友達や女性にお金をせびり、周りに流されるまま適当に生きています。
両親は、埋め立て用の土砂をガット船という船で運ぶ海運業を営んでいますが、時代とともに仕事も減り、後継者不足に頭を悩ませながらも、何とか日々をやり過ごしていました。
淳はそんな両親の仕事にも興味を示さず、親子の会話もほとんどありません。
そんな折、淳の仲間が何者かに襲われる事件が発生。犯人と思われる人物は思いもよらない人でした…。
淳は、自分とも他人とも向き合えない、向き合うのが怖い、いつも逃げてばかり。でも、そんな淳がどうなっていくのか、とても気になって物語に集中してしまいます。
伊藤健太郎さんの新たな一面を見せてくれたこの作品。脇を固めた俳優陣も素晴らしかったです。
父親役は小林薫さん、母親は余貴美子さん、ガット船の乗組員は石橋蓮司さん、伊武雅刀さんなど、一人ひとりが背負ってきた人生がセリフや佇まいに現れていて、その深さに圧倒されました。
淳がなぜこうなってしまったのか、両親との関係も考えさせられます。人間同士の距離感って本当に難しいですよね、親子なら尚更です。
阪本監督は、「伊藤健太郎で一本撮ってみませんか?」と映画会社からオファーされた時、「伊藤さんと腹を割って話してから、引き受けるかどうかを決めようと思った」といいます。実際に話してみると“人懐こく賑やかで屈託のない若者”という印象と同時に、「どこか寂しさも感じた」という監督。
渡口淳というキャラクターはフィクションではありますが、その時監督が感じた伊藤さんの独特の佇まいや、対話から浮かんできた風景や色合い、匂いなどが色濃く反映されています。
だからこそ、伊藤さんも「淳の生き方が、とにかく他人とは思えない。撮影中は淳と一緒に過ごし、昔の自分を思い出したり、今の自分を見つめ直す時間だったと思う」と話しているのです。
監督は、「渡口淳の“淳”は阪本順治の“順”でもある」とも話しています。自身が抱えてきた欠落感や未熟さも詰め込まれています。
それは、誰にでも共通するものなのでしょうね。人間の業のようなものなのかもしれません。
厳しい寒さの中でも花開く冬薔薇。淳はどこに行き着くんだろう…ハッとする思いがけない結末に、心が震えました。
『冬薔薇(ふゆそうび)』
6月3日(金)より、新宿ピカデリーほか全国ロードショー
公式サイト:https://www.fuyusoubi.jp/
脚本・監督:阪本順治
出演:伊藤健太郎 小林薫 余 貴美子
眞木蔵人 永山絢斗 毎熊克哉 坂東龍汰 河合優実 佐久本宝 和田光沙 笠松伴助
伊武雅刀 石橋蓮司
2022年|日本|カラー|スコープサイズ|5.1ch|109分|PG12
配給:キノフィルムズ
©2022「冬薔薇(ふゆそうび)」FILM PARTNERSTwitter:
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