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11/7は、「“知る”ということがどれだけ大切なのか」、不寛容の時代にご覧頂きたい作品を2本ご紹介。
2本目は、「市民のための市役所であること」に挑戦する姿を描くドキュメンタリー作品
『ボストン市庁舎』
アメリカ・マサチューセッツ州の州都ボストンは、1630年に設立された歴史ある街。
市民の半数以上を黒人・ヒスパニック・アジア系の有色人種が占める現代アメリカの縮図のような大都会。
ボストン大学、ボストンレッドソックスなどでも有名ですね。
そのボストンの市庁舎にカメラを持ち込み、2018年秋と2019年冬に撮影したのは、ボストン生まれ、このお正月で、92歳になるフレデリック・ワイズマン監督。
アカデミー名誉賞に輝く巨匠の「集大成にして最高傑作」といわれているこの作品について、監督は「ボストン市庁舎は、トランプが体現するものの対極にあります」と述べています。
一番の特徴はその長さ。なんと274分、4時間34分!でも、飽きることなく見続けられます。
警察、消防、保健衛生のセクションから始まり、市の予算、温暖化対策、公園の管理、退役軍人や高齢者・ホームレスの支援、出生・結婚・死亡記録の管理まで、多様化を極める行政、福祉を司る地方自治体の活動を、ナレーションなしに、その現場一つ一つを切り取り、淡々と軽やかに描き出しています。
40を超えるセクションを区切っているのは、ボストンの歴史ある美しい街並みと風景。ワイズマン監督の故郷への愛を感じます。
そして、この作品の1/3ほどに登場するのが撮影当時の市長マーティン・ウォルシュ氏。
虐げられたアイルランド系の移民であり、2度の小児がんとアルコール中毒を克服した市長は、市役所のすべての活動の中心にいて、ボストンで起きていることを全て理解しています。
市の職員たちはウォルシュ市長の政策を忠実に実行しています。
ある会議で、職員が「今日の意見は市役所に持ち帰る」といったところ「それは市長にですか?」と市民が尋ねる場面があるのですが、「そうです」と職員が答えると市民が納得するんです。
どれほど市民に信頼されているのでしょうか?とても印象的なシーンでした。
1人の人物の意志で、組織がここまで団結し変わることができる…奇跡のような出来事を知ってしまった私たち。このボストン市庁舎の物語は、私たちが目指せる、目指さなければならない物語でもあると気づかされます。
ちなみに、ウォルシュ市長は、バイデン政権下で労働長官に就任し、今年の3月に市長を辞任。
つい先日11/2に行われた市長選挙では、アジア系の女性ミシェル・ウー氏が当選しました。白人男性以外の史上初のボストン市長誕生に、ますますボストンから目が離せなくなりました。
『ボストン市庁舎』
11月12日(金)よりBunkamuraル・シネマ、ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿シネマカリテ他全国順次公開
公式サイト:https://cityhall-movie.com/
監督・製作・編集・録音:フレデリック・ワイズマン/2020年/アメリカ/英語/274分/カラー/1.78:1/モノラル/DCP
原題:City Hall 字幕:齋藤敦子
後援:アメリカ大使館 配給:ミモザフィルムズ、ムヴィオラ
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