スポーツ伝説

2024.12.06

2024年12月2日~6日の放送内容

【プロ野球 和田毅投手】
 松坂大輔投手を筆頭に名選手を多数輩出して、“松坂世代”と呼ばれた1980年度生まれのプロ野球選手たち。その中でただ1人、NPBで現役を続けてきた福岡ソフトバンクホークスの和田投手が、ついにユニフォームを脱ぎました。43歳の和田投手は、2002年のドラフト自由獲得枠で当時「福岡ダイエー」だったホークスに入団。ルーキーイヤーの03年に14勝を挙げて新人王に選ばれ、以降5年連続でふたケタ勝利を挙げました。06年の第1回WBC・ワールド・ベースボール・クラシックでは、世界一も経験しています。11年オフに海外FA権を行使してメジャーリーグへ移籍しますが、故障もあって通算5勝に終わり、16年に古巣・ホークスへ復帰。ベテランとして存在感を示し、日米通算165勝をマークしました。23年には42歳で8勝を挙げ、今シーズンもローテーションの一角として期待されていた和田投手。しかし8試合に登板してわずか2勝に終わり、11月5日に突然の引退発表となりました。
 和田投手の輝かしい功績の中で注目すべきは、165勝の内、40代になってから挙げた白星が22勝もあることです。それだけ勝てたのは体調管理や節制に努めていた証であり、野球に取り組む姿勢は若手たちの良き手本になりました。また大舞台での経験を伝えられるのも和田投手ならでは。日本シリーズでは記憶に残る2つの勝利を挙げています。まずはプロ1年目、03年にセ・リーグ王者・阪神と戦った日本シリーズ。3勝3敗で迎えた第7戦の先発を任された和田投手は、勝った方が日本一という大一番を1人で投げきって、ルーキーにして日本一の胴上げ投手となったのです。それから16年後の19年、38歳になった和田投手は、巨人との日本シリーズで3連勝した後の第4戦に先発。巨人のエース・菅野智之投手との投げ合いで5回無失点の好投を演じ、16年ぶりの日本シリーズ白星と再びの日本一に貢献しました。

 

【テニス ラファエル・ナダル選手】
 2000年代前半から、およそ20年にわたって第一線で活躍した偉大なテニスプレーヤー、ナダル選手が現役引退を表明しました。赤土のクレーコートで絶対的な強さを誇ったことから“クレーキング”の異名をとったレジェンドです。ナダル選手が4大大会を初めて制したのは05年、クレーコートで行われた全仏オープンです。この時、19歳の若さに似合わない冷静な試合運びやミスの少ない確実なプレー、フェアプレーの精神に富んだコート上でのマナーも高く評価されました。その後、全米オープンを4回、全豪オープンとウィンブルドンを2回ずつ制覇し、4大大会をすべて制する「キャリアグランドスラム」。さらにオリンピックでも金メダルを獲得したため、史上2人目となる「キャリア・ゴールデンスラム」の偉業も達成します。最後の4大大会優勝も全仏オープンです。22年、36歳で迎えた決勝戦をストレートで制し、大会最多の14回目。しかも史上最年長での優勝を果たしました。4大大会でナダル選手は、通算22回の優勝を飾っています。
 ナダル選手を語る上で欠かせないのは、ロジャー・フェデラー選手との戦いです。長きにわたって世界ランキング1位の座を争い、4大大会で何度も相まみえた生涯のライバルでした。2人は40回対戦して、ナダル選手の24勝16敗。中でも史上最高の名勝負といわれるのは、08年のウィンブルドン決勝です。当時、大会5連覇を誇っていた“芝の王者”フェデラー選手に対し、ナダル選手は全力でその牙城を崩しにかかり、ほぼ日没にまで及んだ4時間48分の死闘を制してウィンブルドン初優勝を成し遂げました。フェデラー選手が引退した後も活躍を続けたナダル選手でしたが、今年の全仏オープンでこの大会初の初戦敗退を喫したことも引き金となり、ついにラケットを置く決断をしたのです。

      
【サッカー 伊東輝悦選手】
 現役最年長Jリーガー・50歳のレジェンドが、スパイクを脱ぐ決断をしました。元サッカー日本代表で、今シーズンはJ3のアスルクラロ沼津でプレーしていた伊東選手です。伊東選手といえば語り草になっているのが1996年、アトランタオリンピックでの活躍です。28年ぶりのオリンピック出場を果たした23歳以下の日本代表は、サッカー王国・ブラジルと対戦。1対0で勝利し、“マイアミの奇跡”と呼ばれる世紀の番狂わせを起こしました。この決勝点を挙げた人物こそ、伊東選手です。代表でのポジションは、守備的ミッドフィルダーのボランチ。ブラジルの圧倒的な攻撃を前に守備に専念するばかりでしたが、所属チームでは攻撃的ミッドフィルダーとして活躍していただけに、ここぞという場面でゴールへの嗅覚を発揮しました。ブラジルゴール前で、日本の選手とブラジルのディフェンダー、ゴールキーパーの3人がもつれたこぼれ球を伊東選手が押し込み、1点をもぎ取ったのです。
 オリンピックだけでなく、98年のフランスワールドカップ日本代表にも選ばれるなど、国際舞台での実績も多い伊東選手ですが、Jリーグでの偉大すぎる実績を外すわけにはいきません。プロ生活のスタートは、Jリーグが始まった93年。Jリーグ元年を知る唯一の現役Jリーガーでもありました。清水エスパルスで始まったキャリアはその後、甲府・長野・秋田へと移り、2017シーズンからは地元・静岡県の沼津でプレー。キャリアを通じて大きなケガもなく、甲府時代の11年には、Jリーグ史上初となる金字塔「J1通算500試合出場」を達成しています。J1からJ3まですべてのカテゴリーを経験し、通算560試合に出場しながら、リーグ戦で受けたレッドカードはゼロ。累積警告による出場停止もありません。まさに紳士的な鉄人として、32年間のプロ生活を走り続けたのです。

 

【サッカー アンドレス・イニエスタ選手】
 サッカーの世界的名門クラブ・バルセロナで長年にわたって活躍し、日本のヴィッセル神戸でもプレーしたイニエスタ選手が、今年10月に現役を引退表明しました。華麗なドリブルや鋭いパスはもちろん、常に最善で創造性にあふれたプレーを選択し、“世界最高の魔術師”と称されるテクニックで名門バルセロナの勝利に貢献したイニエスタ選手。16年間のトップチームでのキャリアにおいて、獲得したタイトルの数は32個。中でもヨーロッパ・チャンピオンズリーグ優勝は4回を数え、その内3つの決勝戦でアシストを記録するなど、大一番の勝負強さを発揮してバルセロナの最高傑作とも称されました。スペイン代表においてもイニエスタ選手の存在感は別格で、ハイライトは2010年のワールドカップ・南アフリカ大会です。ケガで本調子ではなかったにもかかわらず、7試合中6試合に先発。決勝戦は延長戦にもつれる死闘でしたが、最後はイニエスタ選手が決勝ゴールを決め、スペイン代表に初のワールドカップ制覇をもたらしました。また、ワールドカップ以上に勝つのが難しいとされるヨーロッパ選手権でも、08年と12年に連覇を達成。12年の大会ではMVPに選ばれるなど、“無敵艦隊”と呼ばれたスペイン代表のまさに中心人物でした。
 世界屈指の名選手と呼ばれていたイニエスタ選手は18年、ヴィッセル神戸に電撃移籍。イニエスタ選手と一緒にプレーしたいと、日本代表クラスや世界レベルの選手が次々と神戸に加入します。酒井高徳選手もその1人で、試合が終わるたびに動き出しやパスのタイミングなどを聞きにいったそうです。イニエスタ選手はキャプテンも務め、19年度の天皇杯では神戸に初のタイトルをもたらしました。23年の夏にイニエスタ選手が退団したあと、神戸はリーグ戦で初優勝。強豪クラブへの礎を築いたイニエスタ選手の功績は誰もが認めるところです。神戸に続き、アラブ首長国連邦のクラブでプレーを続けてきたイニエスタ選手でしたが、40歳を迎えた今年、現役引退を決断。今後は指導者の道を進むべく、監督のライセンス取得を目指します。

 

【バレーボール 古賀紗理那選手】
 長年、日本の女子バレーボール界のエースとして活躍し、2021年の東京オリンピックと今年のパリ・オリンピックにも出場した古賀選手。パリ大会開幕直前の7月、自身のSNSでパリを最後に現役引退と発表して世間を驚かせます。選手として最盛期の28歳での引退。実は東京オリンピックのあと、メンタル的にもう代表でプレーできないという気持ちもありましたが、22年にキャプテンを任されたことで、パリまでは先頭に立って全力で走り抜けると心を決めました。そのパリ・オリンピックは、1勝2敗で1次リーグ敗退。現役最後をメダルで飾ることはできませんでした。
 日本代表を牽引していく上で古賀選手に大きな影響を与えたのが、かつて日本代表の主将を務めた木村沙織選手です。それまで言われたままにプレーしていた古賀選手は、考えてプレーすることに新たな楽しみを見出し、若手たちのよき手本となりました。引退セレモニーは、10月12日、NECレッドロケッツ川崎の本拠地・とどろきアリーナで行われ、母親から受け取ったボールで最後のサーブを打って、20年間の選手生活に別れを告げた古賀選手。今後はその経験を後輩の選手たちに伝えるべく、日本の女子バレーを陰から支えていきます。

  
来週のスポーツ伝説もお楽しみに!!

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    パーソナリティ
    • 滝本沙奈
      滝本沙奈
      滝本沙奈

      滝本沙奈

      生年月日:1984年6月6日
      出身地:東京
      学歴:青山学院大学文学部英米文学科卒
      趣味:マリンスポーツ(ダイビング、サーフィン、釣り)
      資格:PADIオープンウォーターダイバー、おさかなマイスターアドバイザー

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