スポーツ伝説

2024.11.08

2024年11月4日~8日の放送内容

【車いすテニス 小田凱人選手】
 力強いサーブや強烈なバックハンドからのショットを武器に活躍する車いすテニスの小田選手。17歳で出場した2023年の全仏オープンで史上最年少優勝を果たすと、史上最年少で世界ランキング1位に到達した若きスターです。9歳の時に骨肉腫と診断され、車いす生活になった小田選手。ロンドンパラリンピック、車いすテニスの男子シングルスで金メダルを獲得した国枝慎吾選手の映像を見て憧れ、テニスを始めます。名前にパリの象徴・凱旋門の「凱」が入っているだけに、パリパラリンピックは宿命と語り、絶対に金メダルを獲ると心に誓っていました。23年のアジアパラ大会を制してパリ・パラリンピック出場権を獲得すると、今年6月にはパラリンピックと同じローランギャロスで行われた全仏オープンで連覇を成し遂げ、クレーコートでも強さを示してみせた小田選手。パラリンピック初出場ながら、男子シングルスの優勝候補として再びローランギャロスに乗り込みました。
 パラリンピック本番の男子シングルスでは、決勝戦まで1セットも落とさずに勝ち上がった小田選手。金メダルを懸けて戦う相手は、当時世界ランク1位に君臨していたイギリスのアルフィー・ヒューエット選手です。第1セットは小田選手のペースで奪ったものの、第2セットはデュースが10回も続くなど激しい攻防の末、ヒューエット選手に奪い返されます。迎えた最終第3セットもヒューエット選手にリードを許す苦しい展開で、小田選手はマッチポイントを握られる絶体絶命のピンチを迎えます。しかしここで相手のドロップショットがわずかに外れてアウトになった瞬間、一気に攻勢に出た小田選手は逆転で決勝戦を制し、男子シングルス史上最年少で金メダルを獲得しました。勝利が決まった瞬間、車いすごとセンターコートで大の字に倒れ込んだ小田選手。大歓声を全身に浴びて、涙を流しながら喜びを噛み締めました。

 

【車いすテニス 上地結衣選手】
 女子車いすテニスの第一人者である上地選手は、2014年に当時史上最年少の20歳で4大大会のダブルス全てに優勝する年間グランドスラムを達成。シングルスでも世界ランキング1位に上り詰めました。そんな上地選手の前に立ち塞がったのが、世界ランキング1位の座をここ6年以上守り続けているオランダのディーデ・デフロート選手です。東京パラリンピックの女子シングルスでもデフロート選手に敗れて銀メダルに終わった上地選手にとって、デフロート選手に勝って世界一になることが悲願となっていました。迎えた今年9月のパリ・パラリンピック。上地選手はまず、田中愛美選手と組んだ女子ダブルスで決勝に進出。対するのは、デフロート選手のオランダペアです。互いに1セットずつ奪い、勝負は10ポイント先取の最終第3セットへ。ここで上地選手が金メダルへの執念を見せます。強力なフォアハンドで連続ポイントを奪うと、長いラリーも粘り強く耐えて相手のミスを誘い10対8で勝利。4度目のパラリンピックで初めて、金メダルを手にしたのです。この勝利は、オランダ勢の女子ダブルス9連覇を止める快挙でもありました。 
 ダブルスを制した翌日、上地選手はシングルスでも決勝の舞台に立ちます。相手はもちろん、デフロート選手。この絶対女王に勝つため、上地選手は1年以上かけて車いすテニス界のレジェンド・国枝慎吾さんから指導を受けてきました。国枝さんから技術的なことだけでなく、車いすやラケットの糸の貼り方まで、様々な面でアドバイスを受けた上地選手。決勝では第1セットこそ取られたものの、その後は特に磨きをかけたドロップショットを効果的に使い、第2・第3セットを連取。過去3年で1勝しかできなかった相手を大舞台で破り、ダブルスと合わせてパラリンピック2冠を達成したのです。

      
【ゴールボール 男子日本代表】
 出場は1チーム3人ずつ。視覚に障害を持つ選手がアイマスクをつけ、音が鳴るボールを敵陣内のゴール目掛けて投げ合い、得点を競うゴールボール。日本は、女子代表が2012年のロンドン・パラリンピックで金メダル。そして前回の東京大会でも銅メダルを獲得しています。一方、男子日本代表は開催国枠で出場した東京大会が初めての出場で、実績では女子に大きく水をあけられていました。そのため男子代表はこの3年間、年間200日の代表合宿を組んで、筋力強化とテクニックを向上。寝食を共にしてチームワークを高め合った結果、今回のパリ大会で初めて自力で出場権を獲得することができました。そんな日本代表のエースが、宮食行次選手です。宮食選手は小学5年生の時に網膜色素変性症と診断され、視界の一部が見えにくくなりました。それでも身長182㎝の高さを生かして、高さが異なるバウンドをつけたボールを投げ分けて日本の攻撃を牽引。勝てば初のメダルが確定する準決勝の中国戦では、試合開始から30秒過ぎで宮食選手がいきなり先制ゴール。その後も立て続けに得点を決め、日本は13対5で中国に快勝。決勝進出を決め、男子初のメダルが確定しました。
 男子初の金メダルを懸けた決勝戦の相手は、予選リーグで敗れたウクライナ。このウクライナ相手にラッキーボーイ的な活躍を見せたのが、佐野優人選手です。中学3年生の時、目の難病であるレーベル遺伝性視神経症と診断され、視力が急激に低下。生きる希望となったのがゴールボールでした。パリパラリンピック出場権を懸けた昨年の国際大会の準決勝で、ウクライナと対戦した日本。この時は接戦を演じ、どちらかがゴールを決めた時点で勝利となるゴールデンゴール形式の延長戦に突入します。そこで劇的なゴールを決めたのが佐野選手でした。パラリンピック決勝でも、佐野選手はウクライナ戦で大活躍します。後半3分過ぎ、佐野選手がスピードのあるボールで得点を決めて日本がリード。すると延長開始早々、佐野選手がゴールデンゴールを決め、日本男子悲願の金メダルを獲得したのです。

 

【大相撲 王鵬幸之介関】
 母方の祖父が、優勝32回を誇る昭和の大横綱・大鵬関。祖父・父と同じ道を歩み、3代続けて幕内力士となった王鵬関。2018年1月の初場所で前相撲からデビューすると、新弟子を紹介する新序出世披露の際に着けた化粧まわしは、祖父が現役時代に使用していた「大鵬」という刺繍入りのものでした。この時に一緒に土俵に上がった同期デビューの力士が、元横綱・朝青龍関の甥・豊昇龍関です。大横綱の孫と甥が並んだこの新序出世披露は、当時相撲ファンの間で話題になりました。王鵬関はその3年後、21年1月の初場所で新十両に昇進し、目標の3代関取を実現させます。入門当時は本名の「納谷」でしたが、十両昇進を機に現在の四股名に改名。この時は記念に、祖父の出身地である北海道・弟子屈町から化粧まわしが贈られました。さらに1年後の22年1月の初場所で新入幕を果たし、今年1月の初場所で10勝を挙げて、3月の春場所の番付は当時自己最高の東前頭3枚目まで上がりました。
 今年3月の春場所5日目、番付が上がった王鵬関は横綱・照ノ富士関と初めて対戦。横綱との対戦はこれが初めてでした。「結びの一番はすごく気持ちよかった」と語る初挑戦の横綱に臆することなく真っ向勝負を挑んだ王鵬関。寄り切りで初の金星を挙げました。この春場所は残念ながら負け越してしまいましたが、再び番付を自己最高の西前頭2枚目まで上げた9月の秋場所では、5日目に埼玉栄高校の先輩、大関・琴櫻関に初の黒星をつけ、続く6日目には同期入門の大関・豊昇龍関と対戦。強引な掛け投げを狙う大関を左からのすくい投げで下し、大関2人を破る快挙を達成しましたさらに千秋楽では正代関に勝って9勝目を挙げ、初の三役昇進に大きく前進。角界のサラブレッドがついに覚醒の時を迎えました。

 

【大相撲 狼雅外喜義関】
 今年7月の名古屋場所で9勝、9月の秋場所で8勝と幕内で初めて2場所連続で勝ち越しを決めた大相撲の注目力士・狼雅関。1999年にモンゴル人の父親とロシア人の母親の間に生まれ、14歳まではロシアに住んでいました。中学生の時、横綱・白鵬関が主催する相撲大会に出場した際、横綱から直々に相撲の名門・鳥取城北高校への留学を勧められて来日しました。子どもの頃から柔道やモンゴル相撲、レスリングなどをやっていたこともあって、高校に入学するやたちまち頭角を現した狼雅関。2017年にインターハイの相撲個人決勝で、元横綱・朝青龍関の甥・ビャンバスレン選手を下して外国出身者では初の高校横綱になります。このビャンバスレン選手は、現在の大関・豊昇龍関です。このタイトルをひっさげて二子山部屋に入門した狼雅関ですが、ビザがすぐに取得できず、同学年の豊昇龍関よりデビューが1年ほど遅れることになりました。しかしそこは慌てず体作りに専念。おかげで下半身はグッと引き締まり、19年初場所に序ノ口でデビューすると、いきなり全勝優勝。続く春場所も序二段で全勝優勝を果たします。
 幕下ではケガの影響もあって足踏みが続き、デビューから4年目の22年11月、九州場所でようやく新十両に昇進。元大関・雅山の二子山親方が部屋を開いてから、初の関取誕生となりました。その1年後、23年11月の九州場所で待望の新入幕を果たしますが、わずか1場所で陥落。幕内復帰を懸けた今年1月の初場所、勝ち越しがかかる一番で対戦したのが、鳥取城北高校で同期だった尊富士関でした。実は狼雅関が高校横綱になったインターハイで、準決勝で下した相手が尊富士関でした。この一番は尊富士関にとっても、新十両初日から10連勝という新記録達成が懸かった大一番。互いに負けられない一戦は、送り出しで狼雅関に軍配が上がり、狼雅関は1場所で幕内に復帰。一方、初場所で十両優勝を果たした尊富士関は、3月の春場所で110年ぶりの新入幕優勝という快挙をやってのけました。豊昇龍関も含め、優秀な同期の仲間たちに刺激を受けながら、狼雅関もさらに上を目指します。

  
来週のスポーツ伝説もお楽しみに!!

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    パーソナリティ
    • 滝本沙奈
      滝本沙奈
      滝本沙奈

      滝本沙奈

      生年月日:1984年6月6日
      出身地:東京
      学歴:青山学院大学文学部英米文学科卒
      趣味:マリンスポーツ(ダイビング、サーフィン、釣り)
      資格:PADIオープンウォーターダイバー、おさかなマイスターアドバイザー

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