【やり投げ 北口榛花選手】
北口選手は昨年8月、陸上世界選手権の女子やり投げで66m73㎝のビッグスローを決めて大逆転で金メダルを獲得。一躍、今年のパリオリンピックで金メダルの最有力候補に躍り出ました。大学生の時、やり投げ王国として知られるチェコに渡り、ダヴィッド・セケラックコーチのもとトレーニングを積んできた北口選手。体をひねって遠心力を使う“チェコ流”の投げ方は女子選手には難しいと言われていましたが、体の使い方を学び、この投げ方をマスター。2021年の東京オリンピック出場を勝ち取ります。ところがオリンピック本番ではコンディションを整えることに失敗。決勝には進みましたが12位に終わりました。その後、体作りを一から見直し、手にした成果が昨年の世界選手権優勝でした。2度目のオリンピックとなったパリ大会は、東京の時とは異なり、金メダル本命の立場として人知れずプレッシャーとも戦っていました。オリンピック2週間前には体調不良で3日間の安静が余儀なくされ、いつも通りに投げられるようになったのは予選の3日前でした。
迎えた本番、ダイナミックなフォームから繰り出した第1投目は、今シーズンの自己ベストを更新する65m80cmを記録してトップに立ちます。2投目以降、ライバルたちがこの記録に挑みますが、最後まで抜く選手は現れず、結局この1投目が金メダルを決めるビッグスローとなります。オリンピックのフィールド種目で、日本の女子選手がメダルを獲得するのは史上初の快挙でした。
【レスリング 櫻井つぐみ選手】
父親が立ち上げた高知県のレスリングクラブで腕を磨き、世界的な実力者となった、女子57キロ級の櫻井選手。父・優史さんに、基礎から徹底的に叩き込まれた櫻井選手は、小学生になると全国大会で優勝。その後も、父が監督を務める高校に進んで、3年生の時には全日本選手権で準優勝を収めるまで成長を遂げました。しかし思春期となり、素直に父の指導を受け止めることができなくなっていった櫻井選手は、親元を離れて群馬県の育英大学に進学。全幅の信頼を置く柳川美麿監督の指導でさらに実力を磨くと、世界選手権では3連覇を達成してパリオリンピック代表の座をつかみます。親元を離れたことで、改めて父から受けた指導のありがたみにも気づくことができました。
柳川監督のもと、大学のレスリング部で特に磨いてきた技のひとつが「腕取り」。自分の両腕で相手の片腕をつかみ、バランスを崩す技です。パリオリンピックでも櫻井選手はこの「腕取り」を武器に勝ち上がりました。準決勝の相手は、2016年のリオオリンピックで、53キロ級のレジェンド・吉田沙保里さんの4連覇を阻んで金メダルを獲得した強敵です。序盤はポイントをリードされる苦しい立ち上がりでしたが、櫻井選手はここから「腕取り」を駆使して優位に立ち、一気に逆転。決勝戦へと駒を進めます。決勝の相手は、昨年の世界選手権でも対戦し、わずか1ポイント差で勝ったモルドバのアナスタシア・ニキータ選手。ニキータ選手は櫻井選手の腕取りを警戒しますが、櫻井選手は腕をたぐるようにプレッシャーをかけ続け、着実にリードを拡げてポイント6対0で幼い頃からずっと夢見てきた金メダルを獲得したのです。
【レスリング 清岡幸大郎選手】
パリオリンピック・レスリング男子フリースタイル65キロ級代表の清岡選手は、代表選考で伏兵的な存在でした。この階級では、東京オリンピック金メダリストの乙黒拓斗選手が本命視されていたからです。ところが内定の懸かった昨年の世界選手権で、乙黒選手がまさかの敗北。再びチャンスが巡ってきた清岡選手は、全日本選手権で乙黒選手を破り、大逆転でパリ行きの切符を掴んだのです。そんな清岡選手のスタイルは、終盤でも衰えないスタミナを生かした、超攻撃的レスリング。中でも得意なのが、相手の足の間に自分の頭を入れて相手を回転させる、変形のアンクルホールド・通称“リンクル”。1度決まってしまえば、相手が簡単には抜け出せないこともあり、何度も回転させることで大量ポイントが狙える“必殺技”です。オリンピック前の国際大会では、決勝で8ポイントを追いかける苦しい展開の中、リンクルでポイントを重ねて同点に追いつき、逆転勝利を呼び込みました。
同じくパリオリンピック女子57キロ級日本代表の櫻井つぐみ選手とは、櫻井選手の父親が開いたレスリングクラブで出会い、ずっと幼なじみとして切磋琢磨し続けた仲。パリでは先に櫻井選手が女子57キロ級で金メダルを獲得し、清岡選手はその翌日に男子フリースタイル65キロ級の決勝戦に進出します。一昨年の世界選手権王者との決勝は相手に1ポイントの先制を許しますが、清岡選手は慌てることなく、タックルから背後を取って2ポイントを返して逆転します。そのまま寝技に持ち込むと、すかさず相手の足の間に頭を入れて、得意のリンクルの体勢へ。次々と相手を回転させて連続ポイントを奪い、前半で一気に10対1とリードを広げて金メダルをつかみ取りました。
【レスリング 元木咲良選手】
シドニーオリンピックのレスリング代表だった、父・元木康年さんに続き、今年のパリ大会で「親子2代のオリンピック出場」を果たしたレスリング・女子62キロ級の元木選手。父親の影響で3歳からレスリングを始めた元木選手ですが、不器用で運動神経もそんなによくないと悩み、何度も挫折。元木選手の2学年下で、パリオリンピック・女子53キロ級で金メダルを獲得した藤波朱理選手には全国大会で何度も敗れ、時には藤波選手から1ポイントも奪えずに完敗する屈辱を味わいました。大学2年生の夏には右ヒザのじん帯を断裂。練習すらできない時期を過ごし、自信を喪失することが何度もあったと言います。ただ、そのマイナス思考も「自分の持ち味の1つ」と考えるようになったことでだんだん活路が開けていきました。
実はオリンピックまでの1年間、国際大会で1度も勝っていなかった元木選手。そこでもう一度見つめ直したのが“攻める姿勢”でした。特に磨きをかけたのが、相手の足首を狙う片足タックルの「ローシングル」です。不器用な自分でも勝てる姿を見せたいと決意し、パリ本番を迎えた元木選手。シドニー大会で父が叶えられなかったメダル獲得に向けて順調に勝ち上がります。迎えた決勝戦、相手は東京大会銅メダルの実力者でしたが、元木選手は持ち味の低いタックル「ローシングル」を徹底。攻め続けた結果、12対1の圧勝で金メダルに輝きます。今回のレスリング女子日本代表でただ1人世界選手権の優勝経験がなかった元木選手でしたが、オリンピックという大舞台で初めて世界の頂点に立ちました。
【ブレイキン 湯浅亜実(AMI)選手】
今年開催されたパリオリンピックで、新たに採用されたブレイキン。DJがかける音楽に合わせて2人の選手が交互に即興でダンスを披露し、技術や表現力・独創性などを競います。この新競技に女子日本代表として出場したのが、ダンサー名「AMI」こと、湯浅選手です。10歳の頃にブレイキンと出会い、初めて習得した技は、背中や肩を使って回転する「ウィンドミル」。次々と新しい技に挑戦していく過程と、技ができたときの達成感に魅了されてブレイキンに夢中になっていきます。2018年、バトルの経験を重ねて実力を伸ばしていったAMI選手は、世界最高峰の国際大会で初優勝。19年の世界選手権でチャンピオンに輝き、またたく間にトップダンサーに上りつめました。
AMI選手は、「パワームーブ」と呼ばれるダイナミックな回転技から立って踊る「トップロック」まで、様々な技をスムーズに組み合わせながら、全部を1つの流れとして見せるのが持ち味。ブレイキンがオリンピック競技になった時は、勝利を求められることに抵抗を感じて一時は選考レースを辞退しようと考えたこともありました。でも「勝つためじゃない。楽しいから踊るんだ」と初心を思い出し、「自分らしいダンスを見せること」に徹したAMI選手。パリオリンピック本番でも持ち味の多彩な技を駆使して、決勝へと駒を進めます。相手は、昨年の世界選手権を制したリトアニアのドミニカ・バネビチ選手・17歳。AMI選手は、相手のパワームーブに対し、ダンスの完成度で勝負します。常に絶やさなかった笑顔と、最後まで多彩なバリエーションの技を高い完成度で繰り出し続けたAMI選手は、3ラウンドすべてを制して金メダルを獲得。見事、オリンピックの初代女王に輝きました。
来週のスポーツ伝説は……
10/7(月) クライミング安楽宙斗選手
10/8(火) 卓 球 女子団体
10/9(水) セーリング 岡田奎樹・吉岡美帆組
10/10(木) 飛び込み 玉井陸斗選手
10/11(金) 近代五種 佐藤大宗選手
お楽しみに!!
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2025年3月17日~21日の放送内容
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2025年3月10日~14日の放送内容
【プロ野球 田中将大投手】 昨年のオフ、東北楽天ゴールデンイーグルスを退団し、読売ジャイアンツへの入団を発表した田中投手。2006年に高校生ドラフト1位で東北楽天に入...
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2025年2月24日~28日の放送内容
【プロ野球 遠井吾郎選手】 今年で球団創立90周年を迎えた阪神タイガース。遠井選手は1950年代~70年代にかけて、阪神ひと筋で20年間プレーした名物選手です。ぽっち...