【馬術 大岩義明選手】
ヨーロッパでは長い歴史を持つ人気競技の1つ「馬術」。日本勢では“バロン西”の愛称で知られる西竹一選手が1932年のロサンゼルスオリンピックで金メダルを獲得したのが唯一でした。今年のパリオリンピックで西選手以来92年ぶりのメダルに挑んだのが、大岩義明選手・48歳、戸本一真選手・41歳、北島隆三選手・38歳、
田中利幸選手・39歳の4人です。平均年齢41.5歳の4人は、チーム名の愛称を“初老ジャパン”と名づけました。
日本はパリオリンピックの地域予選会でポイントがわずかに足らず、団体の出場の道は一旦絶たれましたが、中国の馬から規制薬物が検出されたために繰り上げで出場が決定します。大岩選手は大学卒業後、一旦馬術から離れますが、2000年のシドニー大会を観て馬術への思いが再燃。イギリスに渡って武者修行を重ね、08年の北京オリンピック代表の座をつかみます。その後、拠点をドイツに移してさらに腕を磨き、国際大会でも活躍。しかし東京オリンピックでは障害物を乗り越える際に落馬してしまいます。大岩選手にとってパリは、雪辱の舞台でもありました。
総合馬術は、馬場馬術・クロスカントリー・障害馬術の3種目を、個人と団体を兼ねて3日間にわたって行います。日本は2種目目のクロスカントリーを終えて3位につけていましたが、北島選手の馬が左の後ろ足を負傷したことが判明。リザーブの田中選手に代わったことで20点減点された日本は、暫定5位に後退して最後の障害馬術に臨むことになりました。最初に登場した田中選手は、わずかな減点に抑える演技を披露。続く戸本選手も、美しいジャンプで全ての障害物をミスなく飛び越え、最後は大岩選手が登場。わずかな減点にとどめた日本は3位に食い込み、馬術では92年ぶり、団体では初となるオリンピックメダルを獲得しました。
【ゴルフ 松山英樹選手】
2016年のリオデジャネイロオリンピックで正式競技として復活し、今回124年ぶりにパリの地で競技が行われたゴルフ。男子日本代表として前回の東京大会に続いて出場したのが、世界で活躍する松山選手です。21年にゴルフの4大大会「マスターズ」を日本人で初めて制した松山選手が、どうしても欲しいと願っていたのがオリンピックのメダルでした。普段のプロゴルフトーナメントでは個人で出場して優勝を目指しますが、オリンピックは国の代表として出場。しかも1位だけでなく、2位と3位の選手にもメダルという栄誉が与えられます。ゴルフファンだけでなく、もっと幅広い層にゴルフに目を向けてもらいたいと考えている松山選手にとって、オリンピックは絶好の機会。しかし前回の東京オリンピックでは、銅メダルを懸けて7人で戦ったプレーオフで敗れてしまいました。その雪辱を果たすべく、松山選手は自身2度目のオリンピックに臨みました。
4日間のトータルスコアで順位を決めるオリンピックのゴルフ。3日目を終えた時点で松山選手のスコアは、首位に3打差の11アンダーでした。いよいよメダルが決まる最終日。最終組の1つ手前で回ることになった松山選手は、前半から猛然と追い上げを始めます。2番でバーディパットを沈めると、4番から3ホール連続でバーディを決め、この時点で首位グループと1打差に迫りました。しかし、世界の強豪が集まるオリンピック。世界ランキング1位のアメリカ、スコッティ・シェフラー選手が14番から圧巻の4連続バーディを決めて逆転。通算19アンダーでトップに立って、先にホールアウトします。一方、12番でバーディを奪ってからはパーが続き、スコアを伸ばせなかった松山選手。首位に2打差で迎えた最終18番で残り3.5mのバーディチャンスをつかみますが、惜しくも外して1ホールアウト。通算17アンダーの3位で、松山選手は日本の男子ゴルファーでは初となるオリンピックメダリストになりました。
【バドミントン 渡辺勇大・東野有紗選手】
東京都出身の渡辺選手と、学年は1つ上で北海道出身の東野選手がペアを組んだ、バドミントン混合ダブルスの通称“ワタガシ”ペア。二人は共に越境入学した福島県の中学校で出会い、以降13年にわたって活躍を続けてきました。初めてペアを組んだ時から、不思議と息が合っていたという2人の快進撃の始まりは2018年。100年以上の歴史を誇る全英オープンで日本勢として初めて優勝を果たすと、以後は国際大会で表彰台の常連に。21年の東京オリンピックでは、混合ダブルスで日本勢初の銅メダルを獲得します。当時は結成10年目。世界的に見ても異例の長さを誇るペアとして阿吽の呼吸を見せていた2人は、次のパリオリンピックが集大成という共通認識を持ち、金メダル獲得を目指して、この3年間を過ごしてきました。
今年1月には、オリンピックイヤー最初の国際大会で優勝を飾るなど、好調を維持してパリ大会に望んだワタガシペア。しかし準決勝で世界ランキング1位の中国ペアに敗れ、悲願の金メダルはなりませんでした。迎えた混合ダブルスの3位決定戦。ワタガシペアが対戦したのは、昨年の世界選手権で優勝した韓国ペアでした。第1ゲームは中盤までは一進一退の攻防となりましたが、ワタガシペアはそこから、緩急をつけた多彩なショットと強烈なスマッシュを織り交ぜて得点を重ね、一気にこのゲームを奪います。第2ゲームはデュースまでもつれる接戦となりましたが、ワタガシペアが振り切り、ゲームカウント2対0のストレート勝ちで銅メダル。日本のバドミントンでは史上初となる2大会連続メダルを獲得したのです。そんな2人は日本に帰国後、13年に及んだペアの解消を発表。これからはそれぞれ別の道を歩むことになります。
【フェンシング女子サーブル団体】
パリオリンピックの日本選手団で旗手を務めて話題となった、フェンシング・女子サーブルの江村選手。初出場だった東京オリンピックでは思うような結果が出せなかったものの、大会後、フランス人コーチとの出会いをきっかけに一気に飛躍。2022年・23年の世界選手権を連覇し、日本の女子フェンシングの大エースと呼ばれるようになります。明るい金髪がトレードマークの金メダル候補として大きな注目を浴び、開会式では強い雨が降る悪天候の中でも笑顔を絶やさず、日の丸を掲げる姿も好感を呼びました。ところが注目度がプレッシャーになったのか、個人戦当日は朝から信じられないほど体が重かったという江村選手。まさかの3回戦敗退で、メダルを逃してしまいます。雪辱を期す舞台となった団体戦。初戦の相手は世界ランク2位のハンガリーでした。4ポイントリードされた中盤の第5試合で福島史帆実選手が9ポイントを連取して逆転。最後は巻き返しを図るハンガリーを江村選手が封じて、日本は45対37で勝利し、準決勝へと駒を進めたのです。
準決勝でウクライナに敗れ、決勝進出は叶わなかった女子サーブル日本代表は、銅メダルをかけ、世界ランク1位のフランスと対戦します。相手側への大声援が響き渡る中、勢いを生んだのはリザーブの尾崎世梨選手でした。相手にリードを許す嫌な展開で第3試合に出番が回ってきた尾崎選手は、一気に8ポイントを奪って逆転。その後は一進一退を繰り返すも、3ポイントのリードで、アンカーの江村選手へつなぎます。相手は今大会、個人戦の銀メダリスト。強敵相手に江村選手はいつもの綺麗で丁寧なフェンシングではなく、前に出る積極的なフェンシングを選択します。巧みなフットワークから強烈な突きを見せるなどポイントを重ね、45対40で勝利を決めて、みごと銅メダルを獲得。日本がサーブルでメダルを獲得するのは、オリンピックでは初の快挙でした。
【サッカー 谷川萌々子選手・北川ひかる選手】
パリオリンピックでは、2012年ロンドン大会以来となるメダル獲得を目指したサッカー女子日本代表「なでしこジャパン」。予選リーグ初戦は、昨年の女子ワールドカップを制した強豪・スペインに1対2で惜しくも敗れ、黒星発進となります。決勝トーナメント進出のために、是が非でも負けられないブラジルとの第2戦は、0対1で試合終了が目前に迫ります。この絶体絶命の場面でチームを救ったのが、女子サッカーのレジェンド澤穂希さんを憧れの存在と公言する、19歳の谷川萌々子選手でした。まずは後半44分、ペナルティエリア内で切り返した際に相手のハンドを誘い、PKのチャンスを獲得。これをキャプテンの熊谷紗希選手が冷静に決め、同点に追いつきます。そしてアディショナルタイムの51分。相手のミスパスに反応した谷川選手が、敵陣中盤からおよそ30mのロングシュート。これが見事にゴールキーパーの頭上を超えて、ゴール左に吸い込まれたのです。
なでしこのスーパーゴールはこれで終わりません。1勝1敗で迎えた予選リーグ第3戦、引き分け以上で決勝トーナメント進出が決まるナイジェリアとの一戦は、日本が前半から2点を先制。しかしすぐにナイジェリアに1点を返されて、嫌なムードが漂います。これを一掃したのが、オリンピック直前の強化試合でヒザを負傷し、この試合が復帰戦となった北川選手です。前半終了間際にフリーキックのチャンスをつかむと、北川選手が左足で蹴ったボールは相手選手の壁を超え、落ちながらゴール右上に突き刺さります。相手に行きかけていた流れを見事に止めた北川選手のフリーキックで、日本は3対1で勝利。決勝トーナメント進出を果たしました。その後日本は金メダルを獲得したアメリカと準々決勝で激突し、延長戦の末に0対1で敗れましたが、その奮闘ぶりは谷川選手・北川選手のスーパーゴールと共にファンの脳裏に刻まれました。
来週のスポーツ伝説もお楽しみに!!
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