【プロ野球 阿南準郎監督】
今年、就任1年目で快進撃を見せた福岡ソフトバンクホークス・小久保裕紀監督と同様に、監督1年目の1986年、快進撃で広島カープを優勝へと導いた阿南監督。前任の監督はリーグ優勝4度、日本一3度の名将・古葉竹識さんという重圧の中での監督就任でした。「古葉野球の継承」を掲げた阿南監督がそれまでと同様に打線の軸としたのは、山本浩二選手と衣笠祥雄選手のカープが誇る2枚看板です。86年シーズン開幕の時点では、共に39歳の大ベテランであり、山本選手はこの年が現役最後のシーズン。年齢との戦いもあって思うような成績を残せない時期もありましたが、それでも阿南監督は絶大な信頼を寄せ、2人を起用し続けます。その信頼に応えるように、山本選手はホームラン・打点ともにチームトップの活躍を見せました。一方、衣笠選手は前人未到の2000試合連続出場という大記録を達成し、助っ人外国人選手がいない国産打線を2人が見事に牽引したのです。
阿南監督が独自の色を打ち出したのは、投手陣の再編成です。前年の85年、チーム防御率が4点台だった投手陣を立て直すため、ルーキーの長冨浩志投手など若手も積極的に起用。結果的にこの年は、長富投手も含めて、2ケタ勝利を挙げたピッチャーが4人も誕生してチーム防御率は2点台に向上します。9月23日、巨人との首位攻防戦に先発した長冨投手が、見事な完投勝利を挙げて優勝へのマジックが灯ると、10月には怒涛の8連勝を達成。そのうち5勝が完投勝ち、うち4度が完封と、先発陣が期待に応えてくれました。仮に先発投手が完投できなくとも、リリーフでは、阿南監督がこの年から抑えに抜擢した津田恒実投手が活躍し、22セーブを挙げてのちに“炎のストッパー”と呼ばれる絶対的守護神へと飛躍。阿南監督は、就任1年目でリーグ優勝を実現させたのです。
【プロ野球 落合博満監督】
「名選手、必ずしも名監督ならず」という言葉もあるように、選手時代に輝かしい活躍をした選手が、監督としても成功するとは限らないのがプロ野球です。そんな懸念をみごとに吹き飛ばしたのが、現役時代に3度の三冠王に輝いた中日ドラゴンズ・落合監督です。2003年オフに指揮官に就任した落合監督ですが、就任前は野球評論家であり、正式なコーチに就任した経験もありませんでした。就任会見では、「今の戦力を10%底上げすれば優勝は十分可能」と宣言。補強をしなくても、今いる選手たちを鍛え上げれば十分優勝できる見立てでした。
初陣となった04年の開幕戦では、ヤクルトからFA移籍後、故障のため3シーズン1度も1軍で登板していなかった
川崎憲次郎投手を開幕投手に抜擢。川崎投手は2回途中に5失点でKOされましたが、そこから野手が奮起して5点差を逆転。勢いに乗った中日は、開幕3連勝を飾ります。その後も故障者を除いてほぼすべての選手にチャンスを与え、結果を出した選手はどんどん起用していった落合監督。目の色を変えた選手たちが活躍して、中日が首位を走るようになります。10%の底上げを達成した中日は、みごと5年ぶりのリーグ制覇を果たし、落合監督は就任1年目にして胴上げを経験したのです。日本シリーズでは西武ライオンズに3勝4敗で惜しくも敗れ、日本一こそ逃しましたが、3年後の07年、日本シリーズで北海道日本ハムファイターズを破り、中日を53年ぶりの日本一に導きました。
【プロ野球 栗山英樹監督】
2012年、監督就任1年目にリーグ優勝の偉業を成し遂げたのが、北海道日本ハムファイターズを率いた栗山監督です。栗山監督はコーチなどの指導者経験が一切なく、スポーツキャスターからの転身。就任当初は本当に指導者が務まるのかと懸念する声もあった中、栗山監督が参考にしたのは、数々のチームで監督を務めた名将・三原脩さんでした。先入観を持たずに、誰も使わないような戦術を駆使する“三原マジック”と呼ばれた采配を手本にしたのです。それを象徴する采配となったのが、12年の開幕戦。日本ハムは前年まで5年連続で開幕投手を務めた、ダルビッシュ有投手がメジャーに移籍してチームを抜けたばかり。ここで栗山監督が開幕投手に抜擢したのが、当時プロ2年目の斎藤佑樹投手でした。斎藤投手はその期待に応え、9回4安打1失点と素晴らしいピッチングを披露。開幕戦完投勝利を挙げます。また打線も、強打者の稲葉篤紀選手を2番打者として起用。これも2番打者を重視した三原監督の影響で、今年は打ち勝っていくというメッセージでもありました。
栗山監督にとって最大の課題はやはり、エース・ダルビッシュ投手の抜けた穴をどう埋めるかです。そこで白羽の矢を立てたのが、06年の高校生ドラフト1位で入団したものの伸び悩んでいた、サウスポーの吉川光夫投手でした。過去3シーズン、白星から遠ざかっていた吉川投手の課題は制球難。悩める吉川投手に対し、栗山監督は「フォアボールをいくら出したっていい。その代わり、お前が投げたいボールを投げてくれ。それならオレも納得する」と檄を飛ばします。この言葉をきっかけに、フォアボールを恐れずに投げられるようになった吉川投手。開幕ローテ-ション入りを果たし、登板2試合目に1438日ぶりとなる勝ち星を挙げます。そしてこの年、14勝5敗、防御率1.71の成績をおさめ、最優秀防御率のタイトルを獲得。3年ぶりのリーグ制覇に貢献して、リーグMVPにも選ばれました。
【プロ野球 工藤公康監督】
監督の戦術・戦略も大きな鍵を握るプロ野球。だからこそ、就任1年目かいきなり優勝することは並大抵のことではありません。その難題に挑んだ1人が、2015年の福岡ソフトバンクホークス・工藤監督です。前年度のソフトバンクは秋山幸二監督のもと、日本一を達成。その最強チームのバトンを受け取った工藤新監督は、新人監督でありながら勝って当たり前というプレッシャーとも向き合うことになります。指導者経験はありませんでしたが、現役引退後に筑波大学大学院でスポーツ医学を専攻し、選手の体調維持のために何が必要か、学びを深めていた工藤監督。その工藤イズムは、キャンプから早くも実践されます。投げ込みをしたい投手陣に対して、アピールしたい気持ちに理解を示しつつ、コンディション優先とアドバイス。シーズンが始まると、リリーフ投手の連投をなるべく避けて定期的に休ませることで、投手陣全体の好調を維持するように気を配りました。その結果、チーム防御率は前年のリーグ2位からトップへと改善し、強固な投手陣を作り上げることに成功したのです。
15年のソフトバンクの強さは、打撃陣の活躍を抜きには語れません。3番・柳田悠岐選手、4番・内川聖一選手、5番・李大浩選手、6番・松田宣浩選手の4人はほぼ固定され、それ以外は調子のいい選手を積極的に起用することで、切れ目のない打線を作り上げていきました。中でも柳田選手は、打率3割6分3厘、ホームラン34本、32盗塁を記録して、球団では初となる3割・30本・30盗塁の「トリプルスリー」を達成。チームをリーグ優勝へ導き、シーズンMVPにも輝きました。リーグ優勝が決まった9月17日は、当時のパ・リーグ最速の優勝記録であり、工藤監督は新人監督最多タイの90勝を記録。勢いそのままにポストシーズンも勝ち上がり「2人の監督による日本シリーズ連覇」を成し遂げたのです。
【プロ野球 真中満監督】
2013年・14年と2年続けてセ・リーグ最下位に沈んだ東京ヤクルトスワローズ。辞任した小川淳司監督の後を受けて指揮官に昇格したのが真中監督です。08年に現役を引退し、その後はスワローズの2軍打撃コーチと2軍監督、1軍打撃コーチを経て、14年オフに1軍監督に就任。就任会見で優勝を目指すと宣言したのは、選手を指導してきた立場から、優勝する力は十分あると実感していたからです。真中監督の指導方針は、コーチ時代から一貫して「選手の自主性を大事にする」こと。選手が自ら考えてプレーしたなら、たとえ結果が出なくても選手を責めなかった真中監督。その結果、選手はのびのびとプレー。監督として船出をした15年の5月には9連敗を経験しましたが、その後巻き返し、気が付けば夏場以降は優勝争いを演じていたのです。
9月28日、中日に勝ってマジックを1とし、優勝に王手を掛けたヤクルト。しかし翌日の広島戦で逆転負けを喫し、迎えた10月2日の阪神戦はホーム・神宮球場で行われるレギュラーシーズン最後の試合でした。神宮で胴上げをするためには、これがラストチャンス。プレッシャーがかかる中、ゲームは同点のまま延長戦に突入します。延長11回、一打サヨナラのチャンスで打席に立ったのは、10年に投手から野手に転向した雄平選手。選手時代の自分と似たタイプと、真中監督がコーチ時代から熱心に指導した選手です。その雄平選手が見事タイムリーを放ち、劇的なサヨナラ勝ちで14年ぶりスワローズのリーグ優勝が決定。最後まで選手を信じた指揮官は、神宮で宙に舞いました。
来週のスポーツ伝説は……
9/23(月) 馬 術 大岩義明選手
9/24(火) ゴ ル フ 松山英樹選手
9/25(水) バドミントン渡辺勇大・東野有紗選手
9/26(木) フェンシング女子サーブル団体
9/27(金) サッカー 谷川萌々子選手・北川ひかる選手
お楽しみに!!
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2025年3月17日~21日の放送内容
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2025年3月10日~14日の放送内容
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2025年2月24日~28日の放送内容
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