【スケートボード 吉沢恋選手】
2021年の東京オリンピックから正式競技に採用されたスケートボードで、特に10代の若い選手の活躍が目立つ女子ストリート。パリオリンピックの代表枠をつかんだ1人が、世界ランキング1位の吉沢恋選手(14)です。東京オリンピックの女子ストリートで初代金メダリストに輝いた西矢椛選手が決めた技 ビッグスピンボードスライドをテレビで観た吉沢選手は「これ、私もできる」と思ったとか。ならば自分にもチャンスがあるのではと考えた瞬間、オリンピックの舞台が急に身近な目標へと変わりました。吉沢選手を7歳の時から指導し、育てた寺井裕次郎さんはプロのスケーターで、吉沢選手の地元・神奈川県で小さなスケートショップを営みつつお店の近くにスケートボード場を作ってスクールを開講しています。小学生の時からトランポリン教室に通っていた吉沢選手は、空中感覚と体幹の強さが抜群。世界を狙える才能だと感じた寺井さんは、指導方針を「あえて大会に出場させない」ことに決めました。大会に出れば勝ってしまうので、慢心させないよう練習に専念させたのです。
吉沢選手は本格的に大会出場を始めると、あっと言う間に国際大会でも活躍。世界ランキング1位に上りつめて迎えたパリオリンピック本番では、予選を1位で通過。決勝でも自然体でした。ランを終えて2位。5本のベストトリックでは2本目に86.34、4本目に96.49の高得点をマークしてトップに立ち、5本目のトリックでも89.46を叩き出すと、両手をパリの空に突き上げて金メダルの喜びを表現しました。
【スケートボード 堀米雄斗選手】
2021年の東京オリンピック・スケートボード男子ストリートで、初代王者に輝いた堀米選手。22年から始まったパリオリンピックの代表選考レースでは、年下選手の台頭とルール改正で苦境に立たされました。表彰台は遠のき、5月に中国の上海で行われたパリオリンピック予選シリーズ第1戦では予選落ちの屈辱も味わいました。日本の出場枠は最大3つ。この時点で5番手に転落してしまい、一時はパリ行きを諦めかけていたといいます。しかし崖っ縁に追い込まれて、逆にスイッチが入った堀米選手。ハンガリーで行われた予選シリーズの第2戦決勝は、大会途中で左ヒザを強打しながらも、痛み止めを飲んで強行出場。苦手意識のある45秒間のランを2位で折り返し、迎えたベストトリックの3本目。270度横回転させながらレールに乗る得意の技を繰り出すと、さらにアレンジを加え、板の後端で滑り下りる技を完璧に決めて2大会連続のオリンピック出場を決めました。
迎えたパリオリンピック決勝。堀米選手はラン終了時点で、89.90の高得点をマークして4位。金メダルを狙える位置に付けます。勝負を決めるベストトリックは5回の演技で、上位2本のスコアが得点となる競技です。その1本目に堀米選手はいきなり大技を決め、94.16という高得点をマーク。しかしその後はライバルたちが大技を決める中、堀米選手は3回連続で失敗し、残り1本という状況に追い込まれます。この時点で暫定7位の堀米選手が金メダルを獲るには、96.99以上の点数が必要。絶体絶命の状況で挑んだのは、驚異的な大技 ノーリーバックサイド270 バックサイドブラントスライドでした。後ろ向きの状態からジャンプするためレールが全く見えないことや、利き足と逆の足で飛び上がりながら270度回転するという難易度が飛び抜けて高い大技です。これで97.08という驚異的な得点をたたき出し、一気に首位に立った堀米選手は、みごとオリンピック連覇を達成。会場からも大きな“ユウトコール”が巻き起こりました。
【体操 男子団体&岡慎之助選手】
これまで何人ものエースが誕生してきた体操ニッポン。今年のパリオリンピックでも新たなエースが誕生しました。当初、日本チームのエースとして期待されていたのは、前回の東京オリンピックで2つの金メダルを獲得し、世界選手権2連覇を果たした絶対王者の橋本大輝選手でした。ところが、その橋本選手がオリンピック2ヵ月前に右手中指を故障。思うように練習が積めず、団体予選では鉄棒の着地で大きく乱れるなど精彩を欠き、団体決勝でもあん馬で落下のミス。他の選手にもミスが続き、トップの中国に大差をつけられてしまいます。そんな中、安定の演技を続けたのが若干20歳の岡選手でした。出場した4種目すべてで14点台の高得点を叩き出し、平行棒ではチームトップの得点を挙げ、一気に2位に浮上。この状況に奮起したのが本来のエース・橋本選手です。最後の鉄棒で次々と難度の高い手放し技を決めると、最後の着地も止めて高得点をマーク。一方、首位を走っていた中国は鉄棒で2度の落下が響き、日本が大逆転で金メダル獲得となったのです。前回の東京大会ではわずか0.103点差での銀メダルと悔しい思いをした分、喜びもひとしおの2大会ぶり団体金メダルでした。
小さい頃は、大事な場面でミスが目立つ選手だったという岡選手。それでも週6日、1日5時間以上の練習で基本を何度も繰り返したことで、15歳で世界ジュニア王者に。2年前には右膝の前十字靭帯断裂の大ケガを負いながらも、下半身が使えない期間に上半身を徹底的に鍛えることで、よりオールラウンダーな選手へと成長を遂げたのです。その安定感とオールラウンダーぶりを個人総合でも遺憾無く発揮します。注目選手でもミスが続く中、岡選手は6種目でノーミス。団体に続いての金メダル獲得となったのです。更には種目別の鉄棒でも金メダルを獲得し、3冠を達成。平行棒では銅メダルを獲得と、1大会で4つのメダルを手にした岡選手。日本選手の1大会3冠は52年ぶり、4個以上のメダルは40年ぶりという偉業の連続で、体操界の歴史にその名を刻みました。
【フェンシング 加納虹輝選手】
日本フェンシング界のエース・加納選手は2008年、北京オリンピックで銀メダルを獲得したフェンシング界の第一人者・太田雄貴さんに憧れ、小学6年生からずっとフェンシング一筋。趣味フェンシング、特技フェンシングというほど、練習に明け暮れました。高校1年生の途中までは太田さんと同じ、胴体だけを攻撃するフルーレの選手でしたが、全身を狙えるエペに転向したことをきっかけに才能が開花。21年の東京オリンピックでは、日本のエースとしてエペ団体で日本フェンシング界悲願の金メダル獲得に貢献して注目を集めます。ただ、個人戦では3回戦敗退。次は個人でも結果を出したいと、更なる肉体強化に励みます。その結果、23年には世界ランク1位も経験し、優勝候補としてパリオリンピックに臨みました。
迎えたパリ本番、15ポイント先取で勝利が決まるフェンシング男子エペ個人戦。加納選手の準決勝は延長戦にもつれこむ大熱戦となりましたが、鍛え上げた体幹の強さで最後まで攻め続け、見事に勝利。決勝戦へと駒を進めます。決勝の相手は、日本選手を2人倒して勝ち上がってきた地元・フランスの選手。地元ファンの大声援に囲まれる完全アウェーの中でしたが、気後れすることなく試合に臨みます。身長では20㎝以上高く、リーチ差もある相手に、加納選手は持ち前のスピードで試合序盤から積極的に仕掛けていきます。第2ピリオドで連続ポイントを重ねて一気に差を広げると、最後は場内の地元ファンも静まりかえる完勝劇。憧れの太田雄貴さんを超える、日本フェンシング界初の個人戦金メダルを成し遂げたのです。その後に行われたエペ団体では、日本のエースとして2大会連続で決勝に進出。惜しくも銀メダルに終わりましたが、これを機にフェンシングをメジャーにすべく、競技普及にも意欲を見せています。
【フェンシング 男子フルーレ団体】
パリオリンピックのフェンシング競技で、悲願のメダルを目指して快進撃を演じたのが日本の男子フルーレ団体です。前回の東京大会はメダルにあと一歩届きませんでしたが、そこから奮起して昨年の世界選手権では優勝。世界ランク1位に上り詰め、メダル候補としてパリに乗り込んでいました。1チーム3人、9試合の合計ポイントを競い、先に45点をあげれば勝利となる団体戦。日本のメンバーは、キャプテンの松山恭助選手、飯村一輝選手、敷根崇裕選手という昨年の世界選手権優勝メンバーにリザーブの永野雄大選手を加えた4人。それぞれ個人戦ではメダルには届かない結果となり、団体戦が始まるまでの6日間は、気持ちのアップダウンが激しかったと言います。その難しい状況でチームをまとめたのは、19歳から8年にわたってキャプテンを務める松山選手です。準決勝では東京大会の金メダルチーム、フランスと対戦。地元・フランスに対する大声援の中、第5試合が終了した時点では23対23と互角の展開でしたが、第6試合で松山選手が粘ってリードを奪うと、そこから飯村選手・敷根選手もそれぞれリードを広げ、45対37で勝利。完全アウェーの状況をはねのけ、銀メダル以上を確定させたのです。
決勝の相手は、世界ランク2位のイタリア。日本チームはメンバー構成で勝負に出ます。ここまで出番のなかったリザーブの永野選手を初起用。そしてアンカーには、チーム最年少20歳の飯村選手を抜擢したのです。永野選手の出番は、35対34と1点リードで迎えた終盤8試合目。緊迫の場面前に、やるしかないと開き直った永野選手が無我夢中でプレーすると、なんと怒涛の5連続ポイント奪取。相手に1ポイントも与えずにアンカーの飯村選手へと繋いだのです。最後を託された飯村選手は、最年少とは思えない落ち着いた試合運びを見せ、日本が45対36で勝利。男子フルーレ団体では初の金メダル獲得となりました。
来週のスポーツ伝説はもお楽しみに!!
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