スポーツ伝説

2024.09.06

2024年9月2日~6日の放送内容

【柔道 阿部一二三選手】
 日本発祥の武道としてオリンピックでは常に金メダルが期待される柔道。オリンピック連覇を達成した日本の選手はわずか7人しかいませんでした。それだけ難しい偉業を目指しパリ大会に出場したのが、男子66キロ級の阿部選手です。パリでは、女子52キロ級で同じくオリンピック連覇が懸かる、妹の阿部詩選手との「兄妹同時連覇」の期待もかかっていましたが、詩選手が2回戦でまさかの一本負け。そんな中、自身の初戦に臨みます。すると試合開始わずか25秒、背負い投げで技あり。その直後にも袖釣り込み腰で技ありを奪い、合わせ技一本で勝利。オリンピック連覇へ向けて好発進しました。
 一二三選手にとって、パリでもっとも難しい試合となったのは準々決勝です。試合中に鼻から出血し、治療のために2度も試合を中断。もし3度目の中断となれば一二三選手の棄権となる可能性もありましたが、袖釣り込み腰と大内刈りの合わせ技で一本勝ち。続く準決勝では、世界ランク1位の難敵相手に延長戦までもつれましたが、延長開始直後に払い腰で技ありを奪って勝利。決勝進出を決めました。連覇がかかる決勝戦。ここで一二三選手が信条とする「圧倒的な柔道」が炸裂。開始1分50秒ほどで技ありを奪うと、その45秒後には袖釣り込み腰で再び技ありを奪い、合わせ技一本で悲願の連覇を果たしたのです。一二三選手はこの大会4試合で相手に技のポイントを1つも奪われず、まさに圧倒的な柔道で日本柔道8人目のオリンピック連覇を成し遂げました。

 
【柔道 永瀬貴規選手】
 柔道競技の中でも、最激戦区と言われる男子81キロ級。軽量級のようなスピーディな柔道にも、重量級のようなパワフルな柔道にも対応しなくてはならず、オリンピックでは過去に連覇した選手がいない階級です。永瀬選手はパリオリンピックで、この男子81キロ級史上初となる連覇に挑みました。とにかく練習熱心で知られる永瀬選手。周囲の選手から彼が隣だと休めないと愚痴をこぼされたり、監督から頼むから休んでくれと言われたエピソードがあるほどの練習の虫です。永瀬選手と同じ旭化成の先輩で、男子73キロ級でオリンピックの連覇を達成した大野将平さんは、8年前から「永瀬選手最強説」を唱えています。そんな永瀬選手は、前回の東京大会で金メダルを獲得。この階級は海外勢が強く、日本選手の金メダルは21年ぶりの快挙でした。
 ただ、やはり激戦区の81キロ級。東京オリンピック後の永瀬選手は、世界選手権2大会連続で3位。その他の国際大会でも中々勝てない日々が続きました。一時は階級替えも考えましたが、この階級で連覇したいという思いが勝り、階級をキープ。オリンピック本番直前のグラドスラム大会では、東京オリンピック以来となる国際大会優勝を果たし、パリに乗り込みました。迎えたオリンピック本番。永瀬選手は初戦の2回戦を開始2分足らずで突破。3回戦と準々決勝は延長戦を制し、準決勝は合わせ技一本で勝利を収めて、決勝戦へと駒を進めます。相手は世界選手権3連覇中、ジョージアのタト・グリガラシビリ選手。強敵相手でも永瀬選手はひるまず、序盤から積極的に攻めの柔道を展開して残り2分に技ありを奪うと、その後も厳しい組み手で攻め続けます。最後は谷落としで一本。オリンピックで初めて、81キロ級の連覇を成し遂げました。

 
【柔道 角田夏実選手】
 柔道女子48キロ級といえば、かつては“ヤワラちゃん”の愛称で呼ばれた谷亮子選手がオリンピック5大会連続メダルを獲得した階級。その谷選手以来20年ぶりの金メダルに輝いたのが、角田選手です。もともとは1つ上の52キロ級の選手でしたが、世界チャンピオンの阿部詩選手などライバルが多く、一発逆転をかけて48キロ級への転向を決断。減量や対戦相手への適応が間に合わずに東京オリンピックの代表入りは叶いませんでしたが、世界選手権で3連覇を果たすなど実績を積み重ねて今回のパリオリンピックにたどり着きました。角田選手の得意技は、世界の強豪たちが分かっていてもかかってしまうと言う巴投げと、その流れで繰り出す関節技です。パリでも、この2つの武器が見事に決まります。初戦となった2回戦は、開始29秒で巴投げの技ありから、そのまま腕ひしぎ十字固めの連続攻撃であっという間に一本勝ち。続く3回戦も同じ流れで勝利し、準々決勝へと駒を進めます。
 角田選手が最大のライバルと警戒していたのは、開催地フランス代表の
シリヌ・ブクリ選手との準々決勝です。完全アウェーの中での試合となりましたが、冷静に畳に向かった角田選手。開始1分で伝家の宝刀・巴投げが決まり、1本勝ちで会場を静まり返らせます。続く準決勝も危なげなく勝利。決勝戦も最後は巴投げで技ありを収め、今大会日本勢第1号となる、金メダル獲得となったのです。31歳11カ月での金メダルは、日本柔道女子で歴代最年長記録であり、日本勢夏のオリンピック通算500個目という、大きな節目のメダルでもありました。

 

【大相撲 隆の勝伸明関】
 今年7月に行われた大相撲名古屋場所は、横綱・照の富士関が初日から10連勝と本来の強さを見せ、優勝争いのトップを独走していました。そのまますんなり3場所ぶりの優勝を決めるかと思いきや、待ったを掛けたのが、東前頭6枚目の隆の勝関です。隆の勝関はこの名古屋場所が、幕内在位30場所目の29歳。小結と関脇の三役を計6場所経験している実力者です。しかしここ数年はケガに悩まされ、実力を発揮できずにいました。そんな隆の勝関にとって、転機となる出来事がありました。名古屋場所前の7月2日、一般女性と結婚していたことを発表。決意を新たに場所に臨みます。初日・2日目と連敗するも、「1日1番、悔いなく」を心掛けて3日目から白星を重ね、13日目を終えて10勝3敗。気づけば、12勝1敗でトップを走る照の富士関を星2つの差で追う展開になっていました。
 14日目は、二人の直接対決が組まれることに。敗れると横綱の優勝が決まる状況で、「横綱に胸を借りる気持ちで、全力で行こうと思っていました」という隆の勝関。立ち合いから休まず前に出て、強烈な右ノド輪押しと
左からのおっつけで、横綱を一直線に押し出しました。この金星で逆転優勝に望みをつないだ隆の勝関は、千秋楽も夏場所優勝の大の里関を破り、横綱の結果待ちに。照の富士関は大関・琴櫻関に敗れたため、両者は12勝3敗で並び、優勝決定戦にもつれ込んだのです。14日目と同じように気合十分で立ち合いから勢いよく攻めていった隆の勝関は、一度は土俵際まで横綱を追い詰めましたが、最後は横綱に寄り切られて惜敗。初優勝はなりませんでしたが、価値ある敢闘賞を受賞しました。

 

【大相撲 白熊優太関】
 優しい笑顔で、誰からも愛されるお相撲さんになってほしいという思いと、土俵の上では暴れてほしいという2つの意味を込めたユニークなシコ名で人気を集めている白熊関。元横綱・稀勢の里の二所ノ関親方が率いる二所ノ関部屋へ2022年に入門。この時に一緒に入門したのが、7月の名古屋場所でともに十両だった嘉陽関です。嘉陽関とは中学から大学まで10年間同じ学校で、共に切磋琢磨して腕を磨いてきました。親友でもありライバルでもある2人。大学時代、1年生から団体戦のレギュラーだった白熊関に対して、嘉陽関は4年生になってからレギュラーに。しかし大相撲入りする時は、嘉陽関は三段目付け出しでデビュー。白熊関は前相撲からのスタートになりました。それを発奮材料にして勝ち越しを続け、白熊関は所要8場所で十両に昇進。関取になったのは白熊関の方が先でした。その嘉陽関は今年6月、二所ノ関部屋から独立した中村部屋に転籍し、2人は初めて別々の環境で相撲を取ることになったのです。
 二所ノ関部屋にはもう1人、白熊関に刺激を与えてくれる力士がいます。高校・大学の後輩でもある、関脇・大の里関です。遅れて二所ノ関部屋に入門してきた大の里関ですが、幕下10枚目格付け出しでデビューして所要2場所で十両に昇進。関取になったのは白熊関と同時でした。その後、大の里関はひと足早く新入幕を果たし、今年5月の夏場所で幕内初優勝。そんな後輩の活躍を見て奮起した白熊関も、名古屋場所では12勝3敗で十両優勝を決め、幕内昇進を確実にしました。

 

来週のスポーツ伝説は……

9/9(月) スケートボード吉沢恋選手
9/10(火) スケートボード堀米雄斗選手  
9/11(水)  体   操  男子団体&岡慎之助選手
9/12(木) フェンシング  加納虹輝選手
9/13(金) フェンシング 男子フルーレ団体

お楽しみに!!

最新番組ブログ
    パーソナリティ
    • 滝本沙奈
      滝本沙奈
      滝本沙奈

      滝本沙奈

      生年月日:1984年6月6日
      出身地:東京
      学歴:青山学院大学文学部英米文学科卒
      趣味:マリンスポーツ(ダイビング、サーフィン、釣り)
      資格:PADIオープンウォーターダイバー、おさかなマイスターアドバイザー

    • 過去の番組ホームページはこちら