【パラ水泳 木村敬一選手】
今回のパリ・パラリンピックで、大会5度目の出場となるパラ水泳の第一人者・木村選手。2012年のロンドンと16年のリオ大会で銀メダルと銅メダルを獲得していましたが、金メダルは手に出来ていませんでした。東京パラリンピックでは金メダルだけを目標に掲げ、本命の100mバタフライで悲願の金メダルを獲得。有言実行の快挙達成は大きな話題になりましたが、自身は金メダルを手にしたことで目標を失ってしまいました。そこで1ヵ月半で100キロを走り込んで、ハーフマラソンに出場。さらに報道番組のコメンテーターやトーク番組への出演など、積極的に自分の世界を広げていく過程で新たな目標が生まれます。世界記録の更新と、そのために泳ぎの技術的な進歩を目指すことです。
この難しいチャレンジを実現するため、バタフライの専門家でオリンピックメダリストの星奈津美さんに専属コーチを依頼。オリンピックとパラリンピックのメダリストがタッグを組んで、全盲の木村選手が我流で作り上げた力任せのフォームから、より滑らかで無駄のないフォームへモデルチェンジを目指したのです。木村選手が星さんから指導を受けたのはバタフライですが、その成果は自由形でも発揮されました。昨年8月に出場したパラ水泳の世界選手権では、50m自由形の予選レースで23年間破られなかった日本記録を更新。決勝レースでは、そのタイムをさらに縮める日本新記録で銀メダルを獲得しました。また本命のバタフライは、昨年秋の日本選手権で自身が東京パラリンピックで金メダルを獲得した時よりも速いタイムを叩き出し、貫禄の優勝。まだまだフォーム改良は道半ばだといいますが、それでも着実に前に進んで、いよいよパリ本番を迎えます。
【パラ卓球 岩渕幸洋選手】
今回のパリ・パラリンピックで3大会連続の出場を果たす、パラ卓球男子の岩渕選手。両足が生まれつき内側に曲がる障がいがあり、特に左足は自分で足首を動かすことが難しいため、固定する装具をつけてプレーします。初出場のリオ大会では、1ゲームも奪えずに予選で敗退。雪辱を誓って臨んだのが、前回の東京大会でした。練馬区出身の岩渕選手にとって、地元での大舞台。さらに日本選手団の旗手も任され、大きな注目を浴びます。しかしそれが大きなプレッシャーになったのか、1勝2敗の成績で予選リーグ敗退という結果に終わります。悔しい結果となってしまいましたが、パラリンピックを通して「勝ち負け以上の価値を得られるのもスポーツの素晴らしさ」と学んだという岩渕選手。パラスポーツをもっと盛り上げるべく、自分の名を冠したパラ卓球大会「IWABUCHI OPEN」を創設し、パラ卓球の顔として活躍の幅を広げていきました。
岩渕選手には、もうひとつ世間に訴えたいことがあります。健常の卓球とパラ卓球に違いはない、というメッセージです。その思いをぶつける機会が、今年1月に訪れます。健常の選手たちにとっての国内最高峰の大会、全日本卓球選手権に、パラ卓球の選手も推薦枠という形で出場できることになったのです。岩渕選手は、過去連敗中だった舟山真弘選手との代表決定戦に勝利し、念願だった全日本選手権に初出場。高校生にストレート負けを喫しましたが、パラ卓球の選手として大きな足跡を残すとともに、更なるレベルアップを誓いました。
【車いすマラソン 土田和歌子選手】
いよいよ来週開幕するパリ・パラリンピックで車いすマラソン女子代表の座をつかみ、夏・冬合わせて通算9度目のパラリンピック出場を果たす土田選手。東京都清瀬市出身の49歳で、高校生の時に交通事故で脊髄を損傷。両足に障がいを抱えます。リハビリの一環としてパラスポーツに取り組むうちに、もっと速くなりたいという思いが募り、その先に生まれた目標がパラリンピック出場でした。土田選手が最初にメダルを獲得したのは、1998年の長野冬季パラリンピック。アイススレッジスピードレースで2つの金メダルを獲得したのち、陸上競技にも取り組み、2004年のアテネ大会の陸上5000mで金メダルを獲得。日本のパラ選手として史上初めて、夏・冬両方で金メダリストになるという快挙を達成します。また車いすマラソンでは、シドニーで銅、アテネで銀メダルを獲得。17年からはパラトライアスロンにも挑戦し、21年の東京大会で車いすマラソン4位、パラトライアスロン9位という鉄人ぶりを示しました。
今年10月に50歳の誕生日を迎える土田選手。パリ パラリンピックへの挑戦を決めた理由は、車いすマラソンで金メダルを獲るためです。優勝を期待された08年の北京大会では5000mのレースで負傷したため、マラソンを棄権。実はこの北京大会は、家庭を持って初めて出場したパラリンピックでした。それまでは自分のことだけを考えて競技に取り組んでいましたが、応援してくれる人たちのためにも競技を続けようと決意。9度目のパラリンピック出場となる今回のパリ大会は、車いすマラソンに絞って出場し、30年以上におよぶ競技人生の集大成とする予定です。
【ゴールボール 高橋利恵子選手】
いよいよ来週開幕するパリ パラリンピックで、頂点を目指すゴールボール女子日本代表“オリオンジャパン”。ゴールボールは視覚に障がいを持った選手がプレーする競技で、目隠しをした選手が、ボールの中に入っている鈴の音を頼りにその位置を探り、敵陣のゴールを目掛けてボールを投げ合います。ゴールボール女子日本代表は、2012年のロンドン大会で金メダルを獲得。21年の東京大会では銅メダルを獲得し、パリでは12年ぶりの頂点を目指します。そのオリオンジャパンで昨年からキャプテンを務めているのが、高橋選手です。ゴールボールを本格的に始めたのは、筑波大学に進学してから。周りが見えない中、ボールの音を使ってだまし合ったりする駆け引きや、ベンチも一体となって戦う競技の面白さに惹かれて、気づけば選手になっていたという高橋選手。18年の世界選手権で初めて日本代表入りすると、19年のアジア・パシフィック選手権ではフル出場して優勝に貢献し、21年の東京パラリンピックに出場しました。
1チーム3人で戦うゴールボール。髙橋選手のポジションは、中央を守るセンターです。守備の要であり司令塔となる重要な役割を果たし、東京パラリンピックではチームを銅メダルに導きましたが、喜び以上にもう一つ上の景色が見たいという気持ちのが大きかったと言います。昨年からキャプテンに就任。3年前の東京で味わった悔しさを晴らすべく、自分らしさを発揮して、パリでチームを表彰台の頂点に導きます。
【パラトライアスロン 秦由加子選手】
2016年のリオ大会から、パラリンピックの正式競技となったパラトライアスロン。障がいを持ったアスリートが、スイム750m、バイク20km、ラン5kmでタイムを競います。この競技に13年から取り組み、今回のパリで3大会連続の出場をするのが、現在43歳の秦選手です。10歳まで水泳を続けていましたが、13歳の時に骨肉腫を発症。右足を大腿部から切断し、以後はスポーツとは無縁の生活を送っていました。しかし07年、26歳の時に自分を変えたいと思い立ち、スポーツクラブで再び水泳を始めます。最初は周囲の目を気にしていた秦選手。そんな時、地元・千葉に障がい者向けのスイミングクラブができると知って入会し、ここでパラリンピック日本代表選手との出会いをきっかけに、本格的なトレーニングを開始します。10年には強化指定選手までに腕を上げ、パラ水泳で12年のロンドンパラリンピックを目指しましたが、残念ながら出場ならず。そんな時に出会ったのが、パラトライアスロンでした。
泳ぎは得意でも、トライアスロンのバイクとランはほとんど経験のなかった秦選手。バイクの練習ではロードレース用の自転車で風を切る楽しさを感じ、ランの練習では義足のランナーがいる陸上チームの練習会に参加して、競技用の義足で走る楽しさを知ります。そして3年後の16年、パラリンピックの正式種目となったパラトライアスロンの日本代表として、秦選手はリオパラリンピックに出場。21年の東京大会にも出場して、いずれも6位入賞を果たしました。その後、秦選手はパリでは完全な状態で走りたいと、思い切って右脚の大腿骨を削り、筋肉で骨の先端を覆う手術を受けます。リハビリで1年ほど競技から離れましたが、その成果は成績に表れ、5月に横浜で開催された国際大会「ワールド トライアスロンパラシリーズ」では3位に輝きました。競技をする楽しさを思い出し、実力も身につけた秦選手。初めてのパラリンピックでの表彰台は、既に視野に入っています。
来週のスポーツ伝説は……
8/26(月) プロ野球 筒香嘉智選手
8/27(火) プロ野球 立岡宗一郎選手
8/28(水) プロ野球 板山祐太郎選手
8/29(木) プロ野球 奥川恭伸投手
8/30(金) プロ野球 石川歩投手
お楽しみに!!
2025.03.27
2025年3月24日~27日の放送内容
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2025.03.21
2025年3月17日~21日の放送内容
【スピードスケート 高木美帆選手】 30歳になった現在も国際大会で圧倒的な強さを見せ、女子スピードスケート第一線で活躍を続けている高木選手。冬季オリンピックでは、20...
2025.03.14
2025年3月10日~14日の放送内容
【プロ野球 田中将大投手】 昨年のオフ、東北楽天ゴールデンイーグルスを退団し、読売ジャイアンツへの入団を発表した田中投手。2006年に高校生ドラフト1位で東北楽天に入...
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2025年3月3日~7日の放送内容
【メジャーリーグ 菊池雄星投手】 岩手県の花巻東高校時代から注目を浴びてきたサウスポー・菊池投手。2019年にアメリカ・メジャーリーグに活躍の場を移すと、5年目の23...
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2025年2月24日~28日の放送内容
【プロ野球 遠井吾郎選手】 今年で球団創立90周年を迎えた阪神タイガース。遠井選手は1950年代~70年代にかけて、阪神ひと筋で20年間プレーした名物選手です。ぽっち...