スポーツ伝説

2024.07.26

2024年7月22日~26日の放送内容

【プロ野球 落合博満監督】
 夢の球宴と呼ばれる、プロ野球オールスターゲームの季節が今年もやってきました。毎年、各チームの投打の顔がズラリと顔を揃えます。第1戦の先発投手は、シーズン中も先発で投げているピッチャーが起用されることがほとんどですが、そのセオリーを破って大胆な投手起用を見せファンを沸かせたのが、2007年のオールセントラルの指揮を執った中日ドラゴンズ・落合監督です。7月20日に東京ドームで行われた注目の第1戦。落合監督が先発投手に指名したのは、この年、チーム事情で抑えに回っていた巨人・上原浩治投手でした。上原投手は初回、先頭の千葉ロッテ・TSUYOSHIこと、西岡剛選手にヒットを打たれましたが、この回を無失点に抑えて1イニングだけで降板。2回からは、当時東京ヤクルトの守護神で、現監督の高津臣吾投手がマウンドへ。落合監督は抑えから抑えへの継投を見せたのです。高津投手は、オールパシフィック打線を3者凡退に抑えて降板。落合監督は3回以降も同様に、セ・リーグ各チームのリリーフ投手を1人1イニングずつ投げさせ、9回を9人で継投という采配を見せました。
 05年にもオールスターで指揮を執った落合監督。このとき選ばれた先発投手たちが、オールスター前に投げたばかりだからという理由で第1戦の登板を回避するケースが続出。それならとリリーフ投手だけで回すことを思いつきました。07年のオールスターゲーム第一戦の5回以降は、中日・岩瀬投手、広島・黒田投手、阪神・久保田投手、横浜・クルーン投手、阪神・藤川投手という豪華リレーが実現。しかも先発した上原投手以外の8人は三者凡退に抑えたため、オールセントラルは1安打完封で快勝したのです。11年のオールスターでも指揮を執った落合監督は、第1戦で再びリリーフ投手リレーを実行します。この時の先発投手は、中日・岩瀬投手。7回以降は、東京ヤクルト・林昌勇投手、中日・浅尾投手、阪神・藤川投手が登板。セ・リーグ投手陣は合計4失点しましたが、9対4で勝利。各チームで最も信頼される救援陣9人がつなぐ夢のリレーが、いちばん勝つ確率が高く、ファンも喜ぶという、落合監督らしい合理的な考えが生きた采配でした。

  
 
【サッカー 鮫島彩選手】
 サッカー女子代表なでしこジャパンで通算114試合に出場してきた鮫島選手が今年5月、現役引退を表明しました。2008年の初代表以降、攻撃参加が得意な左サイドバックとして活躍を続けた鮫島選手。中でもピッチの内外で大きな存在感を放ったのは、なでしこジャパンが初めて世界一に輝いた2011年7月の女子ワールドカップです。当時、東京電力女子サッカー部マリーゼに所属していた鮫島選手は、この年の3月に発生した東日本大震災によって練習場が使えなくなり、チームも活動停止になります。一緒に働いていた仲間やチームメイトの多くが行き場を失う状況でしたが、鮫島選手は周囲の助けもあり、アメリカを拠点にしてサッカーを続けました。こうして迎えたワールドカップでは、「最高の結果を被災地へ」という決意のもと、攻守に渡ってチームを牽引。全5試合にフル出場し、決勝では世界最強のアメリカを破る立役者の一人となったのです。
 世界一に輝いた翌年のロンドンオリンピックでは、決勝でアメリカのリベンジに屈して銀メダルに。頂点にこそ届きませんでしたが、オリンピックでは初のメダル獲得の快挙を達成しました。大会連覇を狙った15年のワールドカップは、宿敵アメリカに決勝で敗れ準優勝に終わりますが、大会後に海外メディアが選んだ大会ベストイレブンでに日本からただ一人、鮫島選手が選ばれるなど、世界屈指の左サイドバックとして存在感を発揮しました。なでしこジャパンのキャプテンを務めた18年のアジア大会では、海外クラブでプレーする主力選手の不参加や怪我人も多い苦しい状況の中、鮫島選手は普段とは違うセンターバックでプレーするなど、ベテランらしい対応力の高さを見せてチームを牽引。なでしこは1位でなければいけないと、チームメイトを鼓舞し続け、2大会ぶりの優勝へと導きました。

     
【フィギュア 宇野昌磨選手】
 今年5月14日、引退会見を開いたフィギュアスケート男子の宇野選手。5歳の時、地元・名古屋市のスケートリンクで浅田真央選手に一緒にフィギュアやろうよと声をかけられ、スケート人生が始まりました。2015年、グランプリファイナルに初めて出場したのを皮切りに6度出場し、優勝1回を含め、すべての大会で表彰台に登ります。20歳で出場した2018年の平昌オリンピックで銀メダル、22年の北京オリンピックでは団体戦で銀、個人戦で銅メダルを獲得すると、その直後に行われた世界選手権で初優勝。悲願の世界一に輝いたのです。当時24歳でしたが、実は絶頂期のこの頃から引退を意識し始めたという宇野選手。世界一になるという目標を叶えたことに加え、ずっと目標にしてきた偉大な先輩・羽生結弦選手が競技生活を引退してプロに転向したことで、大きな喪失感を覚えたこともきっかけでした。
 その後も宇野選手の演技はますます磨きがかかり、キャリアハイともいうべき素晴らしい成績を残していきます。22年12月には、グランプリファイナルで初優勝。日本の男子選手の優勝は13年から4連覇した羽生結弦選手以来、史上3人目の快挙でした。勢いそのままに直後の全日本選手権も制すると、翌年の3月には羽生選手も成しえなかった世界選手権連覇の大偉業を達成しました。この世界選手権、宇野選手は大会直前に右足首を痛めましたが強行出場。ショートプログラムでは、シーズン世界最高得点をマークします。またフリーでは演技後、リンクの上に倒れ込んで大の字になるほど死力を尽くし優勝した宇野選手。しかし今年3月、前人未到の3連覇を目指した世界選手権では、ミスもあって4位に終わり、結果的にこれが競技者としては最後の演技となりました。

 
【競泳 渡部香生子選手】
 オリンピックに3大会連続で出場した経歴を持つ、女子平泳ぎの渡部選手。小学生の頃は自由型とバタフライで全国大会に出場する実力はあったものの、実は平泳ぎは一番苦手だったといいます。転機は中学生のとき、練習のしすぎで右肩を痛めてしまったこと。2ヵ月後に水泳を再開にするにあたって決断したのが、他の種目に比べて肩関節の可動域の小さい平泳ぎを軸に泳ぐことでした。すると才能はすぐに開花。1ヵ月ほどで標準記録を突破し、翌年の日本選手権に出場するほどの実力をつけると、2012年には高校1年生でロンドンオリンピックへの出場を果たしたのです。渡部選手が一気に世界の頂点まで駆け上がったのは、大学1年で出場した15年の世界選手権。まずは200m個人メドレーで銀メダルを獲得すると、本命の女子200m平泳ぎでは前哨戦の大会で3連敗を喫していた当時の世界記録保持者・デンマークのペダーセン選手とデッドヒートを演じます。この大会のために合宿で磨いてきた後半のスピードと持久力を活かし、渡部選手は逆転で金メダルを獲得しました。
 渡部選手が世界選手権で獲得した金メダルは、日本勢にとって大会通算100個目のメダルというメモリアルなもの。さらに18歳265日での優勝は、男女を通じて日本勢史上最年少記録。しかしこの快挙は、その後プレッシャーとなって渡部選手を苦しめることになります。翌16年のリオ オリンピックでは準決勝で敗退し、何もできない自分が情けなくて悔しいと号泣した渡部選手。雪辱を期して21年の東京オリンピックに臨みますが、平泳ぎ2種目で予選敗退。東京オリンピックの後はスポンサーも見つからず、貯金を崩しながら練習を続ける日々が続きました。タイムも上がらず、コーチとも意見が合わず、代表からも遠ざかるなど、どん底の日々を過ごした渡部選手。それでも23年に所属先を見つけ、12月のジャパン・オープンでは見事に復活優勝。第一線で戦えることを示してみせました。迎えた今年3月のパリオリンピック代表選考会で、4大会連続出場を目指した渡部選手でしたが、派遣標準記録にわずか0秒24届かず落選。現役引退を決断しましたが、完全燃焼の競泳人生でした。

 

【パラ陸上 山本篤選手】
 今年5月に自身のSNSで現役引退を宣言したのは、パラ陸上の第一人者・山本選手、42歳です。パリパラリンピックの開幕も控える中で引退を決断した理由は、その前日に閉幕した世界選手権・神戸大会の走り幅跳びで5位に終わったことでした。その競技人生のきっかけは2000年、高校2年生の時のバイク事故でした。左足の大腿部を切断した山本選手は、義肢装具士を養成する専門学校で競技用の義足と出会い、陸上競技を始めます。その後、本格的に競技に取り組むため、04年に大阪体育大学の体育学部に入学して陸上競技部に所属。08年北京パラリンピックに走り幅跳びに出場し、見事銀メダルを獲得します。義足の日本人陸上選手では、史上初のパラリンピックメダリスト誕生という快挙でした。
 山本選手の快進撃はその後も続きます。16年5月には日本選手権で6m56を記録し、当時の世界記録を更新。この年のリオパラリンピックでは、走り幅跳びで2大会連続の銀メダルを獲得。さらに4×100mリレーで銅メダルと、1大会で2つのメダルを獲得します。21年の東京パラリンピックの走り幅跳びでは、結果は4位ながらも自己ベストを更新する大ジャンプを披露。パラリンピックでは惜しくも金メダルに届きませんでしたが、世界選手権では連覇を達成しました。山本選手のチャレンジ精神は陸上競技だけにとどまらず、スノーボードで冬の平昌パラリンピックにも出場するなど“夏・冬二刀流”でも話題を呼びます。その活躍は、障害を持った人たちにとって大きな勇気を与えました。

 

来週のスポーツ伝説は……

7/29(月) プロ野球 才木浩人投手
7/30(火) プロ野球 田宮裕涼選手  
7/31(水) プロ野球 水谷瞬選手
8/1(木) プロ野球 古田島成龍選手
8/2(金) プロ野球 岡大海選手

お楽しみに!!

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    パーソナリティ
    • 滝本沙奈
      滝本沙奈
      滝本沙奈

      滝本沙奈

      生年月日:1984年6月6日
      出身地:東京
      学歴:青山学院大学文学部英米文学科卒
      趣味:マリンスポーツ(ダイビング、サーフィン、釣り)
      資格:PADIオープンウォーターダイバー、おさかなマイスターアドバイザー

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