【重量挙げ 宮本昌典選手】
ウエイトリフティング男子73キロ級の宮本選手は中学・高校の頃から次々と記録を打ち立て、将来を期待されていました。さらに飛躍したのは、東京国際大学に進学してからのこと。1964年の東京、68年のメキシコオリンピックで2大会連続金メダルに輝いたレジェンド・三宅義信監督指導のもと、2017年の世界ジュニア選手権で銀メダルを獲得し、世界から注目を浴びます。迎えた21年の東京オリンピックではメダルも期待されましたが、大会の1ヵ月前に体調を崩したことが響き、結果は7位に終わりました。入賞したとはいえ、当時の自己ベスト345キロは銅メダルに手が届く記録だっただけに、初のオリンピックは試合後に涙を流すほど悔いの残るものとなりました。
当時の宮本選手は、師匠の三宅監督から「焦るな、侮るな」という言葉をよくかけられていた
と言います。そこでより丁寧な練習を心がけ、いかにベストコンディションで試合に臨めるかを重視することにした結果、昨年5月のアジア選手権で悲願の初優勝。今年4月に行われたワールドカップでも自身の日本記録を更新する350キロを挙げて4位になるなど、確かな進歩を遂げ、宮本選手は2大会連続のオリンピック代表に内定しました。世界ランキングトップも経験し、今年5月の時点でも3位につけるなど、実力通りの力を出し切れば十分メダルを狙える位置につけている宮本選手。偉大な師匠と同じ金メダルを獲得するためにも、今度こそ万全の体調でオリンピック本番を迎えます。
【重量挙げ 鈴木梨羅選手】
身長146㎝、体重49kgの小柄な体で重たいバーベルを持ち上げる、ウエイトリフティング女子49キロ級の鈴木選手。彼女はふたりのオリンピアンを追いかけ、飛躍を遂げてきました。中学まで剣道に打ち込んでいた鈴木選手がウエイトリフティングに出会ったのは、千葉県の松戸国際高校時代です。体格差が不利になる剣道と違って、階級制で競えること。そして高校からでも全国大会を目指せることに魅力を感じたと言う鈴木選手。この高校時代に、一人目のオリンピアンに出会います。OGでリオオリンピック63キロ級代表の松本潮霞選手です。鈴木選手は松本先輩からの推薦もあり、松本選手が育った早稲田大学に進学。2018年には世界大学選手権で優勝するなど、実績を積み上げていきました。
そんな鈴木選手が挑む49キロ級には、日本のウエイトリフティングを牽引してきたレジェンドがいます。ロンドンとリオオリンピックでメダルも獲得した三宅宏実選手です。東京オリンピックも三宅選手の記録に及ばず、鈴木選手は代表入りを逃しました。しかし東京オリンピック後、三宅選手が現役引退を表明。新たな日本のエースは誰になるのか、大いに期待と注目を集める中、鈴木選手は見事に結果を出します。オリンピックからおよそ4ヵ月後の2021年12月、世界選手権で銀メダルを獲得。22年には全日本選手権の49キロ級で初優勝を果たし、名実ともにこの階級の第一人者になったのです。鈴木選手は三宅選手の後継者としてますます意欲を燃やすと、今年5月、念願のパリオリンピック代表内定を勝ち取ったのです。
【ホッケー 永井友理選手・葉月選手】
”さくらジャパン”の愛称で呼ばれるホッケー女子日本代表。チームには2016年のリオと、前回の東京オリンピックも経験した最強姉妹がいます。点取り屋のフォワード、姉の永井友理選手と、司令塔のミッドフィルダー、妹の永井葉月選手です。実は両親もホッケーの元日本代表選手で、小学生の時に母親が教える体験会に二人で参加し、ホッケーを始めました。初のオリンピック出場となったリオ大会では、父親が女子日本代表監督を務め、親子で出場して話題に。21年の東京大会では、男子ホッケーで弟の永井祐真選手も代表に選ばれて、今度は姉、妹、弟の3人揃ってのオリンピック出場を果たし、ホッケー一家の快挙として再び注目を浴びました。その東京オリンピックでさくらジャパンは、予選ラウンドで5戦全敗と悔しい結果に終わりましたが、試合内容は5試合中、4試合が1点差負け。次のパリオリンピックでこそ上位進出を目指そうと意気込む新チームで、キャプテンに指名されたのが姉の友理選手でした。
本来はシャイで、自分の気持ちを表に出さないタイプの友理選手が描いたキャプテン像は、「どのチームよりも目立たないキャプテン」。キャプテンが一番目立つのではなく、支えるキャプテンとして、チームメイトが生き生きとプレーできるよう環境づくりに努めたのです。そんな友理キャプテンのもと、今年1月、さくらジャパンはインドで行われた世界最終予選に挑みます。上位3チームに入ればオリンピック出場が決まるこの大会で、日本はグループリーグを2勝1分けで突破。準決勝進出を決めたチリ戦では、妹の葉月選手がプレイヤー・オブ・ザ・マッチに選ばれました。準決勝でアメリカに敗れ、迎えた3位決定戦。勝てばパリ行きが決まる試合の相手は東京オリンピック4位、そして今大会の開催国インドという、完全アウェイの中で強敵との対戦となりました。第1クォーター、日本はペナルティーコーナーからプッシュシュートを決めて先制すると、そこからはインドの猛攻撃をチーム一丸で守り抜き、1対0で勝利。さくらジャパンは6大会連続のオリンピック出場を掴みました。
【競泳 竹原秀一選手】
日本の男子背泳ぎといえば、東京オリンピックまで4大会連続出場してきた入江陵介選手がエースとして君臨してきました。この背泳ぎで日本の新エースとして期待されているのが、20歳の竹原選手です。その泳ぎは独特で、背泳ぎならではの技・バサロキックが苦手。さらに水面から体が飛び出し、大きく上下動するフォームが特徴で、一見非効率な泳ぎ方に見えます。それでも各年代で日本一を勝ち取る強さを見せると、高校生だった2022年にはジュニア・パンパシフィック選手権で金メダルを獲得。ポスト入江として注目されました。
高校卒業後は、数々のオリンピックメダリストを育ててきた平井伯昌コーチのいる東洋大学でさらに泳ぎを磨き、昨年夏、竹原選手の地元・福岡で開催された世界選手権に出場します。しかし「故郷に錦」とはならず、準決勝で敗退。挫折を味わいましたが、世界の壁の高さを感じたからこそオリンピックに出たいという思いがより強くなったという竹原選手。平井コーチのもと、個性的な泳ぎの長所は維持しつつ、呼吸のリズムや細かいキックの強化に努めました。すると今年3月、パリオリンピックの日本代表選考会で快進撃を演じます。まず決して得意ではない100m背泳ぎで全体4位と健闘。得意の200m背泳ぎでは予選・準決勝と立て続けに自己ベストの好記録をマークし、全体1位で決勝進出を決めました。オリンピックの派遣標準記録を突破して、上位2名以内に入れば代表内定となる決勝。隣のレーンには、5大会連続出場を目指す入江選手との真っ向勝負で、竹原選手は見事優勝。またも自己ベスト更新で派遣標準記録も突破し、パリの切符を掴んだのです。
【競歩 浜西諒選手】
東京オリンピックの男子20キロ競歩で銀・銅メダルを獲得するなど、今や日本のお家芸とも言える陸上の競歩。パリでもメダルの期待がかかる中、これまで無名だった選手が代表に選ばれました。2000年生まれの24歳・浜西選手です。浜西選手は明治大学に入学時から、世界で活躍する選手になることを目標に掲げ、上部で同期の競歩部員がいない中、ひとり黙々と練習に励みます。大学4年生で関東大会優勝を果たすまでに成長しますが、全国大会での優勝実績を残せないまま卒業。それでも世界で活躍する選手になるという目標は変えず、週4日、スーパーマーケットで働きながら競技を続けました。結果的に、このスーパーでの勤務が思わぬ効果を生みます。大学時代は体が硬く故障しがちでしたが、日々野菜を運ぶ業務で体を使うことで、体の柔軟性に繋がったのです。仕事で忙しい時には思い切って練習を休むなど、オンとオフのメリハリも生まれたという浜西選手。仕事の合間を縫って練習に励み、地道に力をつけていきました。
浜西選手が日の目を見たのは、今年2月、パリオリンピック代表選考会を兼ねた日本選手権でした。まず抜け出したのは、東京オリンピックの銀メダリスト・池田向希選手。2番手はオリンピックや世界選手権のメダリストなどの強敵がし烈な争いを繰り広げる中で、後半一気にスパートをかけて抜け出したのが浜西選手でした。自己ベストを4分以上も更新する会心のレースで2位となり、派遣標準記録も突破してオリンピック代表内定を勝ち取ったのです。5月に行われた東日本実業団選手権の5000m競歩でも、日本新記録を樹立して優勝。距離は違っても、日本選手権の成績はフロックではなく地力があることを証明してみせたのです。
来週のスポーツ伝説もお楽しみに!!
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