【マラソン 小山直城選手】
今年10月に行われた、パリオリンピック・マラソン代表を決める選考レース「マラソングランドチャンピオンシップ」、通称「MGC」。この一発勝負の大一番で優勝し、男子マラソンのオリンピック代表権を勝ち取ったのが小山選手です。高校時代には、同郷の先輩でマラソン元日本記録保持者の設楽悠太選手と共に埼玉代表として全国都道府県対抗男子駅伝に出場。憧れの設楽選手からタスキを受けて区間1位で走り埼玉県の初優勝に貢献したことが、マラソン人生のターニングポイントになったといいます。大学卒業後は設楽選手が当時所属していたホンダに入社し、1年目の2019年、東京オリンピック出場権を懸けたMGCに出場する設楽選手の練習パートナーに指名されます。
設楽選手との練習で実力をつけた小山選手は、全日本実業団対抗駅伝で活躍します。昨年は3区で9人抜きを演じてチームの初優勝に貢献すると、今年はエース区間の4区を任され、トップと25秒差の3位から12秒リードのトップに立つ快走を見せ、チーム連覇の立役者になりました。さらに今回、マラソンでも結果を出してMGC出場権を獲得したのです。MGC本番では、雨対策としてワセリンを体とユニホームに塗る作戦を決行。これにより撥水効果が生まれ、ユニホームに雨が染み込んで重くなるのを防げました。またレース後半が勝負になると踏んで、先頭集団が7人で牽制しあう中、小山選手は1人離れて第2集団をキープ。前にいる選手たちを冷静に観察し、残り3キロの地点で優勝候補の大迫傑選手の体が横にズレた瞬間を見逃さず、ラストスパート。みごと優勝をもぎ取りました。
【マラソン 赤﨑暁選手】
パリオリンピックのマラソン代表に内定した選手の中で、日本陸連の瀬古利彦さんが”ダークホース的な存在”と語った熊本県出身の赤﨑選手。熊本県勢のオリンピック・マラソン代表は1924年、前回のパリオリンピックに出場した金栗四三選手以来、実に100年ぶりの快挙です。高校から陸上部に所属すると、拓殖大学時代は4年連続で箱根駅伝に出場。社会人2年目から始めたマラソンはデビューから2大会連続で2時間9分台をマークし、MGC・マラソングランドチャンピオンシップへの出場権を獲得しました。
パリオリンピックの代表男女2枠ずつをかけ、今年10月に行われたMGC。雨の中のレースは終盤までもつれる展開でしたが、39キロ手前で小山直城選手がスパート。先頭に立って後続との差を拡げます。代表入りをかけ、注目は2位争いへ。東京オリンピックに続いての代表を狙う大迫傑選手と赤﨑選手の一騎討ちとなり、競技場内に入った瞬間の大歓声で、赤﨑選手は大迫選手が背後に近づいていることに気付きます。赤﨑選手は最初の200mをハイペースで駆け抜けてリードを広げると、その後は何度も後ろを振り返りながら必死で逃げ、最後は5秒差をつけてゴール。2位となり、代表を内定させました。
【マラソン 鈴木優花選手】
男女とも上位2位までに入れば、パリオリンピックのマラソン代表に内定する一発勝負の選考レース「MGC・マラソングランドチャンピオンシップ」。女子で優勝し、みごとオリンピック代表の座を勝ち取ったのが鈴木選手です。大東文化大学時代には全日本大学女子駅伝で3年連続区間賞を獲得するなど、エースとして活躍した鈴木選手。初めてマラソンを走ったのは昨年の3月で、今回のMGCが3度目のレース。出場した選手の中では最年少です。この経験不足を補ったのが「冷静かつ大胆」なレースプランでした。雨が降りしきるあいにくのコンディションの中、序盤は前回MGC優勝の前田穂南選手や、2位の鈴木亜由子選手ら有力選手が先頭集団を形成します。そんな中、鈴木選手は沈着冷静に自分の走りに徹し、20キロ通過まで第1集団の後方で足をため、後半勝負に賭けたのです。
レース中盤からは、東京オリンピック8位の一山麻緒選手が前に出て、一時は独走状態となります。しかし鈴木選手は自分のリズムを崩さず、丁寧にピッチを刻み続けました。実は鈴木選手は、ラスト5キロの急な上り坂に自信がありました。大学時代、富士山女子駅伝の最終7区で、1年生ながら4.6キロの上り坂を区間新記録で走った経験があったからです。そのプラン通り、鈴木選手は残り5キロでギアを上げると、38キロ過ぎで先頭の一山選手をとらえ、一気に突き放して2時間24分9秒のタイムでゴールイン。悪天候にもかかわらず、初マラソンでマークした2時間25分2秒の自己ベストを53秒更新して、パリオリンピック代表の座をつかみました。
【マラソン 一山麻緒選手】
上位2位までに入れば、パリオリンピックのマラソン代表に内定する選考レース「MGC・マラソングランドチャンピオンシップ」。女子は24人がパリ行きを懸けてレースに臨みました。このレースで終盤まで先頭を走っていたのが一山選手です。前回のMGCはレース前半で優勝争いから脱落し、6位に終わった一山選手。その後の名古屋ウィメンズマラソンで、女子だけの大会ではアジア新記録となる2時間20分29秒をマークして東京オリンピックへの最後の出場枠をつかみ、本番でも8位に入賞しています。
前回はすんなりオリンピック行きを決められず苦労しただけに、今回はMGCでいい走りをして一発でパリ行きを決めようと心に誓った一山選手。中盤まで10人が先頭集団を形成する展開になりましたが、23キロ過ぎで一山選手が抜け出すと、細田あい選手が反応し追走。2人の並走状態になります。33キロ過ぎで一山選手が再び細田選手を引き離し、一時は独走状態になりましたが、ここで猛然とスパートしてきたのが鈴木優花選手です。38.4キロで鈴木選手に抜かれてしまった一山選手。一度は引き離した細田選手も再び追い上げてきて、もし抜かれれば2位以内に入れず、パリ内定もつかめなくなります。オリンピック入賞者の意地でギアを入れ直した一山選手は、最後まで追いすがる細田選手を7秒差で振り切り、2位でゴールイン。みごと、目標のパリ行きを決めてみせました。
【サッカー ボビー・チャールトン】
イングランドにおいて、ボビー・チャールトンの名はひときわ特別な存在です。サッカー界で頭角を表したのは1956年、18歳の時でした。イングランドの強豪マンチェスター・ユナイテッドのトップチームで初出場を果たし、得点を重ねていきます。しかし2年後の58年、チャンピオンズカップの準々決勝帰りの飛行機事故でチームメイトが8人も亡くなる”ミュンヘンの悲劇”に遭遇。チャールトン選手も事故に巻き込まれますが、九死に一生を得て生還します。ピッチに戻ってくると、その年のワールドカップにも召集されるなど見事な復活を見せ、以降は4大会連続でワールドカップに代表入り。地元開催の66年大会ではイングランドに悲願の初優勝をもたらし、ヨーロッパ年間最優秀選手にも選ばれます。またマンチェスター・ユナイテッドでは、68年にキャプテンとしてヨーロッパ・チャンピオンズカップでイングランド勢初優勝を達成。10年前にミュンヘンの悲劇によって果たせなかった優勝を手にしました。その偉大な功績から、94年にはイギリス王室より「ナイト」の称号も授与されました。
今年10月21日、86歳で亡くなったチャールトンさん。マンチェスター・ユナイテッドはクラブの公式サイトで「クラブ史上最も偉大で最も愛された選手のひとり」と改めて紹介。その功績を振り返りました。日本のサッカー界も、チャールトンさんから大きな影響を受けていました。日本サッカー協会の川淵三郎相談役はJリーグ立ち上げの頃にイングランドを訪ね、チャールトンさんからプロリーグの在り方や規約の制定、プロ選手契約など、さまざまな教えを受けました。また2002年のワールドカップ招致の際には、アンバサダーとして日本の魅力を発信してくれただけでなく、福島県にあるサッカー拠点「Jヴィレッジ」の名付け親ともなりました。選手としても引退後も、世界のサッカー界に影響を与え続けた偉大なレジェンドの名前は、この先もずっと語り継がれていきます。
来週のスポーツ伝説は……
12/25(月) プロ野球 オリックス・バファローズ
12/26(火) プロ野球 阪神タイガース
12/27(水) プロ野球 山本由伸投手
12/28(木) M L B ロナルド・アクーニャJr.選手
12/29(金) M L B 大谷翔平選手
お楽しみに!!
2025.03.27
2025年3月24日~27日の放送内容
【プロ野球 浅野翔吾選手】 大型補強のもと、2年連続のリーグ優勝を目指す読売ジャイアンツ。選手の層が厚いため、高卒の生え抜き野手がチャンスを掴むのは並大抵のことではあ...
2025.03.21
2025年3月17日~21日の放送内容
【スピードスケート 高木美帆選手】 30歳になった現在も国際大会で圧倒的な強さを見せ、女子スピードスケート第一線で活躍を続けている高木選手。冬季オリンピックでは、20...
2025.03.14
2025年3月10日~14日の放送内容
【プロ野球 田中将大投手】 昨年のオフ、東北楽天ゴールデンイーグルスを退団し、読売ジャイアンツへの入団を発表した田中投手。2006年に高校生ドラフト1位で東北楽天に入...
2025.03.06
2025年3月3日~7日の放送内容
【メジャーリーグ 菊池雄星投手】 岩手県の花巻東高校時代から注目を浴びてきたサウスポー・菊池投手。2019年にアメリカ・メジャーリーグに活躍の場を移すと、5年目の23...
2025.02.28
2025年2月24日~28日の放送内容
【プロ野球 遠井吾郎選手】 今年で球団創立90周年を迎えた阪神タイガース。遠井選手は1950年代~70年代にかけて、阪神ひと筋で20年間プレーした名物選手です。ぽっち...