【レスリング 樋口黎選手】
パリオリンピック・レスリング男子フリースタイル57キロ級の代表に内定した、樋口選手・27歳。最初の大きな挑戦は、20歳で出場した2016年のリオオリンピックです。前年の世界選手権で2位となった強敵を撃破するなど快進撃を見せ、初出場のオリンピックで銀メダルを獲得。大の甘党でマカロンが好物ということから、”マカロン王子”というニックネームでも注目を浴びました。その後、東京オリンピックに向けて一度は65キロ級に階級を上げることも試みた樋口選手。しかし身長が164㎝と小さく、相手との体格、リーチ差などの問題が解消できずに57キロ級に戻して再挑戦することに。戻したことで減量に苦しんだ樋口選手は、東京オリンピックの代表入りをかけたアジア予選を50gの体重オーバーでまさかの失格。最後の望みのプレーオフも減量苦で力を発揮できずに敗れ、涙を呑みました。
大好物のマカロンを絶ち、樋口選手は次のパリオリンピックを目指し再出発。支えてくれたのは、師匠として仰ぐ湯元健一コーチです。08年の北京オリンピック銀メダリストで、世界選手権でも銅メダル経験がある湯元コーチの映像を見て、樋口選手は小さい頃から技を真似ていたと言います。昨年、オリンピックの階級にはないものの61キロ級で世界選手権に出場すると、決勝戦を10対0と完勝。初めて世界王者に輝きます。それは、師匠を超えた瞬間でもありました。そして減量という一番の課題をサポートしてくれるのが、今年結婚した元レスリング選手の奥様です。おかげで今年の世界選手権は57キロ級に万全の体制で臨み、銀メダルを獲得。パリオリンピックの代表内定を勝ち取ったのです。
【レスリング 高谷大地選手】
レスリング男子フリースタイル74キロ級で、パリオリンピック代表に内定した高谷選手。兄は、ロンドン・リオ・東京とオリンピックに3大会連続で出場。全日本選手権は12連覇中という、高谷惣亮選手です。大地選手は高校時代、インターハイと国体で優勝し、大学1年生の時には全日本選抜選手権で優勝するなど、スピードあるタックルを中心とした攻撃力を持ち味に着実に力をつけてきました。ただ、世界の舞台ではなかなか勝てず兄の陰に隠れがち。オリンピックは、献身的な兄のサポート役に徹する日々でした。そんな大地選手にとって転機となったのは、東京オリンピックの代表を逃した2019年、階級をそれまでの65キロ級から74キロ級に上げたことです。本格的に体を作り直して上半身のたくましさを増すと、全日本選手権で21年・22年とみごと連覇を果たしました。
たくましさを増した上半身のパワーを武器に自信も手に入れた大地選手は、昨年・今年と2年連続で世界選手権の代表に選ばれます。「今度は自分が主人公になる」と決意して挑んだ昨年は10位。持ち味のタックルと組み手に磨きを掛けて挑んだ今年の世界選手権は、3位決定戦に進出。先に失点を許す苦しい展開から鮮やかなフォール勝ちで銅メダルを獲得し、パリオリンピックの代表内定を勝ち取ったのです。結果的に3大会連続の兄に続き、高谷家としては4大会連続の代表入りになりました。
【レスリング 文田健一郎選手】
史上初となる高校グレコローマン8冠を達成するなど、高校時代から注目されてきた文田選手。大学進学後、その前に立ちはだかったのが、2学年上の先輩・太田忍選手です。同じ階級の2人はよきライバルとしてシノギを削り、太田選手は2016年のリオオリンピックに出場。銀メダルを獲得します。文田選手も太田選手と切磋琢磨して成長を果たすと、17年の世界選手権で日本選手では34年ぶりの金メダルを獲得しました。そんな2人による、”世界一熾烈”と言われた東京オリンピックの代表争いは後輩の文田選手がその座をつかみとります。迎えた東京オリンピック本番では、金メダルだけを目指していた文田選手。しかし世界中からマークされたことで、なかなか得意の豪快な投げ技を繰り出せず、まさかの銀メダルに終わりました。
続く昨年の世界選手権も、得意の投げ技を封じられて銅メダル。次のパリオリンピックで金メダルを獲るため、文田選手はレスリングのスタイルを見直す決意をします。それは、投げ技に執着せず、堅実なレスリングに徹すること。地味ですが、絶対に勝つための決意でした。そんな文田選手に今年5月、試練が訪れます。練習中に左太ももを傷め全治12週間の肉離れと診断された文田選手。リハビリ中、励みになったのは今年生まれた愛娘の存在です。ケガが治り切らないなか試合に復帰すると、満足に練習ができない状況ながら、パリオリンピックの代表がかかった9月の世界選手権で銀メダルに輝き、みごとに内定を勝ち取りました。
【レスリング 日下尚選手】
レスリング・男子グレコローマン77キロ級の日下選手は、2000年生まれの現在23歳。3歳からレスリングを始めますが、中学時代はレスリングより相撲で才能を発揮。全国大会にも出場し、強豪高校から相撲部への入部のスカウトが来たほどです。それでも、日下選手が高校で選んだのはレスリング。相撲経験をレスリングに生かし、実力アップに繋げると、高校2年生で初の全国優勝。高校3年生の時には全日本選手権で3位、大学1年生になった2019年には、全日本選抜選手権と全日本選手権でダブル優勝をどちらも史上最年少で成し遂げ注目を浴びました。21年の東京オリンピックは代表入りこそ叶いませんでしたが、銅メダルを獲得した屋比久翔平選手の練習パートナーとして同行。次のパリオリンピック出場を視野に、世界レベルを肌で感じる経験を重ねました。
社会人になった今年、日下選手は6月の全日本選抜選手権決勝で、尊敬する先輩・屋比久選手を撃破。9月の世界選手権では、3位決定戦で持ち前の前に出るレスリングを発揮し、わずか1分35秒の完勝で銅メダルを獲得。屋比久選手も成し遂げていない世界選手権のメダルを手にしたのです。この結果から、日下選手はパリオリンピックの代表にも内定。77キロ級での表彰台は、日本の男子グレコローマンスタイル史上、最も重い階級での快挙でした。
【大相撲 朝潮太郎関】
11月2日、小腸がんのため67歳で亡くなった元大関・朝潮関。現役時代は陽気なキャラクターで人気を集め、36場所にわたり大関を務めました。中学で相撲を始め、近畿大学3年・4年生の時、2年連続で学生横綱とアマチュア横綱に。10部屋以上による誘いの中から名門・高砂部屋に入門し、1978年3月の春場所、本名の「長岡」で幕下60枚目格付け出しの鳴り物入りでデビューしました。2場所後には新十両、さらに2場所後には新入幕とスピード出世を続け、身長180㎝台、体重180kg台の巨体から繰り出す押し相撲を武器に、翌79年1月の初場所で10勝を挙げて敢闘賞を受賞。3月の春場所から、高砂部屋伝統の四股名「朝汐太郎」を襲名します。大関昇進は時間の問題と見られていましたが、その後、大関獲りを5回も逃し、強い朝汐と弱い朝汐が同居していると言われました。
転機になったのは、1982年11月の九州場所です。この場所から先代の元横綱と同じ「朝潮」に改名。初日に横綱・北の湖関を破る金星を含め9勝を挙げると、翌83年1月の初場所は14勝、3月の春場所で12勝をマークし、3場所通算35勝の堂々たる成績で6度目の挑戦にして念願の大関昇進を果たしたのです。それから2年後の85年3月の春場所で、横綱・千代の富士関、大関・若嶋津関らを下して念願の初優勝。朝潮関は初土俵も大関昇進を決めたのも初優勝もすべて大阪で行われた春場所で、大阪は大学時代に過ごした第二の故郷でもありました。89年3月の春場所、初日から4連敗した朝潮関は、取組後に引退を表明。「最後は浪速」でと心に決めていた、朝潮関らしい幕引きでした。
来週のスポーツ伝説は……
12/11(月) プロ野球 近藤健介選手
12/12(火) プロ野球 岡本和真選手
12/13(水) プロ野球 中野拓夢選手
12/14(木) プロ野球 岩崎優投手
12/15(金) プロ野球 島内颯太郎投手
お楽しみに!!
2025.03.27
2025年3月24日~27日の放送内容
【プロ野球 浅野翔吾選手】 大型補強のもと、2年連続のリーグ優勝を目指す読売ジャイアンツ。選手の層が厚いため、高卒の生え抜き野手がチャンスを掴むのは並大抵のことではあ...
2025.03.21
2025年3月17日~21日の放送内容
【スピードスケート 高木美帆選手】 30歳になった現在も国際大会で圧倒的な強さを見せ、女子スピードスケート第一線で活躍を続けている高木選手。冬季オリンピックでは、20...
2025.03.14
2025年3月10日~14日の放送内容
【プロ野球 田中将大投手】 昨年のオフ、東北楽天ゴールデンイーグルスを退団し、読売ジャイアンツへの入団を発表した田中投手。2006年に高校生ドラフト1位で東北楽天に入...
2025.03.06
2025年3月3日~7日の放送内容
【メジャーリーグ 菊池雄星投手】 岩手県の花巻東高校時代から注目を浴びてきたサウスポー・菊池投手。2019年にアメリカ・メジャーリーグに活躍の場を移すと、5年目の23...
2025.02.28
2025年2月24日~28日の放送内容
【プロ野球 遠井吾郎選手】 今年で球団創立90周年を迎えた阪神タイガース。遠井選手は1950年代~70年代にかけて、阪神ひと筋で20年間プレーした名物選手です。ぽっち...