知っておきたい!視覚障害者のパートナー「盲導犬」の暮らしと一生

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皆さん、盲導犬を知っていますか?
「目が不自由な方をサポートしている犬」という漠然とした知識はあっても、実際に盲導犬がどのような仕事をし、どんな一生を送っているのかまでは知らないという方が大半ではないでしょうか?
今回は盲導犬の役割と暮らし、その一生について調べてみました。

そもそも、盲導犬とは?日本に何頭くらいいるの?

 

盲導犬は、その名の通り、目の見えない人・見えにくい人の歩行をサポートするために、国家公安委員会が定める施設で特別な訓練を受けた犬のことを指します。
海外では20世紀初頭から盲導犬の組織的な育成が始まりましたが、日本で初めて国産の盲導犬が誕生したのは、1957年のこと。1978年には「道路交通法」の改正により、法的に盲導犬の存在が認知されました。現在では、公益財団法人日本盲導犬協会など11の団体が盲導犬の育成に取り組んでおり、2015年度現在、全国で966頭の盲導犬が活躍しています。
盲導犬は「身体障害者補助犬法」という法律により、公共施設や交通機関、飲食店やスーパー、ホテルなど様々なところに同伴することが認められています。盲導犬ユーザーの方は、盲導犬と一緒に電車に乗ったり、飲食店で食事をしたり、ショッピングをしたりすることができるのです。

 

盲導犬に向いている犬種は?

 

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盲導犬に適しているとされる犬種は、ラブラドール・レトリバーとゴールデン・レトリバー、そしてラブラドール・レトリバーとゴールデン・レトリバーのミックス犬の計3種類。その理由は次の3つです。

理由①人と働くのが大好き!
レトリバーは、もともと狩猟犬として人間と一緒に働いてきた犬種。環境適応能力が高く、人間と一緒に働くことが大好きな性格なので、盲導犬に向いています。

理由②ちょうどいいサイズ
レトリバーの身体の大きさは、人を安全に誘導するためにちょうど良いサイズ。たとえばチワワのように小さすぎたり、セントバーナードのように大きすぎる犬は、人と一緒に電車に乗ったり、人込みを歩くのに向いていません。

理由③威圧感を与えない親しみやすい外見
レトリバーはたれ耳にアーモンド型の優しい目という親しみやすい外見をしています。周囲の人に怖がられたり威圧感を与えたりしないという点でもレトリバー種は盲導犬に向いています。

 

盲導犬はどんな仕事をするの?

 

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盲導犬の仕事は大きく分けて次の3つです。この3つの仕事を組み合わせて、ユーザーの安全な歩行をサポートしています。

①角を教える
ユーザーが自分の現在地を確認できるように、左側の壁などに沿って、体を左に向けて立ち止まります。ユーザーが自分の頭の中に地図を描き、盲導犬に「ストレート・ゴー(まっすぐ)」「レフト・ゴー(左に曲がれ)」などの指示を出します。

②段差を教える
階段や交差点の段差などがあると、立ち止まってユーザーに教えます。上りの場合は段差の一段目に前足を掛け、下りの場合は段差の手前で止まります。なお、盲導犬には交差点の段差を教えることはできても、信号の色を判断することはできません。ユーザーが車の走る音や人の気配などをもとに信号の色を判断しています。判断を誤ることもあるので、もし信号待ちのユーザーをみかけたら「青ですよ」「まだ赤ですよ」などと声をかけてあげるとよいですね。

③障害物を教える
高い場所にある障害物を避けて歩きます。駅のホームの端など、それ以上進めない場合は、盲導犬がユーザーとホームの端(または障害物)の間に入って立ち止まります。

 

盲導犬はどんな生活を送っているの?

 

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普段、私たちが街で見かける盲導犬は「ハーネス」という白い胴輪をつけています。ハーネスはユーザーと盲導犬の意思伝達のためのツール。ハーネスを通して盲導犬の動きが盲導犬ユーザー(使用者)に伝わり、安全に歩くことができるのです。たとえば、「ハーネスが少し左に動いて止まると左に角がある」、「ハーネスが少し上に動いて止まると上りの段差か階段がある」という具合にハーネスの動きから、ユーザーに情報が伝わることによって、ユーザーは安全に歩くことができるのです。逆にいうと、ハーネスは盲導犬が「仕事中」であることのサインでもあるのです。
では、仕事以外の時間、盲導犬はどんな風に過ごしているのでしょうか?
盲導犬はユーザーやその家族と一緒に暮らしており、帰宅後の過ごし方は通常の家庭犬と同じ。ブラッシングしてもらったり、お昼寝をしたりしてのんびりリラックスして過ごしています。

 

盲導犬は何歳で引退するの?

 

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ユーザーの安全な歩行を助けるために一生懸命に働く盲導犬。彼らはどんな一生を過ごすのでしょうか?誕生~盲導犬引退までの流れは次の通りです。

① 母犬や兄弟姉妹犬と暮らす(誕生~2ヶ月)
健康で盲導犬に適した性格の親犬から、盲導犬候補の子犬が誕生。繁殖飼育ボランティアの自宅や、富士ハーネス(静岡県にある日本盲導犬協会の訓練施設)などで母犬・兄弟姉妹犬と暮らします。

②パピーウォーカーと暮らす(2ヶ月~12ヶ月)
パピーウォーカーと呼ばれるボランティアの家庭で愛情に包まれて育ち、社会や家庭の中で暮らすためのルールを学びます。

③訓練期間(1~2歳)
盲導犬になるために訓練施設に戻ります。基本訓練や誘導訓練を経て、3回のテストを受けます。合格すると目の不自由な方との共同訓練へ進みます。

ここまでの段階で、盲導犬には向かないと判断された犬は、啓発活動を行う「盲導犬PR犬」や、ボランティア家庭で家庭犬(ペット)として暮らすなど、それぞれの性格にあう道に進みます。

④盲導犬として活躍(2~10歳)
2~4週間の共同訓練が終わると、いよいよ盲導犬デビュー。目の不自由な人と盲導犬との新しい生活がスタートします。その後も、定期的に担当訓練士がフォローアップを行います。

⑤盲導犬を引退(10歳~)
まだまだ元気な年齢(概ね10歳ごろ)のうちに、引退します。引退後は、引退犬飼育ボランティアの家や、「富士ハーネス」にある引退犬のための部屋で過ごします。

盲導犬としての役割を終えた後はボランティアや施設の方々の愛情に包まれてのんびりと余生を過ごすことができるんですね!

 

盲導犬の数は足りているの?

 

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先ほどご紹介したとおり、日本で1年間に育成される盲導犬の数は約130~140頭程度。一方、将来盲導犬を希望している人の数は、3000人にも及びます。さらに140頭のうち62%が代替え(1頭目の盲導犬が引退し2頭目以降の盲導犬を持つこと)で、新たに盲導犬を希望する人への貸与は38%に留まっています。盲導犬の活動期間は約8年。たとえば40歳で視覚障害を負った人が80歳になる40年の間に、5頭の盲導犬が必要になるということ。日本では盲導犬の数がかなり不足していると言わざるをえません。
一人でも多くの目の見えない人・見えにくい人が行きたいときに、行きたい場所にいくことができるようになるためには、もっと多くの盲導犬を育成しなくてはならないのです。
そのために私たちができることは、2つ。

①寄付をする
盲導犬育成費用の約9割を寄付が支えています。個人でも賛助会員になって、月会費または年会費を支払うことによって寄付ができるほか、金額を決めて好きなときに寄付をすることもできます。また、店頭などに置いてある「日本盲導犬協会募金箱」やスマートフォンから寄附できる「かざして募金」、Yahoo!ボランティアの「クリック募金」も利用できます。

②ボランティアをする
盲導犬育成事業は沢山のボランティアの方々によって支えられています。盲導犬候補の子犬を約10ヵ月間育てるパピーウォーカーや、引退した盲導犬を家族の一員として迎える引退犬飼育ボランティアなどの犬を飼育するボランティア。そして各訓練センターで訓練犬たちの世話をするケンネルボランティアや、募金活動や盲導犬啓発イベントのお手伝いをするイベントボランティアなどがあります。

1人でも多くの希望者のもとへ盲導犬を届けられるように、皆さんもできることから始めてみませんか?

寄付について

ボランティアについて

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