2020年に開催される東京パラリンピックに向けて【取材レポート:新行市佳アナ】

「第42回ラジオ・チャリティ・ミュージックソン」の中で、ニッポン放送新行市佳アナが、2020年に開催される東京パラリンピックに関する取材レポートを行いました。

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今年はリオパラリンピックが開催された年です。リオパラリンピックの次は4年後、東京パラリンピックが開催されます。パラリンピックが初めて開催されたのは、1960年ローマ大会。2020年に開催される東京パラリンピックは、夏季大会では世界で初めての同一都市2回目の開催となります。

障害者スポーツの普及・体験イベントなどを行っている、パラリンピアンズ協会の会長で、日本身体障がい者水泳連盟の会長でもある河合純一さんからお話を伺ってきました。1992年のバルセロナパラリンピックから2012年のロンドンパラリンピックまで、6大会連続で水泳・視覚障がいのクラス(S11全盲のクラス)で出場。金メダルに5回輝き、21個のメダルを獲得しました。

河合さんがパラリンピックに出場し始めた当初(1992年バルセロナパラ、1996年アトランタパラ)は、パラリンピックという言葉は国内に浸透していませんでした。オリンピックとパラリンピックでは、新聞・テレビ報道の質と量も違いました。新聞では、オリンピックはスポーツ面、パラリンピックは社会面という扱いでした。日本国内では、オリンピックとパラリンピックは別物という風潮がありました。河合純一さんは、17歳で初めてバルセロナパラリンピックに出場して、日本との違いに驚いたそうです。

河合さんのコメントです。

日本で行われる大会と全く違いました。オリンピックの観客がそのまま残り、暖かい激励、歓声につつまれました。新聞、テレビで大きく取り上げられて、それが当たり前の姿だと感じました。そのときの経験が、パラリンピアンズ協会の活動する原点になっています。

2020年の東京パラリンピックが決まって、報道量も増えて、講演会などの反響からパラリンピック、パラスポーツに注目が集まっていることは実感しているそうです。
日本国内の課題の1つは、障害の有無に関わらずスポーツに取り組める環境を整備していくこと。パラスポーツをとりまく環境としては、パラリンピアンズ協会が今年8月に発表したソチ・リオパラリンピック出場選手を対象に実施した、「パラリンピック選手の競技環境における報告書」では、全体のおよそ21%が「障害を理由にスポーツ施設の理由を断られたり、条件付で認められた経験がある」と回答しています。視覚障がい者スポーツでは、「人が少ない時間帯に利用してください」と言われてしまうそうです。選手の中にはお勤めされている方もおり、昼間などに練習はできない、どうしても会社帰り(混雑している時間帯)になってしまいます。他の競技では、例えば車椅子バスケでは体育館が傷つくからと利用を断られるそうです。パラリンピック出場選手を例に挙げたが、アスリートを取り巻く環境以前の問題で、一般の障がいをもっている人がスポーツに勤しめる環境は整っていないとのこと。

障害を考えるうえで、近年「心のバリアフリー」という言葉がよく使われるようになっています。河合純一さんが考える「心のバリアフリー」とは。

バリアはどこにあるのかを正しく理解することが大事です。バリアは誰のの心の中にもあります。それをフリーにしていくのがバリアフリーではないでしょうか。障害は他人ごとではありません。身の回りの家族や友人でも、加齢による障害で、無関係でないことを実感します。「心のバリアフリー」の理解には、感性と想像力が大事です。

障害を特殊なものとして捉えるのではなくて、人間が生きていく中で老いや加齢に伴って訪れてくる不自由さ、不便さの一部分としての理解を共有できるかというのがテーマ。
「障害の可能性」障害やリハビリの研究は高齢化社会への対策に貢献できる可能性があります。高齢化社会は世界共通の問題でもあるので、日本が課題の解決策のロールモデルになれます。

パラリンピックの魅力を河合さんにお聞きしました。

人間の持っている可能性を制約がある中で、発揮することに魅力があるのではないでしょうか。特に、私が選手だった水泳は、義足や車椅子など使用せず、自分の体だけでベストな記録を目指します。自分の行動へ転換するきっかけをパラスポーツを与えてくれます。一人でも多くの方に楽しんでいただきたいです。

私が今回のインタビューで一番驚いたのは、東京パラリンピックが私達の将来、世界の未来につながっていく可能性を秘めているということ。障害やパラスポーツ、リハビリの研究はこれから高齢化社会を迎える日本にとっても、世界にとっても課題を解決するためのヒントになってくることです。
そういうふうに、障害を特殊なものではなくて、人が歳をとっていく中で直面する問題と考えてみると、私たちの障害に対する意識も変わります。
障害に対する理解や研究が深まることで、障がいのある方もご高齢の方もお子さんも、誰でもスポーツを楽しめる環境が作られ、その土壌がさらにいっそうオリンピックパラリンピックを盛り上げるのではないかと感じました。
リオパラリンピックを現地で観戦して、目の当たりにした満員の会場、大歓声・・・日本ではリオで体感したそれ以上の大会になって欲しいと思います。

このレポートの模様は、radikoタイムフリーでお聴きください。

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