おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
9/7の3本目は、傑作と呼ばれた映画の裏側で何があったのか?
今なお世界中で問題視されるエンターテインメント業界の権力の乱用や搾取について社会に問いかける衝撃の問題作
『タンゴの後で』

ベルナルド・ベルトルッチ監督の代表作の一つと称される1972年の映画『ラストタンゴ・イン・パリ』。
大胆な性描写と心理描写が大きな反響を呼んだこの作品の陰には、ひとりの女性の怒りと葛藤があったのです。

19歳の女優マリア・シュナイダーは気鋭の若手監督ベルナルド・ベルトルッチと出会い、『ラストタンゴ・イン・パリ』で一夜にしてトップスターに駆け上がります。
しかし、劇中の48歳のマーロン・ブランドとの過激な性描写シーンの撮影は、脚本にも存在せず、もちろん彼女の合意も取らず、突然強行されました。
そしてこのシーンは、彼女に苛烈なトラウマを与え、その後の人生に大きな影を落していくことになるのです。

マリア役は、ヴェネツィア映画祭金獅子賞受賞作『あのこと』で世界的賞賛を浴びたアナマリア・ヴァルトロメイ。
マーロン・ブランドは、名優マット・ディロンが演じました。

監督は、ベルナルド・ベルトルッチ監督の2003年の作品『ドリーマーズ』でインターンとして働いたジェシカ・パルー。
マリアのいとこであるジャーナリストが記した「あなたの名はマリア・シュナイダー:「悲劇の女優」の素顔」を読んで、マリアの人生の映画化を決意します。
監督によると、マリアは撮影現場での虐待を告発した最初の女優の一人でしたが、当時は誰も彼女の声に耳を傾けませんでした。監督や芸術家の「絶対的な権威」を疑問視すること自体が不可能な時代だったからです。
そして、「私は誰かを責めたり、裁いたりするのではなく、この出来事の“遺産”に向き合いたい」と言います。

既に起きてしまったことを変えることはできませんが、“遺産”を教訓にすることはできます。
2010年代後半からはインティマシー・コーディネーターという職種も生まれ、俳優の尊厳や心身の安全を守りながら、演者側と演出側の意向の調整が進むようにはなりました。
これからは、権力と芸術の狭間で傷つく人を一人でも出してはいけないのだと、世間である私たちがそれを許してはいけないのだと思いを新たにしました。

『タンゴの後で』
9月5日(金)よりTOHOシネマズ シャンテほかにて全国公開
公式サイト:https://transformer.co.jp/m/afterthetango/
監督・脚本:ジェシカ・パルー
出演:アナマリア・ヴァルトロメイ『あのこと』、マット・ディロン『クラッシュ』、ジュゼッペ・マッジョ、イヴァン・アタル、マリー・ジラン
2024年 / フランス / フランス語 / 102分 / カラー / 5.1ch / PG-12(暴力描写や性的描写が含まれます)/
原題: Maria /英題:Being Maria / 日本語字幕:岩辺いずみ /
原作:「あなたの名はマリア・シュナイダー ―「悲劇の女優」の素顔」 (早川書房・刊)
協力:CHANEL / 配給:トランスフォーマー
2024 © LES FILMS DE MINA / STUDIO CANAL / MOTEUR S’IL VOUS PLAIT / FIN AOUT

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