おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
10/13は、現代に生きる私たちに新たな視点と気づきをくれる3本をご紹介。
2本目は、トランスジェンダー女性に恋をする夫と大好きな仕事を続けたい妻…パキスタンの都会の片隅でそれぞれの幸せがすれ違う
『ジョイランド わたしの願い』
カンヌ国際映画祭にパキスタン映画として初めて出品され、「ある視点」審査員賞とクィア・パルム賞を受賞しました。
舞台は、パキスタンで2番目の大都市、古都ラホール。
保守的な中流家庭ラナ家は、厳格な父親、長男夫婦と子供たち、次男夫婦が一緒に暮らしています。
次男のハイダルは失業中で、ご飯を作ったり姪っ子たちの面倒をみたり、家事に勤しみ、
メイクアップアーティストの仕事が生き甲斐の妻ムムターズが家計を支えていました。家父長制の伝統を重んじる厳格な父親は、そんな2人を苦々しく思っていました。
しかし、ある日ハイダルは、劇場で働く友人からバックダンサーの仕事を紹介され、ダンサーでトランスジェンダーの女性ビバと出会います。
やがて2人の恋が、夫婦とラナ家の穏やかに見えた日常に波紋を広げていくのです…。
男は外で働き女が家を守る…伝統的な男尊女卑の価値観に縛られているラナ一家。
ハイダルとムムターズは、そこから解放されて自由に生きたいという思いに苦しんでいます。
だからこそハイダルは、自由に振る舞う強さを持ったトランスジェンダーのビバに惹かれたのでしょう。
ハイダルの仕事が決まり、専業主婦を強いられたムムターズだけでなく、インテリアデザイナーの資格を無駄にしている兄嫁も、他の女性たちも、みんないくつもの願いを諦めながら、家に縛り付けられています。
しかし、女性ばかりではありません。世間体を優先することで、自分自身の心の声を黙殺している男性たちも、それぞれに生きづらさを抱えているのです。
世間に囚われた人々の葛藤は、程度の差はあれ、パキスタンだけではなく、日本でも、アメリカでも、どの国でも共通するのではないでしょうか?
淡々と日々が過ぎていくような錯覚にとらわれていましたが、ラストの思いがけない展開に、胸をギュッと掴まれたように苦しく、タイトルの意味を考えると涙が止まりませんでした。
実はこの作品、トランスジェンダーの描写から本国で一時上映禁止になりましたが、ノーベル平和賞受賞者のマララ・ユスフザイなどから支援の声が上がり、逆境を乗り越えて上映に漕ぎ着けたことでも注目されたのです。
ただ残念ながら、サーイム・サーディク監督の地元で作品の舞台であるラホールが属するパンジャーブ州では、いまだに上映が禁止されています。
このような作品が世界中のどこでも自由に観られるようになる日が来たら、何かが変わるのではないでしょうか?
『ジョイランド わたしの願い』
10/18(金)より新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国順次公開
公式サイト:https://www.joyland-jp.com
監督・脚本:サーイム・サーディク
出演:アリ・ジュネージョー、ラスティ・ファルーク、アリーナ・ハーンほか
製作総指揮:マララ・ユスフザイ、リズ・アーメッド『サウンド・オブ・メタル 〜聞こえるということ〜』 ほか
英題:JOYLAND/2022年/パキスタン/パンジャーブ語、ウルドゥー語/1.33:1/ 5.1ch/127分/日本語字幕:藤井美佳
© 2022 Joyland LLC
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