ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

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2023.09.15

サンデー早起キネマ・番外編『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』

毎週おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
今回は番外編。オンエアとは別に、是非ご覧頂きたい作品を取り上げます。

本当に考えさせられました。衝撃の実話!無実の黒人が白人警官に殺害されるまでの 90 分間を描いたノンフィクション・リアルタイム進行型サスペンス
『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』

実際に起きた目にみえる出来事は、これだけ。
 2011 年 11 /19 医療用通報装置の誤作動
 AM5:30 警官到着
 AM7:00 ケネス・チェンバレン死亡

双極性障害(躁うつ病)の黒人の元海兵隊員ケネス・チェンバレンは、睡眠中に誤って医療用通報装置のボタンを押してしまいます。
午前5時半、通報を受けた白人の警官がアパートの部屋の前に到着。ケネスはドア越しに「緊急事態ではなく、押し間違いだ」と伝えましたが、警官は「ドアを開けて無事を確認したら帰ります」と言うばかり。
そんなやりとりで精神的に追い詰められたケネスは、家のドアを開けるのを拒否。警官は「ケネスが大麻を隠しているのでは?」と疑い、差別的な言葉でケネスを侮辱し始めます。
そして、警官到着から 90 分後の午前 7時、ケネスはドアを壊して入ってきた警官に撃たれ、亡くなります。
ただ間違ってボタンを押しただけ…何の罪も犯していないケネスは、なぜ警官に殺されなければならなかったのでしょうか?
今こそ私たちが知るべき“世界の実態”がここにあります!

この作品を見ていると、自分はケネスのアパートの住人で、事の始まりから終焉まで、目の前で起きていることを固唾を飲んで見守っているような気分になります。
アパートの一室と廊下だけで、こんなに臨場感溢れる映画が出来てしまうのですね。
製作総指揮を担ったモーガ ン・フリーマンは「この映画は、法執行官がいかに間違ったアプローチをしているかを真にドラマチックに描いたもの。この事実を広めることが私たちにできる最善の方法だと思う」と語っています。
フランキー・フェイソンの演技は、まるでケネスその人。ケネスがどんな風に追い詰められていくのか、その感情がスクリーンから伝わってきます。この熱演でアカデミー賞の前哨戦であるゴッサム賞で最優秀主演男優賞を受賞しました。

「災害や事故・事件が起きた時、人は簡単にパニックに陥ってしまう」という事態を私たちは数多く見てきましたが、まさしくこういうことだったのだと納得しました。
どんどん悪い方へ悪い方へと転がってしまうのは、人間の盲信的な思い込みが一番の原因なのかもしれません。この場合は、ケネスが黒人だった事、治安の悪い地域だった事…だから「大麻を隠しているに違いない」と差別意識の強い警官たちが勝手に思い込む。ケネスもすぐにドアを開ければよかったのかもしれませんが、持病から精神が不安定になり妄想が広がって拒む。そして、事態が思わぬ方向へ転がっていきます。
ちょっとした行き違いが大事になってしまう、ありうることですよね。
そしてなにより、“声が大きい人が勝つ!”という事実も痛いほどわかりました。
結果的にどんなに正しい意見だったとしても、多勢に無勢、簡単に掻き消されてしまうのだということも身に染みました。

人間が根本的に持っているものを突きつけられた気がします。
気付かぬうちに差別したり偏見を持ってしまう(この作品の中では明らかな差別と偏見ですが)、良くも悪くも思い込みで行動してしまう…認めたくなくても、私たちはこんな部分を持っているのです。それが重なると、知らず知らずのうちに、とんでもない方向に進んでしまうのかもしれません。
世の中が危うい今こそ、このような作品が必要であり、私たちは常に“自分の心の奥に潜むもの”を認め、ちゃんと向き合わなければならないのだと改めて思いました。
今ありありとスクリーンに蘇る衝撃の実話、是非ご覧ください!

『キリング・オブ・ケネス・チェンバレン』
9月15日(金)、
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか、全国順次ロードショー!

公式サイト:http://kokc-movie.jp
製作総指揮:モーガン・フリーマン   
監督・脚本・プロデューサー:デビッド・ミデル
出演:フランキー・フェイソン『ハンニバル』『羊たちの沈黙』、エンリコ・ナターレ、アニカ・ノニ・ローズ
2020年/アメリカ/英語5.1ch/83分/原題:The Killing of Kenneth Chamberlain/字幕翻訳:柴田麻衣子
配給:AMGエンタテインメント
© 2020 KC Productions, LLC. All Rights Reserved

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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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