ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2023.04.09

サンデー早起キネマ『聖地には蜘蛛が巣を張る』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
4/9は、主人公に釘付け!4/14公開の3本をご紹介。

2本目は、イランで実際に起きた連続殺人事件を基に描かれた衝撃のクライム・サスペンス
『聖地には蜘蛛が巣を張る』

監督は、2018年の作品『ボーダー 二つの世界』で映画界の注目を集めた北欧の鬼才、イラン出身で北欧を拠点に活動するアリ・アッバシ。
2000~2001年にイランの宗教の中心地・聖地マシュハドで起きた16人の娼婦が殺された連続殺人事件を基に15年の構想を経て描いた最新作です。

聖地マシュハドでは、「街を浄化する」という犯行声明の下、娼婦連続殺人事件が起きていました。客のフリをして夜の街に立つ娼婦たちに接触し殺害する犯人の手口は、蜘蛛がその巣で獲物を仕留めるようで“スパイダー・キラー”と呼ばれ、街は震撼していました。
しかし一方で、「汚れた女たちを聖地から排除している」と、犯人を英雄視する市民もいたのです。
事件を覆い隠そうとする不穏な圧力のもと、女性ジャーナリストのラヒミは危険を顧みず、果敢に事件を追います。
そしてとうとうある夜、彼女は、家族と暮らす平凡な一人の男の心の底に潜んでいた狂気を目撃することになるのです……。

この事件当時イランに住んでいたというアッバシ監督は「作ろうと思ったのは連続殺人犯も同然の
社会についての映画だった。イラン社会に深く根付いているミソジニー=女性蔑視の風潮は、宗教や政治が悪いというわけではなく、単純にそういう文化として存在している」と話しています。
この作品を観ていると、当然のように女性記者のラヒミに同調してしまい、あまりの世の中の理不尽さにいつの間にか強く拳を握りしめていることに気づきます。
ラヒミ役のザーラ・アミール・エブラヒミは、イランで国民的女優として成功を収めていましたが、第三者によって私的なセックステープが流出されスキャンダルの被害者となり、フランスへ亡命。彼女が演じるラヒミもセクハラで失職を余儀なくされています。自身の体験に重なる役柄を不条理への怒りに基づく鬼気迫る演技で体現、多くの女優賞を受賞しました。

なんという衝撃!この一言に尽きます。観終わった後しばらく呆然としてしまいました。
特にラストシーンは恐ろしくもあり、イヤミスのような、なんとも言えない気持ちになりました。
いつまで恐ろしい連鎖が続くのか…恐ろしいと思っているのは私だけなのか?
宗教という核が入り混じり、何が正しくて何が間違っているのか、道徳観念がこんなにも違うのかと唖然としました。
多くの方にご覧頂き、現状を知って考えて欲しいです。そして誰かと話して欲しいのです。

『聖地には蜘蛛が巣を張る』
4 /14 金 新宿シネマカリテ、ヒューマントラストシネマ渋谷、 TOHO シネマズ、シャンテ 他全国順次公開

公式サイト:gaga.ne.jp/seichikumo
監督・共同脚本・プロデューサー:アリ・アッバシ『ボーダー 二つの世界』
出演:メフディ・バジェスタニ、ザーラ・アミール・エブラヒミ
原題:「Holy Spider 」/ 2022 年/デンマーク・ドイツ・スウェーデン・フランス/ペルシャ語/シネスコ/ 5.1 ch/ 118 分/字幕翻訳:石田泰子/デンマーク王国大使館後援 /映倫 R 15
配給:ギャガ
©Profile Pictures / One Two Films

最新番組ブログ
    パーソナリティ
    • ひろたみゆ紀
      ひろたみゆ紀
      ひろたみゆ紀

      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

    • 過去のホームページ
    • 中山秀征の有楽町で逢いまSHOW
    • 週刊 なるほど!ニッポン
    • ウィークエンド・ケアタイム 「ひだまりハウス」 ~うつ病・認知症について語ろう~