おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
2/5は、変わりゆく時代に翻弄される人々を圧倒的な映像美で描いた3本をご紹介。
2本目は、現代中国の農村改革の中で翻弄される夫婦の切なくも美しい物語
『小さき麦の花』
舞台は2011年、中国北西部の農村。貧しい農民ヨウティエと体に障害のある内気なクイイン。
お互い家族の厄介者だった二人は、見合い結婚をさせられます。
最初はぎこちなく、それでも互いを思いやり、力を合わせ、作物を育て、質素な家を作り、慎ましくもかけがえのない日々を重ねていく2人。
しかし、幸せな2人を、変わりゆく時代の波が飲み込んでいくのです…。
この作品は、本国中国で公開されると徐々にSNSで火が付き、都会の若い世代を中心に社会現象となる大ヒットを記録。興行収入20億円、動員300万人を超え、〈奇跡の映画〉とまで呼ばれるようになります。
監督は、これが長編6作目となる中国新世代、1983年生まれのリー・ルイジュン。
自分の故郷で、親戚や友人の出演で映画を撮っています。
主人公のヨウティエは、叔母の夫で、その叔母や父母、兄も出演。みんな演技上手なのが不思議!
クイイン役だけは、“国民の嫁”と呼ばれる人気女優ハイ・チンが演じています。
素朴で内気、障害のあるクイインをノーメイクで演じ、華やかな女優の顔とは別人でした。
この作品の特徴の一つは、植物や動物の成長周期に合わせて撮影されたということ。
例えば、主人公たちが飼っていた10羽の鶏も、実際にスタッフが卵から孵したからこそ、殻を割ろうとする力強く生命力あふれる姿も撮影できたのです。
そして特筆すべきは映像の美しさ。卵を例にとると、孵化させるため卵を段ボール箱に入れて電球を灯すのですが、箱に開けたいくつもの穴から漏れてくる温かい光がそれはそれは幻想的で美しいのです。
他のシーンでも、現実に起きることと、それにまつわる幻想的な描写がとてもロマンチックです。
周りからどんなに蔑まされても、自分は自分のできることを淡々とする…そんな二人だからこそ、愛が深まったのでしょうね。
土を耕し作物を育て、土から恵みを頂く2人の質素な生き方に尊さを感じます。自然と共に生きて行くことをいかに私たちが忘れているかということを思い出させてくれました。
真っすぐで、周りの人には思われないのに周りの人を思い、愚鈍なほどの美しさ…不寛容を生み出し、その不寛容に疲れてしまうという悪循環の中にいる現代に必要なのは、このような作品なのかもしれませんね。タイトルの意味が分かった時、愛おしさがこみ上げてきます。
『小さき麦の花』
2023年2月10日(金)より
YEBISU GARDEN CINEMA、ヒューマントラストシネマ有楽町ほか全国順次公開
公式サイト:https://moviola.jp/muginohana/
監督:リー・ルイジュン
出演:ウー・レンリン、ハイ・チン
原題:隠入塵煙/英語題:RETURN TO DUST/2022年/中国 /カラー/133分/ G
配給:マジックアワー、ムヴィオラ
©2022 Qizi Films Limited, Beijing J.Q. Spring Pictures Company Limited. All Rights Reserved.
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