おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
4/17は、独特の映像に心奪われる作品を2本ご紹介。

2本目は、美しい北欧の島で気づく自分の天職、そのひと夏の道のりを描いた
『ベルイマン島にて』

スティーヴン・スピルバーグやマーティン・スコセッシなど偉大な映画監督たちに多大な影響を与えた伝説的存在、スウェーデンの映画監督イングマール・ベルイマン。
彼の熱狂的な支持者の一人ミア・ハンセン＝ラブ監督が、ベルイマンがいくつかの作品を撮影し晩年を過ごした島＝ベルイマンの原風景と言われるスウェーデンのフォーレ島を舞台に、創作の世界で生きるカップルのひと夏の物語を作り上げました。

映画監督の夫婦クリスとトニーが、アメリカから遥々、バルト海に浮かぶ島フォーレ島にやってきます。
若いクリスは、その才能を認められて日が浅く、年の離れたパートナーのトニーは、名監督として広く人気を誇っています。
創作活動もお互いの関係も停滞している2人は、敬愛するベルイマンが数々の傑作を撮ったこの島でひと夏暮らして、インスピレーションを得ようと考えたのです。
やがて島の魔力がクリスに作用し、彼女は自身の脚本を書き始めます。「1度目の出会いは早すぎて、2度目は遅すぎて」実らなかった初恋がテーマ。結末がどうしても浮かばずに思い悩むクリスでしたが、島で見つけた新しい暮らし方や思いがけない出会いが、彼女の心を変えていくのです。

クリス役は、『ファントム・スレッド』で国際的に認められたヴィッキー・クリースプ。
島で暮らすうちに少しずつ変わっていく心模様、その変化の表情が素晴らしかったです。
トニー役は、『海の上のピアニスト』、このコーナーでもご紹介した『天才ヴァイオリニストと消えた旋律』の名優ティム・ロス。貫禄の演技でした。

実在の巨匠ベルイマンの人生、実際に多くの映画ファンが訪れ聖地となったフォーレ島、その島で展開される監督カップルのフィクション、そして、劇中劇として描かれるクリスの脚本のストーリー…現実と虚構が入り混じり、見ていると不思議な感覚に陥りますが、それでも、自分も一緒にフォーレ島でその物語を目の当たりにしているような気分になります。
それこそが、ベルイマンが愛したフォーレ島の魅力なのでしょうか？

どこまでも続く青い空と海、豊かな緑、悠久の時に削られてきた海辺の岩、白い壁にレンガ色の屋根の家、小高い丘の上の風車…まるで絵本、映画のワンシーンにふさわしい風景です。
そして、大きな自然は明るさよりもどこか哀愁を含んでいて、それがまたそそるんですよね。
実は、この映画監督カップルには、監督自身の経験も投影されています。
美しい景色の中で紡がれる現実と虚構のストーリー、彼女はどんな人生を選ぼうとしているのか？最後のシーンに心奪われます。

『ベルイマン島にて』

4月22日、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー

公式サイト：映画『ベルイマン島にて』公式サイト (bergman-island.jp)

監督・脚本：ミア・ハンセン＝ラブ
出演：ヴィッキー・クリープス、ティム・ロス、ミア・ワシコウスカ、アンデルシュ・ダニエルセン・リー
原題：BERGMAN ISLAND│2021年│フランス・ベルギー・ドイツ・スウェーデン│英語│113分│カラー│スコープ│5.1ch│日本語字幕：平井かおり│映倫区分：G（一般）
提供：木下グループ　配給：キノフィルムズ　　後援：スウェーデン大使館
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