ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2022.03.06

サンデー早起キネマ『林檎とポラロイド』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
3/6は、1本の中にたくさんの思いが込められた作品を2本ご紹介。

2本目は、ギリシャのクリストス・ニク監督のデビュー作にして、名女優ケイト・ブランシェットがエグゼクティブ・プロデューサーに名乗りを挙げた傑作
『林檎とポラロイド』

奇想天外な設定に驚きながらも、ストーリーに引き込まれ、妙な可笑しさと哀愁に心惹かれるとっても不思議な作品です。

舞台は、突然、記憶喪失になってしまう奇病が蔓延する世界。
ある夜、バスの中で目覚めた男は、記憶を失っていました。覚えているのは林檎が好きということだけ。
入院した男に医者が勧めたのは、失った記憶は諦めて新たな記憶を作るプログラム「新しい自分」。当座のお金と住む家を与えられた男は、毎日、大好きな林檎を食べ、送られてくるカセットテープに吹き込まれた様々なミッションをこなしていきます。自転車に乗る。仮想パーティで友達を作る。10mの飛び込み台からジャンプする…など。その新たな経験をポラロイドカメラで記録するのです。
ある日、男は、ホラー映画を見るミッションで、同じプログラムに参加している女に出会います。言葉を交わし、デートを重ね、仲良くなっていく2人。
そして、毎日のミッションをこなし新しい日常にも慣れてきた頃、買い物中に住まいを尋ねられ、男の口から不意にでたのは以前住んでいた住所。記憶が戻ったのでしょうか?
新しい思い出を作り新しい自分になるためのミッションが、男の過去を徐々に紐解いていくのです。

記憶喪失になる病気が流行るってすごい設定ですよね。近未来的なのですが、映像もとっても特徴的で、登場するのは、ポラロイドカメラやカセットテープ、レコードなどノスタルジックなものばかり。
ポラロイドに合わせて画角を4:3のアスペクト比にしたり、色調もポラロイドに近づけたために16ミリフィルムで撮影されたかのようです。

主演のアリス・セルヴェタリスの静かな演技がとってもいいんですよね。まじめなんですが、クスっと笑ってしまう可笑しさと、切なさや哀愁をまとっているような雰囲気についつい目が行ってしまいます。

記憶ってなんなんだろう?忘れたら自分じゃなくなるのか?誰かの記憶に残ることは自分を形作っていることになるのか?哀しい記憶だけ消すことはできるのか?など、記憶を巡るいろんなことを考えてしまいます。
そして、テクノロジーと記憶についても。コンピューターやスマホに自分の記憶や思い出を託してしまう私たちの脳はかなり“怠け者”になっています。最近物忘れがどんどん酷くなっているのもそのせいなのかな…?
哀愁とユーモアのバランスが絶妙!癖になること間違いなしです。ぜひご覧下さい。

『林檎とポラロイド』

3月11日(金)より、ヒューマントラストシネマ有楽町、 新宿武蔵野館ほか全国順次ロードショー!

公式サイト:林檎とポラロイド (bitters.co.jp)

©︎2020 Boo Productions and Lava Films

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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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