ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2021.07.11

サンデー早起キネマ『83歳のやさしいスパイ』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
7/11は、片隅の小さな存在が大きな人生の意義を教えてくれる作品を2本ご紹介しました。

2作目はチリの作品。
実際の新聞広告から生まれた奇跡のドキュメンタリー
『83歳のやさしいスパイ』

この作品を観ていると、あまりにも現実離れというか、現実だとは思えず、ドキュメンタリー映画だということを忘れてしまいます。
さてさて、その新聞広告とは「高齢男性1名募集。80歳から90歳の退職者求む。長期出張が可能で、電子機器を扱える方」というもの。
この不思議な新聞広告を見て何人もの男性がA&A探偵事務所にやってきます。

面接を勝ち抜いて選ばれたのは、4カ月前に妻を亡くした83歳のセルヒオ。
彼に課せられた任務は、なんと老人ホームへの潜入捜査でした。施設に入居している母親ソニアが、「虐待を受けたり、モノを盗まれているのではないか?」と、心配した家族が、探偵事務所に捜査を依頼してきたのです。
携帯電話やペン型カメラ、眼鏡に取り付けたカメラの使い方などを一から学び、スパイとなったセルヒオは、誰にも怪しまれずに老人ホームに潜入します。
ターゲットであるソニアを見つけマークし、探偵事務所に報告しなければならないのですが、捜査もままならず、写真撮影やメール送信などに悪戦苦闘!
入居者や施設の職員にバレるのでは?と、観ているこちらがヒヤヒヤします。
でも当のセルヒオは、飄々としながらも、自分の考えをしっかりもっている本当に魅力的な優しい紳士。
入所者の話を親身に聞いてあげたり、困った人に手を貸してあげたりして、たちまち人気者になります。誕生日会を開いてもらったり、人気コンテストで優勝したり…セルヒオに恋する女性まで出てきます。
そんな日常の中で、セルヒオは無事潜入捜査を終えることができるのでしょうか?

監督は、探偵事務所で働いたことがあるという女性マイテ・アルベルディ。
入居者がカメラを意識しないように2週間前から施設に入り、仲良くなってから撮影に挑みました。なんと3か月間の長丁場。施設の全面協力で入所者の本音や実情を知ることができました。
本当にみんなが自然で、私たちも一緒に施設の中にいるような気分になります。

ドキュメンタリーだということを忘れるといいましたが、脚本があるんじゃないの?と思う程、本当に、愉快な出来事が次から次へと勃発し、コメディ映画のようにクスっと笑えちゃうのです。
でも、それだけではありません。全世界に共通する現代社会の現実も見せつけられます。超高齢化社会の日本にとっては、身近な問題です。介護する方もされる方もそれぞれの立場、言い分があります。でもそれだけでは片づけられない心の問題=孤独をどうしたらいいのか?
この作品を観た後は、家族について、自分が今できることは何か、真剣に考えるようになります。
セルヒオと同世代の方から、お孫さん世代まで、幅広くご覧頂きたい作品です。

 

『83歳のやさしいスパイ』

7月9日(金)よりシネスイッチ銀座ほか全国順次公開

公式サイト:83spy.com

監督・脚本:マイテ・アルベルディ 出演:セルヒオ・チャミー ロムロ・エイトケン
2020年/ドキュメンタリー/チリ・アメリカ・ドイツ・オランダ・スペイン/89分/カラー/ビスタ/5.1ch
日本語字幕:渡邉一治 
配給・宣伝:アンプラグド 
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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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