ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2021.05.17

サンデー早起キネマ『やすらぎの森』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
5/16は、心に深い傷を負っても、何歳になっても、人は再生できる…希望が心に沁みる物語を2本ご紹介しました。

2本目は、カナダから届いた愛と再生の物語
『やすらぎの森』

         

80代の男女を主人公に、人生の晩年をいかに生きるかというテーマを情緒的に綴った作品です。

舞台は、カナダ・ケベック州の南西部に広がる緑が美しい深~い森の中。
年老いた3人の男性が、自らの存在を消すようにして別々の小屋で隠遁生活を送っています。
愛犬たちと一緒に湖で泳いだり、ギターをつま弾いたり、静かに自由気ままに暮らしていました。
3人はそれぞれの理由で、社会に背をむけ世捨て人となったのです。
そんな彼らの前に、ある日、80歳の美しい女性ジェルトルードが現れます。
ちょっと変わったところがあった彼女は、少女時代に厳格な父親に無理矢理精神科療養所に入れられ、60年以上も外界と隔絶した生活を強いられてきたのです。
世捨て人たちは、療養所に戻ることを拒み森にやってきたジェルトルードを受け入れます。
そして、マリー・デネージュと新しい名前をつけて新たな人生を歩み出した彼女は、澄み切った森の空気を吸い込みながら、日に日に活力を取り戻していきます。
しかし、その穏やかな森の日常を揺るがす緊急事態が起こり、彼らは重大な決断を迫られていくことになるのです。

80代、人生の締めくくりのような晩年を、どう生きていくのかは自分の選択です。
年齢的に体の状態も「死」に近いからこそ、見えてくるものも違うのかもしれません。さらに、思わず深呼吸したくなってしまうほどの深い森の中だからこそ、なのかもしれません。
この作品を観て、心の真ん中がシンとして、綺麗になるような重くなるような不思議な感じがしました。
みんな全く別々の理由で、世の中に背を向け世捨て人となりましたが、その理由も切ないんですよね。心が純粋な人は、周りと折り合いが付けられずに自分の殻の中に閉じこもってしまうのかもしれません。
でも、それでも人生の晩年を、肩を寄せ合って一緒に生きていける仲間に出会えたことは、とても幸せなことだと思いました。

ジェルトルードがマリー・デネージュと名前を変え、だんだん生き生きと輝いていく姿が印象的です。
演じたのは、残念なことにこの作品が遺作となってしまったアンドレ・ラシャベル。“ケベックのカトリーヌ・ドヌーヴ”と言われる彼女は、気品にあふれ見とれるほどの美しさ。
初めて湖で泳いだり、初めて恋に落ちたり…初めてに驚く初々しい姿がとっても魅力的で、見ているこちらもつい口元が緩んでしまいました。
心に傷をかかえた世捨て人たち、80代の男女が新たな人生を踏み出す人生讃歌は、きっと、「あなたのこれからの人生が強くあるように」いく先を照らしてくれることでしょう。

『やすらぎの森』

5月21日(金)、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

公式サイト:yasuragi.espace-sarou.com

監督・脚本:ルイーズ・アルシャンボー 原作:「Il Pleuvait des Oiseaux」ジョスリーヌ・ソシエ著 
出演:アンドレ・ラシャペル、ジルベール・スィコット、レミー・ジラール
2019/カナダ/フランス語/スコープサイズ/カラー/5.1ch/126分/映倫:G
原題:Il Pleuvait des Oiseaux 英題:And the Birds Rained Down 日本語字幕:手束紀子 
後援:カナダ大使館、ケベック州政府在日事務所 配給・宣伝:エスパース・サロウ
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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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