ひろたみゆ紀のサンデー早起き有楽町

2021.05.11

サンデー早起キネマ『ファーザー』

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
5/9は、演技派俳優陣が素晴らしい邦画と洋画を2本ご紹介しました。

2本目は、今年度のアカデミー賞で、名優アンソニー・ホプキンスが2度目の主演男優賞に輝いた作品
『ファーザー』

誰にでもいつかは訪れる人生の夕暮れと揺れる親子の絆を描く感動作です。
原作は、2012年、パリでの初演で大成功をおさめ、世界30か国以上で上演され、日本でもなんと(今日1本目にご紹介した作品に出ている)橋爪功さんが主役を務め大絶賛された舞台。
ついに映画化されたのです。

ロンドンで独り暮らしの81歳のアンソニーは、記憶が薄れ始めていましたが、娘のアンが手配する看護人を「誰の助けも必要ない」とことごとく拒否してきました。
そんな折、アンに「新しい恋人がいるパリに引っ越す」と告げられ、ショックを受けるアンソニー。
しかしそれが事実なら、アンソニーのアパートに突然現れ、アンと結婚して10年になるというこの見知らぬ男は一体誰なのか?
なぜ彼は、このアパートが自分とアンの家だと主張するのか?財産を奪う気なのか?
そして、アンソニーのもう一人の娘・最愛のルーシーはどこに消えてしまったのか?
現実と幻想の境目が崩れていく中、最後にアンソニーがたどり着いた真実とは?

『羊たちの沈黙』に続く2度目の主演男優賞に大きく頷けるものすごい演技のアンソニー・ホプキンス!老いによって記憶を失っていく戸惑いや猜疑心が全て、些細な仕草や表情、そして瞳に現れるんです。「大変だったのはセリフの暗記位で、実の父親を思い出しながら演じたので実に簡単だった」といいます。
娘アンの、父親の世話と自分の人生の間で揺れる演技も素晴らしかったです。演じたのは、『女王陛下のお気に入り』でアカデミー賞・主演女優賞を受賞したオリヴィア・コールマン。
2人のオスカー俳優が奏でる親子のやり取りは、可笑しくもあり切なく、イラっと来るけど優しい。老いていく親世代とそれを見守る子世代の現実を見ているようです。

認知症の視点から描いた作品はとても画期的。記憶と時間が曖昧になって混乱していく様子は、迷宮に入りこんでいくようで、とてもスリリングです。
私たちはアンソニーと共に、認知症の世界を初体験していくことになるのです。何が何だかわからず戸惑っているうちに、グイグイ引き込まれていきます。
そして、思いがけない結末に心揺さぶられ、全てが明かされた後、もう一度最初から見直したくなるのです。
認知症に戸惑い変わっていく父と、そんな父を見ながら、自分の人生か父の世話かで悩む娘の姿に誰でも自分を重ねずにはいられなくなります。
老いによる思い出の喪失と親子の揺れる絆、かつてない映像体験に心揺さぶられる傑作、是非体感して下さい。

『ファーザー』

5月14日(金)、TOHOシネマズ シャンテ他 全国ロードショー

公式サイト:thefather.jp

監督:フロリアン・ゼレール (長編監督一作目)
脚本:クリストファー・ハンプトン(『危険な関係』アカデミー賞脚色賞受賞)
フロリアン・ゼレール
原作:フロリアン・ゼレール(『Le Père』)
出演:アンソニー・ホプキンス(『羊たちの沈黙』アカデミー賞主演男優賞受賞)
   オリヴィア・コールマン(『女王陛下のお気に入り』アカデミー賞主演女優賞受賞)
   マーク・ゲイティス(「SHERLOCK/シャーロック」シリーズ)
イモージェン・プーツ( 『グリーンルーム』)
   ルーファス・シーウェル( 『ジュディ 虹の彼方に』)
   オリヴィア・ウィリアムズ( 『シックス・センス』)

2020/イギリス・フランス/英語/97分/カラー/スコープ/5.1ch/原題:THE FATHER/字幕翻訳:松浦美奈
配給:ショウゲート

© NEW ZEALAND TRUST CORPORATION AS TRUSTEE FOR ELAROF CHANNEL FOUR TELEVISION CORPORATION TRADEMARK FATHER LIMITED F COMME FILM CINÉ-@ ORANGE STUDIO 2020

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      ひろたみゆ紀

      6月25日生まれ 栃木県出身 特技:韓国語 趣味:DIY
      元NHK宇都宮放送局のキャスター レディオベリー(エフエム栃木)アナウンサー  2001年からフリーに。
      以降、ニッポン放送でアシスタントやリポーターを務めるなどフリーアナウンサーとして活動。

      2009年、語学留学のため、渡韓。
      卒業後は現地で日本語を教える傍ら、2011年4月より翌年6月まで
      レディオベリーの韓国情報番組『K-ONECT』のパーソナリティを務めていた。
      韓国語と韓国の生活文化を身につけ、2012年9月に帰国。

      現在はニッポン放送アナウンス部に所属。

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