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サンデー早起キネマ・番外編『巡礼の約束』

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番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂く「サンデー早起キネマ」の番外編です。
オンエアはできませんでしたが、観て頂きたい作品を取りあげます!

今回は、チベットの圧倒的な景色の中で描かれる約束の物語
『巡礼の約束』



私たちがよく知らないチベットの仏教文化に触れることができます。
イスラム教のメッカ巡礼・ヒンドゥー教のガンジス河への巡礼など、“巡礼”とは遠方にある聖地や聖域に参詣する宗教的な行いです。
チベット仏教で有名な巡礼地の一つが聖地ラサ。
この物語は、それぞれの思いを胸にラサへ向かう家族の姿を描いています。

主人公は、ロルジェとウォマの夫婦。
ウォマは夫と死別し、ロルジェと再婚。実家に前夫とのひとり息子ノルウを預けています。
そんなウォマは、ある理由から突然「五体投地でラサへ巡礼に行く」と決心します。
“五体投地”とは、数歩進むたびに跪き額を大地につけて祈り、また起き上がって数歩進むというように半年以上もかかる過酷なものです。
ロルジェは反対しますが、ウォマの決心は固く引き下がりません。
それでもウォマが巡礼の旅を始めると、やがて息子のノウルが加わり、夫のロルジェも加わります。
言葉少ないなかでも少しずつ結びついていく三人。
ある夜、ウォマは巡礼の旅に出た理由をロルジェに伝えます。それは思いもかけないことでした。
そして、さらに追い討ちをかけるような出来事が…果たして、ラサへの巡礼の旅はどうなるのでしょうか。

ウォマが巡礼の旅に出る理由は、もしかしたら日本人にはなかなか理解し難いかもしれません。それでも、死者と共に生きるチベット仏教の心が伝わり、いつのまにかウォマを応援したくなるのです。
そして、後悔や嫉妬、悲しみや葛藤を乗り越えようとする家族の姿に共感し、ともに巡礼の旅をしているような心持ちになります。

ロルジェを演じたのはこの作品を企画したチベット人歌手ヨンジョンジャ。
素朴で人が良いけれど嫉妬には勝てない二度目の夫の心情が手に取るようにわかる演技でした。
ある約束を果たそうとする信念の人ウォマ役は、旅の出発点・ギャロン地域出身のニマソンソン。
この作品の演技が認められて各映画祭で最優秀女優賞を受賞しています。
そして特筆すべきは、1000人以上の中からノルウ役に選ばれたスィチョクジャ。小学校4年生。難しい思いを抱えている役柄を初めてとは思えない素晴らしい演技で乗り切りました。
メガホンは、チベット人監督として日本で初めて商業公開された『草原の河』のソンタルジャ監督。
チベットの雄大な景色を背景に、チベット人として、チベット文化に根差した作品を作り上げました。

「容易に知ることができない文化を追体験できるのが映画の醍醐味の一つである」ということを確認させてくれた作品でした。そこからお互いを理解しようという気持ちの種が産まれ、心の中で大きな樹に育っていくのではないでしょうか。
そして、「人間の喜怒哀楽や欲望は、世界中どこでもそう変わらないものである」ということも実感できます。

『巡礼の約束』

2020年2月8日(土)より岩波ホールほか全国順次ロードショー

公式サイト:http://moviola.jp/junrei_yakusoku/ 

監督:ソンタルジャ
プロデューサー:ヨンジョンジャ(容中(ロンジョン)爾(アル)甲(ジャ))
脚本:タシダワ、ソンタルジャ
出演:ヨンジョンジャ(容中(ロンジョン)爾(アル)甲(ジャ))、ニマソンソン、スィチョクジャ
2018年|中国語題:阿拉姜色|英語題:Ala Changso|中国映画|109分|シネマスコープ|5.1chサラウンド字幕:松尾みゆき|字幕監修:三宅伸一郎|配給:ムヴィオラ 
©GARUDA FILM

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