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サンデー早起キネマ『コンプリシティ 優しい共犯』

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番組でご紹介した作品をブログでも味わって頂く「サンデー早起キネマ」

今回は、日本の問題点を描きながらもどこか優しい眼差しを持つ作品『コンプリシティ 優しい共犯』です。

主人公は、技能実習生として来日しましたが、劣悪な職場環境から逃げ出し、不法滞在者となってしまった中国人青年チェン・リャン。彼は他人に成りすまし、お蕎麦屋さんで働くことになります。
口数が少なく不器用な蕎麦屋の主人・弘は、実の息子との関係も悪く心に孤独を抱えていました。
厳しくも温かい弘の背中に父親を重ねるチェン・リャンと他人に成りすました不法滞在者であるという嘘を知らずに情を深めてゆく弘…2人の間には親子のような絆も生まれますが、儚い嘘の上に築いた幸せは長く続きません。
チェン・リャンを追う警察の手が迫ります!
その時、2人はお互いのために、ある決断をするのです。

この今現在の日本の問題の一つに鋭く迫った作品を製作したのは、近浦啓監督。
初めての長編作品にして、トロント、ベルリン、釜山などの国際映画祭で高い評価を得ました。
作品を製作しようとしていた2016年、日本では1年間におよそ6千人の技能実習生が実習先の会社から失踪していたという事実がありました。
“日本で教育を受けながら働いてお金も稼げる”と母国で言われて来てはみたものの、実際は低賃金・長時間労働で耐えられないなどの理由があります。
「期待と現実のギャップ」は、抽象化すると自分の物語でもあるという監督。確かに期待と現実のギャップは、多かれ少なかれ誰にでもありますよね。そして、この作品は、そのギャップを冷たく突きつけるのではなく、“まだまだ世の中は捨てたものじゃない”という温かさを教えてくれるのです。

チェン・リャンを演じたのは中国の実力派俳優ルー・ユーライ。どうしようもない現実に対する切なさと憤りが鋭く悲しい瞳の中に見えました。
厳しく温かい孤独を抱えた蕎麦屋の主人・弘は藤竜也さんが演じました。素晴らしかったです。演技は言わずもがな、そばを打つ佇まい、手元のアップ…本当にそば職人そのものでした。

自分の居場所を見つけようと必死なチェン・リャンを大きな愛で包む弘…切ないけれど温かい作品。
ニュースでしかなかった日本の現実が身近な問題として認識されます。


『コンプリシティ/優しい共犯』

2020117 ()より新宿武蔵野館にてロードショー

公式サイト: https://complicity.movie/

スタッフ&キャスト:ルー・ユーライ 藤竜也 赤坂沙世 松本紀保 バオ・リンユ シェ・リ ヨン・ジョン 塚原大助 浜谷康幸 石田佳央 堺小春 / 占部房子
監督・脚本・編集:近浦啓
主題歌:テレサ・テン「我只在乎ニィ(時の流れに身をまかせ)(ユニバーサル ミュージック/USMジャパン)
製作:クレイテプス Mystigri Pictures 制作プロダクション:クレイテプス 配給:クロックワークス 
2018/カラー/日本=中国/5.1ch/アメリカン・ビスタ/116

©2018 CREATPS / Mystigri Pictures

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