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サンデー早起キネマ『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』

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おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
3/21は、今までにない世界観が広がる話題の映画を2本ご紹介しました。

2本目は、第21回東京フィルメックスで審査員特別賞に輝いた作品。
独特で不思議な世界をユーモアを持って描きながらも、私達一人一人が構成している社会の愚かさや恐ろしさを鋭く突いた
『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』

舞台は、いつの時代でもない架空の小さな町・津平町。
一本の川を挟んだ向かいの町と「朝9時から夕方5時まで」規則正しく戦争をしています。
川の向こうの太原町をよく知る人はいません。でも「とてもコワイ。らしい。」のです。
主人公の露木は生真面目な兵隊さん。毎朝、町を行進する楽隊の音楽で目覚め、川岸に出勤。
9時きっかりに向こう岸に鉄砲を撃ち始め、午前中は50発位、午後はぴったり5時まで、80発ほど撃てば叱られないのです。

お昼ご飯は気まぐれなおばさんの定食屋で食べ、夕方は物知りなおじさんの店で煮物を買って帰り、食べて寝るという四角四面の生活を送っています。
ある日、露木は音楽隊への人事異動を言い渡されます。
家でホコリをかぶったトランペットを引っ張り出したはいいものの、明日からどこへ出勤すればいいのか…音楽隊の兵舎を探さなくてはなりません。
そんな折、ひょんなことから出会ったのは、川の向こう岸から聞こえてくるラッパの音 ♪
その音色に少しずつ心惹かれていく露木。
一方、町では、新しい部隊と新兵器がやってくるという噂が広まります。
目的を忘れた全く知らない相手との戦争は、どうなってしまうのでしょうか?

主人公・露木を演じたのは、ドラマに映画に大活躍、この作品が映画初主演の前田滉さん。
からくり人形のようなカクカクした生真面目なキャラクターを見事に演じました。
他に、露木の同僚・藤間役は今野浩喜さん、楽隊の指揮者にきたろうさん、定食屋のおばさんは片桐はいりさん、物知りなおじさんに嶋田久作さん、肝心なことは忘れてしまう町長は石橋蓮司さんなど、個性派の役者さんたちが勢ぞろいして、淡々としたユーモラスな不思議な物語を繰り広げるのです。

監督は、池田暁さん。登場人物の話し方に抑揚がなく、顔の表情もあまりないので、何を考えているのか、感情が読み取りにくい演出でおなじみ。
見ている人が、その人なりの解釈ができる余白を大切にしているからこその演出法です。
だから、設定もいつの時代でもどこの場所でもない…でも、私達の日常と地続きであることは間違いありません。
だって、“川の向こうがよくわからないから恐れている人々”の暮らしには、意味があるとは思えない戦争、なんでも思い通りになる権力、男尊女卑の思想など、私たちと同じ悩みが溢れているのですから。
叱られないようにやることはやる、疑問を持たず考えようとしない人々があふれる社会が、淡々と行進のように進む先には何がおきるのか?
笑ってるうちにとんでもない方向に進む物語、面白いから余計にコワイ!
でも本当にコワイのは、この町が私たちの町かもしれないと気づいてしまった時です…。

『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』

3月26日(金)より、テアトル新宿ほか全国順次ロードショー!

公式サイト:映画『きまじめ楽隊のぼんやり戦争』オフィシャルサイト (bitters.co.jp)

前原滉、今野浩喜、中島広稀、清水尚弥、橋本マナミ、矢部太郎、片桐はいり、きたろう、嶋田久作、竹中直人、石橋蓮司
監督・脚本・編集・絵:池田 暁
企画・製作:映像産業振興機構(VIPO) 制作協力:東映東京撮影所 共同事業幹事:カルチュア・エンタテインメント
配給:ビターズ・エンド
文化庁委託事業「ndjc:若手映画作家育成プロジェクト2019」長編映画の実地研修完成作品
©2020「きまじめ楽隊のぼんやり戦争」フィルムプロジェクト

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