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サンデー早起キネマ『すばらしき世界』

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おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
2/7は、驚くべき実話をもとにした2作品(+1作品)をご紹介しました。

1本目は、実在した男をモデルに、社会と人間の今をえぐる西川美和監督の問題作
『すばらしき世界』

原作は、佐木隆三さんのノンフィクション小説「身分帳」。
身分帳とは、受刑者の経歴を細かく記した個人台帳のようなものです。
原作に惚れ込んだ西川監督が、初めて、原作がある長編映画に挑みました。
30年程前の小説の時代設定を現代に置き換え、実在の人物をモデルとした主人公の数奇な人生を通して、人間の愛おしさや痛々しさ、社会の光と影を炙り出す問題作です。

主人公は、下町の片隅でひっそり暮らす三上(役所広司さん)。
見た目は強面で、短気で喧嘩っ早いのですが、心根は、真っすぐで優しく、困っている人を放っておけない質です。
人生の大半を刑務所で過ごし、今回は殺人を犯して13年ぶりに出所したばかりでした。
社会のレールから外れながらも、周りの人たちに支えられ、「今度こそは!」と、何とかまっとうに生きようと悪戦苦闘する三上。
そんな三上のドキュメンタリー番組を作ろうと目論んだやり手プロデューサーの吉澤(長澤まさみさん)は、作家志望の元テレビマンの津乃田(仲野太賀さん)に、三上の取材を命じます。
やがて津乃田は、三上の壮絶な過去と現在の姿を追ううちに、思いもよらないものを目撃していくことになるのです…。

ラストシーンは、「この気持ち、どうしたらいいんだぁ~!」と空に向かって叫びたくなりました。
見終わってからも、ずっとずっと心に残る…いえ、残ってしまう壮絶なドラマでした。
人間って、こんなにも優しく、こんなにも残酷で、こんなにも愛おしいのか。
人間の本質をえぐり取って「ほらっ!」って見せられた気分です。
そう思えるのも、すばらしき役者さんたちがあってのこと。
三上は、正しいことは正しい、可哀そうな人は助ける、腹が立つと殴る…単純・純粋・真っすぐなのですが、今の世の中、そんな風に生きることは可能なのでしょうか?そんな三上の喜怒哀楽が、切なく寂しく…役所さんが余すところなく三上のすべてを見せてくれました。
そしてカメラを手に三上を追い、三上と見ている私たちをつなぐ津乃田を演じた仲野さんも素晴らしかったです。人懐っこい笑顔を見せたかと思えば突然ぶち切れる凶暴さにドン引きしながらも、三上にグイグイ引き込まれていく津乃田と一緒に、私たちも三上に感情移入していきます。
他に、橋爪功さん、梶芽衣子さん、六角精児さん、北村有起哉さん、長澤まさみさんと、錚々たるメンバーがそろいました。

“すばらしき世界”というタイトルの妙!…西川監督、凄い方です!
昔、「誰も見ていなくても、お天道様が見てくれている」と祖母や両親に言われました。
自分が正しいと思ったことをやっていこうと思いましたが、いつの間にか、周りの目を気にしたり、自分は正しいと思っていることが世の中とズレていることに気づいてしまったり、正直に生きられなくなっている自分がいました。
私たちが今いるのは“すばらしき世界”なのでしょうかね…。
どんな世界がすばらしいのか?スクリーンの中にいる三上に問いかけられました。

『すばらしき世界』

2021 年 2 月 11 日(木・祝)全国公開

公式サイト:subarashikisekai-movie.jp

役所広司
仲野太賀 六角精児 北村有起哉 白竜 キムラ緑子
長澤まさみ 安田成美 / 梶芽衣子 橋爪功
脚本・監督:西川美和
原案:佐木隆三著「身分帳」(講談社文庫刊)
配給:ワーナー・ブラザース映画
©佐木隆三/2021「すばらしき世界」製作委員会

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