• Facebook
  • Twitter
  • LINE

サンデー早起キネマ『天国にちがいない』

  • LINEで送る

おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
1/31は、2つの世界を描いた三つの国の三作品をご紹介しました。

2本目は、現代のチャップリンと評されるエリア・スレイマン監督・主演作品
『天国にちがいない』

パレスチナ系イスラエル人で、イエスの故郷ナザレで生まれたエリア・スレイマン監督は、中東紛争やパレスチナ問題をテーマにしながらも、独特のユーモアで世界に笑いの渦を巻き起こし、チャップリン、ジャック・タチ、バスター・キートンなど偉大な喜劇王達とも比べられています。
この作品は、カンヌ国際映画祭で特別賞と国際映画批評家連盟賞をW受賞しました。
スレイマン監督自身が、本人役で主演もしています。
あまりセリフがないので、誰が見ても分かり易く、ユーモアあふれる描写にほっこりして、思わず「ぷぷっ!(^m^)」っと笑ってしまうのですが、そこにはとても深い思いが込められているのです。

地元ナザレで、近所の人たちや行く先々で出会う人々の行動に驚かされ、やれやれといった毎日を送っていた映画監督エリア・スレイマンは、新作映画の企画を売り込むため、そして新たなる故郷を探すため、ナザレからパリ、ニューヨークへと旅をすることになります。

パリでは、おしゃれで華やかな景色に圧倒される一方、次から次へと事件が起きる街の喧騒に驚かされます。
やがてNYに着いたスレイマンは、初めて言葉を発するのです!
でも、ここでも唖然とすることばかり…。

果たしてスレイマンの新作映画の企画は通るのでしょうか?
そして新たなる故郷は見つかるのでしょうか?

この作品でスレイマンがしゃべるのはたった二言だけ。何をしゃべるのか?注目、いえ注耳です。
あとは、真っすぐな瞳で、目の前で起きていることをただただじっと見ているのです。
怒りもせず、文句も言わず、ニコリともせずに…淡々と。

次から次へと可笑しなことが起こる周りのワチャワチャとした喧騒と、それを無表情に受け入れるスレイマンの対比に、つい笑ってしまうのですが、笑った後に、ああ…と気づくことがあるのです。
この作品はスレイマンのパレスチナへの愛であり、それはすなわち世界への愛なのだと。
パレスチナで起きていることは、同じように世界のどこででも起きているのですから。

私たちも、スレイマンのように愛ある優しいまなざしで、身の周りを見てみませんか?
落ち着いて淡々と…。
そして起きている出来事を、まずは受け入れてみませんか?
もしみんながそうなったら、少しずつでも世界が変わるかもしれない…そんなことを思ってしまいました。

この世界は、かくも可笑しく愛おしい…。
『天国にちがいない』

2021年1月29日(金)、
ヒューマントラストシネマ有楽町、新宿武蔵野館ほか全国順次公開

公式サイト:tengoku-chigainai.com

監督・脚本:エリア・スレイマン『D.I』 
出演:エリア・スレイマン、ガエル・ガルシア・ベルナル、タリク・コプティ、アリ・スレイマン
2019年/フランス・カタール・ドイツ・カナダ・トルコ・パレスチナ/102分/シネスコ/5.1ch/
言語:英語、フランス語、スペイン語、アラビア語/原題:It Must Be Heaven /日本語字幕:堀池 明/
提供:ニューセレクト・クロックワークス/配給:アルバトロス・フィルム/クロックワークス
© 2019 RECTANGLE PRODUCTIONS – PALLAS FILM – POSSIBLES MEDIA II – ZEYNO FILM – ZDF – TURKISH RADIO TELEVISION CORPORATION

ニッポン放送の番組一覧

他の番組を見る >