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サンデー早起キネマ『羊飼いと風船』

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おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
1/24は、三者三様、3つの国の全く違うテイストの物語を3本ご紹介しました。

2本目はチベットの作品。
変わりゆく時代の狭間で生きる人々の葛藤の物語
『羊飼いと風船』

『羊飼いと風船』というタイトルを見ると童話のような牧歌的な物語が始まりそうですが、時代の大きな流れに翻弄される人々を描いているとても深い作品なのです。
監督は、作家でもあるペマ・ツェテン氏。
“チベットの今”を浮き彫りにする作品を次々に発表、国内外で高い評価を得ています。
東京フィルメックスの常連ですからご存知の方もいらっしゃるでしょう。『羊飼いと風船』で見事3度目の最優秀作品賞に輝き、日本劇場初公開作品となりました。

この作品について監督はこう話しています。
「チベットの人々は、人間の魂を不滅のものとして崇め、生まれ変わり(輪廻転生)を信じている。その魂が現実と衝突した時の、人間の困難の物語を紡ぎたかった」と。

その物語の主人公は、神秘の地・チベットの大草原で羊の牧畜を営むお爺ちゃんと若い夫婦、そして3人の息子たち…3世代の家族です。
昔ながらの素朴で慎ましい生活を送っていますが、交通手段が馬からバイクに代り、テレビや携帯電話の普及など、近代化によって、受け継がれてきた伝統や価値観が変わり始めていました。
そんなある日、子供達のあるいたずらによって、家族の間にさざなみが立ち、波紋が広がっていきます…。

亡くなった人が誰かに生まれ変わるという考え方はチベット独特だと思いますが、死ぬこと、生まれること、そして“産まれる”を司る性について、深く考えさせられます。
映画にもでてきますが、中国はチベットにも家族計画を取り入れ、3人目からは罰金が科せられるのです。
チベットに根付いている宗教と相容れない近代化の波。
そして、長い間伝統的な役割を果たしてきた女性達が選択を迫られる新しい決まり事や女性の心の自立。

時代に翻弄される家族のジレンマを時にユーモアを込めて紡ぎ出し、広大な草原、厳しい土地で生きる人間の逞しさを圧倒的な映像美で表現しています。
余韻を残す美しいラストシーンを観て考えてしまいました。
家族が選ぶのはどんな道なのだろう?
そして、自分ならどうするだろう?と…。
日常生活に忙殺されがちな今、もう一度、立ち止まって考えてみませんか?

『羊飼いと風船』

1月22日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次ロードショー!

公式サイト:映画『羊飼いと風船』オフィシャルサイト (bitters.co.jp)

配給:ビターズ・エンド
英題:BALLOON 原題:気球 字幕:齋藤敦子 字幕監修:星泉
102 分|中国| 1.85:1(ビスタ)|チベット語|カラー| DCP | 2019 年
© 2019 Factory Gate Films. All Rights Reserved.

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