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サンデー早起キネマ『この世界に残されて』

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おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
12/20は、12/18に公開された作品を3本ご紹介しました。

2本目も、“第二次世界大戦後の世界”を描いた作品です。
ヨーロッパ・ハンガリーから届いた
『この世界に残されて』

戦時中、ハンガリーでは、およそ56万人ものユダヤ人がナチス・ドイツに殺害されたといわれています。
ホロコーストを描いた作品は数々ありますが、この作品は、ホロコーストそのものではなく、ホロコーストが人々の心に与えた影響やトラウマ、癒しに重点を置いてます。

舞台は戦後1948年のハンガリー。
主人公は、ホロコーストを生き延びたものの、家族を失ってしまった16歳の少女クララ。
クララはある日、寡黙な医師、42歳のアルドと出会います。
言葉を交わすうちに彼の心に自分と同じ孤独を感じたクララは、父親のようにアルドを慕うようになります。
逆にアルドは、クララを保護することで人生を再び取り戻そうとします…彼もまたホロコーストの犠牲者だったのです。
しかし、スターリンが率いるソ連がハンガリーで権力を握ると、党に目を付けられた人々が次々に連行されるなど、再び世の中は不穏な空気に包まれます。
そして、理解しがたい2人の関係は、スキャンダラスな誤解を招いてしまうのです…。

2人の日常を積み重ね、とても静かに淡々と描いたホロコーストのその後。
「去った人たちより、残された私たちの方が不幸だ」というクララのセリフがあるのですが、あることで傷を負ってしまった人は、その暗さを自分の中に抱えて、それでも生きていかなければなりません。
そんな時癒してくれるのは、やはり人なのです。人の強さと優しさ、温かさを感じました。
ホロコーストは“歴史の1ページ”ではなく、“ ずっと(今も)続いている現実”として見せられた気がします。

幼さと大人っぽい表情が行ったり来たりするクララがとても魅力的でした。
映画初主演のアビゲール・セーケ。予算がなかったため、たった19日間で撮影したそうですが、彼女の変遷ぶりに脱帽です。

多様化していく世の中で、その速度についていけない人の心が取り残されている今だからこそ、多くの方にご覧頂きたい作品です。
“ただ静かに寄り添う”という優しさが心に沁みます。

二つの孤独な魂が寄り添うとき、絶望は希望へと変わる
『この世界に残されて』

12月18日(金)より、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

公式サイト:synca.jp/konosekai/

監督:バルナバーシュ・トート 製作:モーニカ・メーチ、エルヌー・メシュテルハーズィ
出演:カーロイ・ハイデュク アビゲール・セーケ マリ・ナジ カタリン・シムコー バルナバーシュ・ホルカイ
2019/ハンガリー/ハンガリー語/88分/シネマスコープ/5.1ch/カラー
英題:Those Who Remained 原題:Akik maradtak  日本語字幕:柏野文映
後援:駐日ハンガリー大使館、ハンガリー文化センター
配給:シンカ
©Inforg-M&M Film 2019

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