毎週おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
11/22は、希望の大切さを描いた作品を2本ご紹介しました。
まずは、歌人・萩原慎一郎さんの歌集を元に作られた映画
『滑走路』
2017年に発表された「歌集 滑走路」。
いじめや非正規雇用を経験しながら、それでも生きる希望を託した歌の数々は、多くの人々の心を打ち、ベストセラーとなりました。
口語体で詠まれた短歌は、真っすぐでみずみずしく、情景や心情が浮かび上がる素晴らしい作品です。
萩原さんは、あとがきを入稿したあと、32歳の若さで命を絶ち、本当に残念なことに、この歌集が遺作となってしまいました。
この歌集をモチーフにオリジナルストーリーで綴られた映画『滑走路』は、3人の主人公を軸に、非正規、いじめ、過労、キャリア、自殺、家族…現代を生きる若い世代の誰もが抱える不安や葛藤、それでもなお希望を求めてもがき生きる姿を鮮烈に描き出しています。
1人目の主人公は、厚生労働省で働く若手官僚の鷹野。激務の中、理想と現実の狭間で苦しんでいます。
ある日、NPO団体が“非正規雇用が原因で自殺したとされる人々のリスト”を持って陳情にやってきました。
そのリストの中の“同い年の25歳の青年”に興味を持った鷹野は、その死の真相を探り始めます。
2人目の主人公は、30代後半に差し掛かり、将来的なキャリアと社会不安に悩む切り絵作家の翠。
子供が欲しいと思いながらも、高校の美術教師である夫との関係に違和感をもっています。
3人目は、中学2年生、男子の学級委員長。
いじめられていた幼馴染の裕翔を助けたことで、逆にいじめられるようになってしまいます。
日に日にエスカレートするいじめ。でも、彼はシングルマザーの母に迷惑をかけまいと、ひとり耐えていました。
ある日、1枚の絵をきっかけにクラスメイトの女の子・天野さんとのささやかな交流が始まります。
それぞれに“心の叫び”を抱えた3人の人生が交錯した時、言葉の力は時を超え、曇り空の中にやがて一筋の希望の光が差し込むのです。
鷹野役は、浅香航大さん。翠役は、水川あさみさん。学級委員長は、今年16歳の寄川歌太さん。
この3人がそれぞれの葛藤や苦しみの中でもがく姿が素晴らしいんです。
これが商業作品デビューとなる大庭功睦監督は「非正規雇用やいじめの深刻な影響の一つは、当事者を深い孤独に陥らせてしまうこと。その救いとなるのは、かけがえのない他者との触れ合い。そして“自分は誰かにとってのかけがえのない他者である”という想像力が何よりも求められている」といいます。
そうなんですよね、人はひとりでは生きてはいけません。
かけがえのない人を求めますが、逆に“自分も必ず誰かのかけがえのない人”なのです。
そのことを忘れずにいれば、どうしようもない孤独からは救われるのかもしれません。
「どうぞ、忘れないで!必ず希望はあるから」と、この作品から祈りのようなものが伝わってきます。
【きみのため 用意されたる 滑走路 きみは翼を 手にすればいい】
萩原さんのこの和歌が、私たちの背中を押してくれます。
さあ、怖がらず翼を広げて飛び立ちましょう!
『滑走路』
11 月 20 日(金)全国ロードショー
公式 HP:kassouro-movie.jp
水川あさみ 浅香航大 寄川歌太
木下渓 池田優斗 吉村界人 染谷将太
水橋研二 坂井真紀
原作:萩原慎一郎「歌集 滑走路」(角川文化振興財団/KADOKAWA 刊)
監督:大庭功睦 脚本:桑村さや香
主題歌:Sano ibuki「紙飛行機」(EMI Records / UNIVERSAL MUSIC)
撮影:川野由加里 照明:中村晋平 録音:西正義 装飾:小林宙央 音楽:永島友美子
編集:松山圭介 VFX:田中貴志 助監督:桜井智弘 制作担当:赤間俊秀
製作:「滑走路」製作委員会、埼玉県/SKIP シティ彩の国ビジュアルプラザ 制作プロダクション:角川大映スタジオ、デジタル SKIP ステーション
配給:KADOKAWA
©2020 「滑走路」製作委員会
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