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サンデー早起キネマ『博士と狂人』

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毎週おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
10/18は、偶然にもシェイクスピアが微かに関わるとっておきの作品を2本ご紹介しました。

1本目は、歴史の裏に隠された驚きと感動の実話
『博士と狂人』

世界最高峰と称される“オックスフォード英語大辞典” 通称OED。
初版発行までに70年以上の歳月を費やした世界に誇るこの辞典の基礎を築いたのは、なんと“異端の学者”と“殺人犯”だったのです。

家が貧しかったため学業を諦め、学士を持たず独学で言語学博士となったジェームズ・マレー。
そして、アメリカのエリート軍医でしたが、南北戦争の過酷な体験で心を病み、渡ってきたイギリスで殺人を犯し精神病院に収監されているウィリアム・チェスター・マイナー。
この2人が大辞典の基礎を築いたという事実をドラマチックに描いたベストセラーノンフィクション「博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話(サイモン・ウィンチェスター著)」が出版されたのは1998年でした。

その映画化に真っ先に名乗りを上げたのは俳優であり監督でもあるメル・ギブソン。
映画化には20年以上の歳月がかかり、彼の強い思いがたびたび製作会社と衝突し、裁判になってしまったほどです。
メル・ギブソンは、異端の学者マレー博士を演じました。
一方、殺人犯マイナーには、名優ショーン・ペン。
2人の熱い思いがスクリーンから溢れ出る素晴らしい作品が誕生しました。

1872年のロンドン。
物語は、マイナーの裁判から始まります。
誤って男性を射殺してしまったマイナーですが、「心の病により無罪」が言い渡されます。
一方、その頃マレー博士はオックスフォード大学の出版局に呼ばれていました。
オックスフォードは、20年間英語辞典の出版を目指していましたがうまくいかず、型破りな発想が必要だという理由で新たな編纂責任者としてマレーに白羽の矢が立ったのです。
シェイクスピアの時代まで遡り、すべての言葉を収録するという無謀ともいえるプロジェクトは暗礁に乗り上げていました。
そんな中、マレーは学者や専門家ではなく、英語を話す普通の人々に協力してもらうことを思いつきます。
必要な言葉を探し、単語と用例をカードに書いて郵送してもらおうというのです。
この“お願いの声明文”はあらゆる書籍・本に挟まれて、英語圏の人々の元に配られました。
こうして世界最高峰の辞書作りの壮大な冒険が始まります!
そして、その“お願いの声明文”が挟まれた本が、精神病院にいるマイナーの元にも届きました。
辞書作りにおいて、2人はこれからどのように交流していくのでしょうか?

ここからが凄い展開なんです。
マイナーが殺してしまった男性の妻、精神病院の人々、そしてマレーの妻、ついには時の内務大臣ウィンストン・チャーチルまでをも巻き込む騒動に発展していくのです。
新たな辞書を作るというロマンへの2人の強い思いと、周りの人たちの反応…今も昔も一緒なんですよね。
だからこそ、私たちの心をつかんで離さない普遍の物語なのです。
そして、何かを成し遂げようとする男たちの信念を支える愛情深い2人の女たち(マレーの妻とマイナーが殺してしまった男性の妻)の姿に心打たれます。

言葉を定義するという知的作業が紡ぐ“孤高の学者”と“呪われた殺人犯”の稀有な友情、世界最大の英語辞典誕生に隠された真実の物語は、まさしく“事実は小説より奇なり”です。
文学の秋・読書の秋、辞典を作ってくれた人々に思いを馳せながら、是非ご覧下さい。


『博士と狂人』

10月16日(金)、ヒューマントラストシネマ有楽町、ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国ロードショー

公式サイト:https://hakase-kyojin.jp/

監督:P.B.シェムラン 出演:メル・ギブソン、ショーン・ペン、ナタリー・ドーマー、エディ・マーサン、スティーヴ・クーガン 
原作:サイモン・ウィンチェスター著「博士と狂人―世界最高の辞書OEDの誕生秘話」(鈴木主税訳/ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
2018年/イギリス、アイルランド、フランス、アイスランド/英語/124分/ドルビーデジタル/シネスコ/原題:THE PROFESSOR AND THE MADMAN/字幕翻訳:原田りえ/
提供:ポニーキャニオン、カルチュア・パブリッシャーズ/配給:ポニーキャニオン   映倫G
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