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サンデー早起キネマ『異端の鳥』

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毎週おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
10/4は3本ご紹介しました。

2本目は、私は初めて見るタイプのかなりショッキングな作品でした。
この画像を見ただけでもわかりますよね。
東ヨーロッパの特定されないどこかを舞台にした白黒映画

『異端の鳥』

時は第二次世界大戦中。
主人公は、ナチスのホロコーストから逃れるために、両親から離れてたった一人で田舎に疎開した少年。
黒い瞳と髪、オリーブ色の肌の少年は、金髪に白い肌の村人からは異質な存在でした。
どこに行っても酷い差別を受け迫害される少年が、想像を絶する大自然と格闘しながら強く生き抜く姿を描いています。
そして、異物である少年を徹底的に攻撃する“普通の人々”も…。

原作は、ホロコーストの生き残りであるポーランドの作家イェジー・コシンスキが、1965年にアメリカで発表した小説「ペインテッド・バード」。
社会主義ポーランドでは発禁の書でした。
ペインテッド・バード=色を塗られた鳥は、色を塗られて見た目が変わっただけなのに、さっきまで仲間だった鳥たちから、激しい攻撃にあってしまいます。

この作品をこだわりぬいて映像化したのはチェコ出身のヴァーツラフ・マルホウル監督。
17ものシナリオを用意し、舞台となる国や場所が特定できないように、登場人物が話す言葉は人工言語スラヴィック・エスペラント語を使用。
さらには35mmの白黒フィルム、横幅が広いシネマスコープで撮影し、完成までに11年という長い年月がかかりました。
169分、2時間49分というかなり長い作品なのですが、「マルタの章」「オルガの章」など、少年が出逢った人ごとにパートが分かれていて、オムニバスのようで長さは気になりませんでした。

少年が出逢う人々は、市井の普通の人なのですが、ちょっと歪んでいます。
だからこそ、少年に対する迫害もヒートアップしてしまうのかもしれません。
とはいえ、酷いと思いながらも、目を背けることなく客観的にみられたのは、白黒であること、雄大な風景、流れる川のようなリズムなど、計算された監督の意図が大きいのだと思いました。
「罰を受ける危険がなければ人間は悪に向かう」という心理学者は正しいのか、考えてしまいました。
少年は、沢山の人から受ける肉体的・精神的な暴力で変わってしまいます。彼の行く末に幸はあるのでしょうか?

人はなぜ異質なものを排除しようとするのか?
ホロコーストの源流をたどり戦争と人間の本質に迫る残酷な衝撃作は、美しくポエムのようでもあります。

『異端の鳥』 

10月9日(金)TOHOシネマズシャンテ 他公開

公式HP:www.transformer.co.jp/m/itannotori/ 
TWITTER:@itannotori 
FB: www.facebook.com/transformer.jp/

監督・脚本:ヴァーツラフ・マルホウル 『戦場の黙示録』 
原作:イェジー・コシンスキ「ペインティッド・バード」
キャスト:ペトル・コトラール、ステラン・スカルスガルド、ハーヴェイ・カイテル、ジュリアン・サンズ、バリー・ペッパー『プライベート・ライアン』、ウド・キアー
2018年/チェコ・スロヴァキア・ウクライナ合作/
スラヴィック・エスペラント語、ドイツ語ほか/
169分/シネスコ/DCP/モノクロ/5.1ch/
原題:The Painted Bird  字幕翻訳:岩辺いずみ 
配給:トランスフォーマー 
R15+
原作:「ペインティッド・バード」(松籟社・刊)
後援:チェコ共和国大使館 日本・チェコ交流100周年記念作品

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