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サンデー早起キネマ『ある画家の数奇な運命』

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毎週おススメの最新映画をご紹介している“サンデー早起キネマ”
9/27は2本ご紹介しました。

2本目は、『善き人のためのソナタ』でアカデミー外国語映画賞を受賞したフロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク監督の作品
『ある画家の数奇な運命』

ある画家とは、オークションに出品すれば数十億円の価格が付くことで知られ、2012年には生存する画家の作品として史上最高額の3400万ドルで落札されたゲルハルト・リヒター。
監督は、「彼の人生に興味を持つようになったのは、リヒターの妻の父親が筋金入りのナチで、安楽死政策の加害者だと知ったからだ。リヒターの叔母はその政策で安楽死させられた。それなのに、戦後処刑されるどころか、とある出来事により釈放された」と話しています。
リヒターの映画化の条件は、登場人物の名前を変え、映画の中で何が真実か絶対に明かさないこと…

そうして作られたこの作品は、時代を追って3部になっています。

始まりはナチ政権下のドイツ。
大好きな若く美しい叔母の影響で芸術に親しんできたクルト少年。
しかし叔母は精神のバランスを崩し、ナチの政策によって安楽死させられてしまいます。
「目をそらさないで。真実はすべて美しい」という言葉をクルトに残して。
叔母を“無価値な人間”と判定をしたのは、親衛隊のゼーバント教授でした。

戦後、ドイツは西と東に分かれ、成長したクルトは東ドイツの美術学校に入学します。
叔母の面影を残した運命の女性エリーと出会い、紆余曲折を経て結婚。
実はエリーの父親はゼーバント教授だったのですが、もちろん2人は因縁を知りません。
そして、クルトは自分にとっての“真実”を求めて、ベルリンの壁が築かれる直前、エリーと2人で西ドイツに逃亡します。

最後のシーンは、壁の向こうの西ドイツ。
デュッセルドルフ芸術アカデミーへの入学を許可されたクルトは、フェルデン教授の「自由があるのは芸術だけ」という言葉に鼓舞され、新たな作風を模索します。
やがて苦しみながらも“真実”にたどり着いたクルトは、画家として自分だけの表現方法を確立。彼の絵が告発したものとは…?

美しいドイツの風景、時代を反映した衣装、芸術作品の数々…
30年に渡る壮大な大河ドラマは、3時間9分という長さを全く感じずに最後まで楽しめました。
ひとりの男性の生きざまを通して、戦争、破壊、再建、社会主義、生まれたての西ドイツ…と、ドイツという国が経験してきた歴史をドイツの芸術を交えて体感することができます。
真実とは?芸術とは?自由とは?…見終わった後もいろんなことを考えさせられました。

時代の波にのまれそうになりながらも、叔母と妻の愛に見守られ、真実を追求し辿り着いたその先に待っていたものとは?

『ある画家の数奇な運命』

10月2日(金)より、TOHOシネマズ シャンテほか全国ロードショー

公開サイト:neverlookaway-movie.jp

©2018 PERGAMON FILM GMBH & CO. KG / WIEDEMANN & BERG FILM GMBH & CO. KG

出演:トム・シリング、セバスチャン・コッホ、パウラ・ベーア、オリヴァー・マスッチ、ザスキア・ローゼンダール
脚本・監督・製作:フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク
原題:WERK OHNE AUTOR/英題:NEVER LOOL AWAY/2018年/ドイツ/ドイツ語/189分/カラー/アメリカンビスタ/5.1ch/日本語字幕:吉川美奈子
配給:キノフィルムズ/木下グループ

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